第十一話 争乱
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
Copyright © 2017-2019 芥川一刀 All Rights Reserved.
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「今よりマシな世界が欲しければ、ソウブルーにでも行け。鉱物管理が出来るドワーフならば多くの者がお前の能力に頭を垂れるだろう」
「それも一つの手だね。トレスドアから抜け出すことが出来ないことを考えなければだけど」
女ドワーフの言葉に零は怪訝そうに表情を歪めるが、不思議なことでは無い。
情報と技術は財産だ。それらの流出をアルスディヤが拒絶し、トレスドアに封じたのだ。
「それに逃げるみたいで癪だしね」
「安全で確実な選択肢があるにも関わらず、自ら苦難の道を選ぶか」
零の嘲弄染みた物言いに女ドワーフは『チッチッチっ』と口で言いながら指を振る。
「今まで散々苦労して来たんだから、もっと楽で、自由で、幸福を得られる権利がある!! そういうのは、場末の酒場で安酒呑みながら管巻いてる連中みたいで性に合わないんだよね。這いつくばったままじゃ、何のために生きてるか分からない。そんなんじゃ命が腐っちゃうよ」
「這いつくばったままでは命が腐るか……」
そう言葉を溢す零の表情は能面のようだったが、決して女ドワーフを愚弄するような態度では無かった。
「そこまでのことを言いながら、衛兵を殺した私を救ったのか。正気か、お前。私が衛兵だけでは無く、女を殺したのを見ていないのか? 助けた私に殺されるとは考えなかったのか?」
「んー……」
女ドワーフの曖昧な反応に零は嘆息を漏らす。
彼女の言葉に感じ入るものがあったのは事実だが、所詮はオウラノの亜種でしか無い。
時間をかけて言葉を交わし続けたところで望んだ回答が得られない。零はそう思った。
「まあ良い」
零は女ドワーフに背を向け、外へと向かう。殺さない理由は無いが、殺す理由も無い。
ヒトモドキの存在は不快だが、虐殺するためにトレスドアを訪れたのでは無い。
氷の団の戦力増強と、自身の性能強化だ。
そして、この場から立ち去ろうとしていた零が足を止める。
「礼代わりに忠告しておいてやろう。三日もしない内にトレスドアは危険地帯になる……。私が危険地帯にする」
「だから逃げろって?」
「それはお前自身が考えることだ」
それ以上の面倒を見るつもりは無かった。
大人しくトレスドアから逃げ出しても構わない。大勢の仲間を引き連れて喧しく逃げ出しても良い。
引き起こした争乱に乗じて更なる混乱を巻き起こしても構わない。
この件を大勢の者に触れ回り、疑心と警戒を煽るのも結果として好都合だと考えた。
何もせずにその日を迎えて死ぬ――ということは無いと零は確信する。
這いつくばったまま停滞する生では命が腐るとまで言ったのだ。
とぼけた顔をした女だが、立ち上がる機を虎視眈々と狙うような獣の目をしている。
――六千年以上前に見たことのある目だ。
権力から老人達を引きずり落とすことばかりを考えていた五百歳にも満たない若造達。
何処となく懐かしさを感じていると、女ドワーフが零の袖を軽く引いた。
「何だ、女」
零は剣呑な声を漏らすが、女ドワーフは怖気づくことなく、おどけてた笑みを浮かべる。
「ニーサン、名前は? 私はイオナ」
「……………………」
零は逡巡する。聞き捨てても良いが――。
「零。絶無の零。それが今の私の名だ」
「絶無の零……零のニーサンね。ン、覚えた!」
「それは良かったな」
興味を失ったようにイオナから視線を外し、零は出口を目指す。
次に行く場所は既に決めている。
地下要塞や事件に首を突っ込んだのは、ただの寄り道だ。
氷の団を支援する反帝国派の貴族達の手は帝国全土に広がっている。
戦力や金銭の支援以上に、鮮度の高い情報が次から次へと流れ込んで来る。
その一つがトレスドアの背部を守るようにして聳え立つスクライト鉱山だ。
トレスドアを難攻不落とする天然の要害であると共に、コランダムが産出される資源鉱山だ。
コランダムの変種の中でも、五カラット以上のルビーは攻撃的なルーンとの親和性が非常に良く、先帝ハルロンティ・アーリーバードが没した後の混乱に乗じて、アルスディヤが暴君として君臨する一助となっている。
そして、その屋台骨となっているのが強制労働を強いられたトロールの奴隷達だ。
岩石のような重厚な甲殻に包まれた三メートル程の巨躯に見合った膂力を誇る反面、魔力との相性が悪く、魔術抵抗は皆無に等しく、アルスディヤの息がかかった者達に支配されている。
「私なら、その支配から貴様達、トロール達を解き放ってやろうと言っているのだ」
