妄想②
[整骨院に連れてって]
突然のメッセージに、思わずスマホを握りしめた。
もちろん農作業中だったにもかかわらず、
土まみれの作業着のまま、彼女の家へと向かう。
[いく]
指は反射的にそう打ち込んでいた。
疲れなんて、どこかへ吹き飛んだ。
早朝からずっと働いていたことさえ、今はどうでもよかった。
ただ会いたい。今すぐに会いたい。声を聞きたい。話したい。
彼女の笑顔が見たい──それしか考えられなかった。
もう三十を過ぎた男が、
こんなにも気持ちを暴れさせるなんて思ってもみなかったが、
頭の中は、美琴の事でいっぱいだった。
いつもはゆっくり走る道を、今日はエンジン音を轟かせて飛ばす。
彼女の家まで、もうすぐ──そう思ったときに、
道の脇に立つ人影が目に入った。
──あれは。
ひだの入ったスカートに、昨日と同じ厚底サンダル。
遠くからでもすぐに分かった。あの背の高さと、歩き方。
上半身は、身体にぴったり張り付くようなノースリーブのシャツ。
栗毛色のボブショートが、朝の風にふわりと揺れて、思わず息を呑む。
「美琴?」
「たっくん来たぁ! ちょっと遅くないかな~?」
「ごめん、本当にごめん」
「アハハ。農作業中だったんでしょ? ウソだよウソ~」
その屈託ない笑顔が、胸に突き刺さる。
誰にでもこんなふうに笑うのだろうか──
そう思ってしまう自分が情けない。
けれど、あまりにも彼女が眩しくて、言葉が出なかった。
その姿は、真っ白な服に、ほんのり焼けた肌。
そのコントラストが、昨日とはまた違う彼女の魅力を際立たせている。
「……」
「童貞のたっくんさぁ、暑いんだけど、早く乗せてくれない?」
不機嫌そうに口をとがらせる顔すら、美しく見えてしまい、
真剣に見ていることに気づかれたくなくて、
つい目線が下へと落ちてしまった。
「扉、開いてる……乗って……」
「ガチャッ。はあ~、暑いぃ。エアコン!」
「あ、ああ、ごめん……」カチカチ、と慌ててスイッチを回す。
「ふぅ。車っていいよね~。拓海?」
不思議そうに見てくる彼女のスカートが明らかに短すぎて、
助手席に座ると、裾が捲れて中が見えていた。
見えたのは昨日とは違う、真っ白な布地。その場所に目が釘付けになる。
「おまえ……そんなに短いスカート……今、中が見えたぞ?」
「ペラッ。ああ、コレってインパン。見せてもいいやつ。どうかした?」
確かに、最近の子たちはそうなのかもしれない。
でも、ギリギリまで見えているその姿に、反応してしまう自分がいた。
それに気づかれたく無くて、慌てて目をそらして前を向いた。
「それでも……っ」
「たっくんさぁ。卒業をするなら、この中身だって見るんじゃないの?」
「そっ、それでもだなぁ……恥ずかしくないのか?」
「うーん。どうだろぉ?
この格好、パパとか、セフレにはウケがいいのよねぇ」
あっけらかんと口にするその言葉に、血の気が引く。
知らなければよかった、知りたくなかった──
そう思うのに、視線は彼女の身体から離せない。
この格好で、この身体を──他の男が──
男の、小さなプライドと未練がせめぎ合う。
三年前のあの少女を、まだどこかに探している自分が情けなかった。
妄想②




