↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスオーバー  作者: 連鎖
黄昏
65/141

妄想②

 [整骨院に連れてって]


 突然のメッセージに、思わずスマホを握りしめた。


 もちろん農作業中だったにもかかわらず、

 土まみれの作業着のまま、彼女の家へと向かう。


 [いく]


 指は反射的にそう打ち込んでいた。


 疲れなんて、どこかへ吹き飛んだ。

 早朝からずっと働いていたことさえ、今はどうでもよかった。


 ただ会いたい。今すぐに会いたい。声を聞きたい。話したい。


 彼女の笑顔が見たい──それしか考えられなかった。


 もう三十を過ぎた男が、

 こんなにも気持ちを暴れさせるなんて思ってもみなかったが、

 頭の中は、美琴の事でいっぱいだった。


 いつもはゆっくり走る道を、今日はエンジン音を轟かせて飛ばす。


 彼女の家まで、もうすぐ──そう思ったときに、

 道の脇に立つ人影が目に入った。


 ──あれは。


 ひだの入ったスカートに、昨日と同じ厚底サンダル。

 遠くからでもすぐに分かった。あの背の高さと、歩き方。


 上半身は、身体にぴったり張り付くようなノースリーブのシャツ。

 栗毛色のボブショートが、朝の風にふわりと揺れて、思わず息を呑む。


「美琴?」

「たっくん来たぁ! ちょっと遅くないかな~?」


「ごめん、本当にごめん」

「アハハ。農作業中だったんでしょ? ウソだよウソ~」


 その屈託ない笑顔が、胸に突き刺さる。


 誰にでもこんなふうに笑うのだろうか──

 そう思ってしまう自分が情けない。


 けれど、あまりにも彼女が眩しくて、言葉が出なかった。


 その姿は、真っ白な服に、ほんのり焼けた肌。

 そのコントラストが、昨日とはまた違う彼女の魅力を際立たせている。


「……」

「童貞のたっくんさぁ、暑いんだけど、早く乗せてくれない?」


 不機嫌そうに口をとがらせる顔すら、美しく見えてしまい、

 真剣に見ていることに気づかれたくなくて、

 つい目線が下へと落ちてしまった。


「扉、開いてる……乗って……」

「ガチャッ。はあ~、暑いぃ。エアコン!」


「あ、ああ、ごめん……」カチカチ、と慌ててスイッチを回す。


「ふぅ。車っていいよね~。拓海?」


 不思議そうに見てくる彼女のスカートが明らかに短すぎて、

 助手席に座ると、裾が捲れて中が見えていた。


 見えたのは昨日とは違う、真っ白な布地。その場所に目が釘付けになる。


「おまえ……そんなに短いスカート……今、中が見えたぞ?」


「ペラッ。ああ、コレってインパン。見せてもいいやつ。どうかした?」


 確かに、最近の子たちはそうなのかもしれない。

 でも、ギリギリまで見えているその姿に、反応してしまう自分がいた。


 それに気づかれたく無くて、慌てて目をそらして前を向いた。


「それでも……っ」


「たっくんさぁ。卒業をするなら、この中身だって見るんじゃないの?」


「そっ、それでもだなぁ……恥ずかしくないのか?」


「うーん。どうだろぉ?

 この格好、パパとか、セフレにはウケがいいのよねぇ」


 あっけらかんと口にするその言葉に、血の気が引く。


 知らなければよかった、知りたくなかった──


 そう思うのに、視線は彼女の身体から離せない。


 この格好で、この身体を──他の男が──


 男の、小さなプライドと未練がせめぎ合う。

 三年前のあの少女を、まだどこかに探している自分が情けなかった。



 妄想②

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。