零の言葉はトレスドアにおいて、あまりにも浮世離れしている。
だが、坑道の所々に転がっている鉱山管理者や衛兵達の亡骸はトロール達に『もしかしたら……』と希望を抱かせる理由にはなった。
「這いつくばることを強いられた奴隷達よ。立ち上がって生者となり、私と共に戦う意志があるのならば、闘争の咆哮を轟かせよ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「目は現実から背き、地面を見るために付いているのでは無い!! 殺すべき敵を見定め、未来を視るために付いている!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「口は強者に媚びへつらうために付いているのでは無い!! 殺すべき敵を恫喝し、その身に猛りを宿すために付いている!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「猛々しい未来を望むなら天を仰ぎ見よ!! 命を腐らせるよりも、声高に敵を呪い殺す言霊を紡ぎ出せ!!」
零の演説にトロール達が怒りの咆哮を轟かせる。
栄養状態、衛生状態は最悪で、魔術兵装によって作られた拘束具で身体は弱りに弱っていた。
しかし、解放感と怒りが既に限界寸前となった命の火が、轟々と噴火した火山の如く燃え盛る。
封じられたトロール達がつるはしを片手に、十数年ぶりに坑道の外へと姿を見せた。
「まるで生まれ変わった気分だ!!」
「アルスディヤを殺せ!!」
「アルスディヤを蹂躙しろ!!」
「アルスディヤに裁きを!!」
百からなる朽ちかけたトロールの集団はワイルドハントさながらの勢いで、次々と亜人や獣人が封じられた坑道を攻略し、百が二百に、二百が三百に、その数を増やしていく。
その道中、鎮圧に現れた衛兵の手に掛かり、老若男女問わず多くのトロールが命を落とした。
だが、それ以上に多くの人間を殺し、仲間を確実に増やし、彼等が轟かせる凱歌は大きくなる一方だ。
それでも、零の表情は優れない。
――妙だ。いくら相手がヒトモドキとは言え、反応が鈍すぎる。
氷の団がソウブルーを襲撃した時と比較すると、トレスドアの対応の鈍さは一目瞭然と言えた。
オライオンは反帝国派の貴族の支援を受け、裏切りの塔等の監視塔を密かに攻略する等、事前準備を重ねに重ねて約八千人で編成された軍団を投入し、更に魔人グァルプの支援を受けた。
だが、優勢だったのは最初の内だけで三千五百人の兵と、四天王の内二人が命を落とし敗退する結果となった。
主要都市の要塞を攻略するとは、そういうことだ。
――いや、そもそもだ。
それに対し、零が鉱山等から解放した奴隷は明らかに戦力にならない女子供、老人、病人も含めて約三千人。
支援者は当然いない。事前準備など一切していない。今更になって気付いた零は愕然とする。
この肉体の本来の持ち主が白痴の如き愚物のせいか、それとも未だ魔人気分が抜けずに敵を侮ったか。
恐らくは両方だ。
――此処まで妨害らしい妨害は一度も無かった……。いや、無かったわけでは無いが、あまりにも手応えが無い。
普通に考えれば罠の可能性を考慮すべきことだ。
――帝国の本質は武と暴威。基本的に奴等は力を尊ぶ。雑兵は兎も角、団長、隊長クラスにもなればそれなり以上の力を持つ。少なくとも、アルスディヤは今の私よりも格上だった。仮に罠では無く、奴等が此方の対応に手間取っているだけだとしてもひっくり返される時は一瞬か。
ルカビアンのグァルプでは無く、人間の零になったとは言え、オウラノに対する蔑視が無くなったわけでは無い。
だが、今の己が無知無能だと認め、この世には己よりも遥かに格上の存在が数えるのも馬鹿らしくなる程存在すると認めてしまえば、己の優勢を否定するのは容易い。
何よりも要塞攻略戦で、此処まで一方的に事が運べば、流石に不信感を抱かずにはいられなかった。
「衛兵だ! 衛兵を探し出して殺せ!」
零は吠える。漠然とした不信感に対する対処は決して多くは無い。
今の能力、情報、手勢ではトレスドア中に散開する衛兵達の合流と奇襲を阻止するのが精一杯だ。
幸いにしてトレスドアは山道に手を加えただけの要塞都市で道は狭く、大部隊を展開することに不向きだ。
全長三メートルを誇る巨躯の持ち主であるトロールなら弱っていても、肉弾戦で人間に劣るものではない。
戦力を分散させる愚も、事この状況に限れば決して誤った選択にはならない。
「オォーッ!! 恩人のご命令だ!! 俺達を鉱山に押し込んだ奴等を探して殺すんだ!!」
「命じられるまでも無いぜ!! 衛兵は皆殺しだ!! 食い殺してやる!!」
零の命令に亜人達が気焔を挙げ、市街地の隅々から、屋内へと散開していく。
