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クロスオーバー  作者: 連鎖
あーちゃん(夏の海)
19/141

亮平

 旅行の当日、浅見ひかりはアパート前の駐車場で、

 ボーナスを使いローンを組んだピンクの軽自動車を準備していた。


 今日も日差しが強く、暑い一日になりそうなので、

 エンジンをかけ、エアコンを入れながら、ふと助手席を見つめていた。


 今日は、藤間咲良の息子である亮平と海に行く予定だった。


 11歳の亮平は、最近は少しませてきて、

 最近特に女性に興味を持ち始めていることに気づいていた。


 最初に会った時は、可愛い弟のように思えて嬉しかったが、

 今ではその変化に少し不安を感じるようになっていた。


 そんな彼がまだ来ないので、

 ひかりは車から降りて彼を迎えに行こうとすると、

 遠くから元気な声が響いてきた。


「おはよう、ひかりちゃん!オレ、参上!」


 亮平が来てくれて嬉しい気持ちもあるが、

 勢いよく駆け寄ってくる彼のテンションはいつも以上で、

 その姿に、ひかりは思わず圧倒されていた。


「ちょっと、亮平くん!落ち着いて!」


 もちろん、旅行が楽しみなのは分かるが、

 アパートの前で大声を出されてしまうのは困るので声をかけていた。


 しかし、亮平は勢いよく彼女に飛びついてきて、

 腕がひかりの腰に巻き付き、力いっぱい強く抱きしめてきた。


 最近、こんなふうに触れてくることが増えたため、

 ひかりは軽く呆れながら注意を始めていた。


「ちょっと、離れて!何をしているの!亮平くん?ゴツン。」


 すぐに亮平を押しのけると、軽く頭にゲンコツを落としたが、

 彼は無邪気な顔で笑っていた。


 彼は、まるで小さな子供が母親に甘える時のように、

 額をひかりのお腹に当てて、腰に手を回して抱きついてきた。


 これは、最初にひかりが甘く対応してしまったせいかもしれない。


 最初は子どもだからと笑って我慢していたが、

 今でもこうして挨拶をしてくることに困っていた。


「だって、お姉ちゃんは、スタイルがいいんだもん!

 それに、その服って新しいでしょ?嬉しいなぁあ。よく似合うよぉお。」


 彼が見ているのは、

 夏らしい服装とはいえ、デニム地のローライズホットパンツに、

 へそが出そうなくらい短いTシャツという格好で、


 26歳のひかりが着たのなら、

 だいぶ冒険していると亮平も気付いていた。


 そのままでは流石に、人前に出るのが恥ずかしかったらしく、

 上にはフード付きのフロントジッパーのパーカーを羽織っていた。


 それだとTシャツが見えなくなりそうだが、

 この暑さには耐えられずに、胸元までジッパーを下げていたので、

 Gカップ以上はありそうな巨大な乳房が、前を向いて主張していた。


 そんな格好のひかりに、亮平が強く抱き着いてきたのだから、

 思いっきりビンタをしてもいいハズだが、彼の事を許しているのだろう、

 不機嫌そうな顔をして、軽くげんこつを落とすだけにしていた。


「触ったらダメ!お母さんからもちゃんと注意されてるはずよ。」


 亮平は少し怯んだように目をそらし、小さな声で謝る。


「ごめんなさい。嬉しくて、つい。。。」


 元気いっぱいだった亮平が、しょんぼりしているのを見て、

 ひかりは言い過ぎたと感じ、ため息をついていた。


「ふぅ。名前もね、いつも言ってるでしょ?いつも言ってるよね。

 いい?「浅見さん。」か「お姉さん。」って呼びなさい!

 それ以外で呼んだら、もう海には連れて行かないわよ。」


 本気で怒っているような声で言っているので、亮平は慌てて謝り始めた。


「ごめん!お姉さん!もうふざけないから!

 ボブが子どもの挨拶って言うからさ。だってボブがだよ。ボブぅウゥ。」


 彼の言葉に、ひかりは呆れたように微笑んでいた。


「はいはい。ボブのせいね。でも、今回は許すけど、

 次はないからね。さあ、早く車に乗って。」


 ひかりが車のドアを開けると、

 亮平は助手席に乗り込み、シートベルトを素直に締めていた。


 この着ている服だって、佐々木さんが似合うと言って選んでくれた物で、

 露出が多く恥ずかしかったけれど、亮平が喜んでくれたのが嬉しかった。


 亮平が言っていたボブは、アパートの隣に住む黒人男性で、

 体格が良く少し威圧感があるが、実際は気さくで可愛いい人で、

 ひかりは、彼に食事を作ってあげるくらいに仲の良い友達だった。


 亮平の行動に、ボブの影響が確かにあると感じてしまうと、

 ひかりは思わずため息が漏れそうになっていた。


「さあ、海に向けて出発よ。」「うん、楽しみ!」


 亮平の嬉しそうな顔と、夏の強い日差しを浴びた海を想像しながら、

 ひかりも自然と笑みを浮かべていた。



 亮平

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