亮平
旅行の当日、浅見ひかりはアパート前の駐車場で、
ボーナスを使いローンを組んだピンクの軽自動車を準備していた。
今日も日差しが強く、暑い一日になりそうなので、
エンジンをかけ、エアコンを入れながら、ふと助手席を見つめていた。
今日は、藤間咲良の息子である亮平と海に行く予定だった。
11歳の亮平は、最近は少しませてきて、
最近特に女性に興味を持ち始めていることに気づいていた。
最初に会った時は、可愛い弟のように思えて嬉しかったが、
今ではその変化に少し不安を感じるようになっていた。
そんな彼がまだ来ないので、
ひかりは車から降りて彼を迎えに行こうとすると、
遠くから元気な声が響いてきた。
「おはよう、ひかりちゃん!オレ、参上!」
亮平が来てくれて嬉しい気持ちもあるが、
勢いよく駆け寄ってくる彼のテンションはいつも以上で、
その姿に、ひかりは思わず圧倒されていた。
「ちょっと、亮平くん!落ち着いて!」
もちろん、旅行が楽しみなのは分かるが、
アパートの前で大声を出されてしまうのは困るので声をかけていた。
しかし、亮平は勢いよく彼女に飛びついてきて、
腕がひかりの腰に巻き付き、力いっぱい強く抱きしめてきた。
最近、こんなふうに触れてくることが増えたため、
ひかりは軽く呆れながら注意を始めていた。
「ちょっと、離れて!何をしているの!亮平くん?ゴツン。」
すぐに亮平を押しのけると、軽く頭にゲンコツを落としたが、
彼は無邪気な顔で笑っていた。
彼は、まるで小さな子供が母親に甘える時のように、
額をひかりのお腹に当てて、腰に手を回して抱きついてきた。
これは、最初にひかりが甘く対応してしまったせいかもしれない。
最初は子どもだからと笑って我慢していたが、
今でもこうして挨拶をしてくることに困っていた。
「だって、お姉ちゃんは、スタイルがいいんだもん!
それに、その服って新しいでしょ?嬉しいなぁあ。よく似合うよぉお。」
彼が見ているのは、
夏らしい服装とはいえ、デニム地のローライズホットパンツに、
へそが出そうなくらい短いTシャツという格好で、
26歳のひかりが着たのなら、
だいぶ冒険していると亮平も気付いていた。
そのままでは流石に、人前に出るのが恥ずかしかったらしく、
上にはフード付きのフロントジッパーのパーカーを羽織っていた。
それだとTシャツが見えなくなりそうだが、
この暑さには耐えられずに、胸元までジッパーを下げていたので、
Gカップ以上はありそうな巨大な乳房が、前を向いて主張していた。
そんな格好のひかりに、亮平が強く抱き着いてきたのだから、
思いっきりビンタをしてもいいハズだが、彼の事を許しているのだろう、
不機嫌そうな顔をして、軽くげんこつを落とすだけにしていた。
「触ったらダメ!お母さんからもちゃんと注意されてるはずよ。」
亮平は少し怯んだように目をそらし、小さな声で謝る。
「ごめんなさい。嬉しくて、つい。。。」
元気いっぱいだった亮平が、しょんぼりしているのを見て、
ひかりは言い過ぎたと感じ、ため息をついていた。
「ふぅ。名前もね、いつも言ってるでしょ?いつも言ってるよね。
いい?「浅見さん。」か「お姉さん。」って呼びなさい!
それ以外で呼んだら、もう海には連れて行かないわよ。」
本気で怒っているような声で言っているので、亮平は慌てて謝り始めた。
「ごめん!お姉さん!もうふざけないから!
ボブが子どもの挨拶って言うからさ。だってボブがだよ。ボブぅウゥ。」
彼の言葉に、ひかりは呆れたように微笑んでいた。
「はいはい。ボブのせいね。でも、今回は許すけど、
次はないからね。さあ、早く車に乗って。」
ひかりが車のドアを開けると、
亮平は助手席に乗り込み、シートベルトを素直に締めていた。
この着ている服だって、佐々木さんが似合うと言って選んでくれた物で、
露出が多く恥ずかしかったけれど、亮平が喜んでくれたのが嬉しかった。
亮平が言っていたボブは、アパートの隣に住む黒人男性で、
体格が良く少し威圧感があるが、実際は気さくで可愛いい人で、
ひかりは、彼に食事を作ってあげるくらいに仲の良い友達だった。
亮平の行動に、ボブの影響が確かにあると感じてしまうと、
ひかりは思わずため息が漏れそうになっていた。
「さあ、海に向けて出発よ。」「うん、楽しみ!」
亮平の嬉しそうな顔と、夏の強い日差しを浴びた海を想像しながら、
ひかりも自然と笑みを浮かべていた。
亮平