あちこちから悲鳴や絶叫が響き渡るが、零の表情は芳しくない。
「機先を制することが出来ているとは言え、気休めにしかなっておらん。後は時間との勝負か……」
零が開放したトロールの奴隷は市街地に侵入した者達だけでは無い。
性格的、体調的に戦闘が困難なトロール達は、トレスドア地方に点在する獣人の集落に使者として送り込んだ。
歴史的には百近い数の獣人の集落が鉱山資源を共有する形で共存していたが、版図を拡大し続ける帝国に追いやられた経緯がある。
零にしてみれば『この星はルカビアンの物だ。ゴキブリのように繁殖して自らが正当な所有者であるかのような面をする塵芥共』という話で、人間、獣人、亜人等しく価値が無い。
零のルカビアンともオウラノとも知れないアイデンティティはさて置き、上手くいけば一万を優に超える獣人の兵力が蜂起する。
都市部中心でトロール達を無差別に暴れさせて混乱に陥ったところで獣人たちに挟撃させる。
――この際、トロール共は捨てる……いや、そういうわけにもいかんか。
血気に逸るトロール達は恩人である零の命令であっても攻撃命令にしか従わなかった。
いっそのこと使い捨ててやろうかと、零は考えるが目的はトレスドアの陥落では無い。
真の目的は更なる力を得ること。それ自体はアルスディヤを数で圧殺してしまえば達成出来ることだ。
だが、本来はルカビアンの下級労働者階級であったということもあり、氷の団の戦力となる獣人と亜人の吸収という与えられた役目を達成出来ないことに強い抵抗と、そこはかとない気持ち悪さを感じていた。
――獣人たちは土地に対する帰属意識が強い。恩義だけで私に従うのはトロールくらいのもの。使い捨てるわけにはいかんか……。
このような状況下であってもトレスドア地方にしがみついているような奴等だ。
彼等の未来はアルスディヤを討った後に訪れるトレスドア地方にある。
戦力の提供を求めても彼等は難色を示すであろうことは想像するまでも無かった。
「零のニーサン」
結局はトロール達を重用するしか無いのかと零が頭を抱えていると、イオナが武装したドワーフの集団と共に現れた。
「いつぞやの女ドワーフか」
「イオナだよ! もう忘れちゃったの!?」
「生憎と低性能な脳なのでな」
憤るイオナに零は悪びれること無く、鼻で笑って言葉を続けた。
「それで? お前は敵か? 味方か? それとも第三勢力か?」
「ちょっと違うね。武装ドワーフ五百人。零のニーサンの傘下に付くよ」
「正気か、女」
「あらま……、まさか正気を疑われるなんて思ってもいなかったよ」
零にとっては願ってもいない申し出だが、都合が良過ぎる。
イオナとてトレスドアから出て行くのは逃げるみたいで癪だと口にしていた事を零は忘れてはいない。
己の下に付くと言うことは、本拠地をトレスドアから氷の都に移し、ソウブルー攻略のために力を振り絞ることになる。
それを知って、まだ傘下に下ると口に出来るのだろうかと零は訝しむ。
「この状況で戦うのは良いとして、零のニーサンに刃向かうって選択肢は無いよ」
「私は反帝国組織『氷の団』の将が一人、絶無の零。トレスドアを訪ねたのは、ソウブルー攻略に必要な人材を募るためだ。私の配下に付くということは、この地から離れて闘争の日々に身を投じるということを意味する。この争乱を引き起こしたのも私の手によるものだ。争乱を引き起こすことが日常となる。その上で改めて問おう。お前は敵か? 味方か? それとも第三勢力か?」
零なりの誠意を示した上での問いかけにイオナはむっとした表情を浮かべる。
零にしてみれば『私の目的とお前達の目的は決して重なる物では無いのだぞ?』と親切心を見せただけだ。
だが、イオナにしてみれば覚悟の是非を問われたみたいで面白くない。
「じゃあ、改めて応えるよ。武装ドワーフ五百人。零のニーサンの傘下に付くよ」
「アルスディヤを殺す。亜人や獣人にとっては今よりもマシなトレスドアになるだろう。だが、私の下に付くということは、ソウブルー、レーンベルグを落とすまでこの地には戻れないことを意味する。この地に戻ること無く死地に向かい続ける意味を理解出来ぬ程、愚かでは無いだろう。貴様たちは」
ドワーフ達の真意が見えず、零は改めて覚悟の是非をイオナ達に問いかける。
「もしかして気付いてない? 市街地担当の衛兵達が既にバックレたの」
「まさか、反撃の手が緩んだのはそれが理由なのか? しかし、衛兵が腐っているとは言え、冒険者共が出張って来る頃だ。格差は激しいが魔人にすら匹敵する使い手もいる」
――例えば倉澤蒼一郎のような奴だ。
「冒険者ぁ? トレスドアにそんな上等なのがいるわけないじゃん?」
先帝ハルロンティ・アーリーバードの没後、アルスディヤという独裁者の手によって帝国から独立した土地でもある。
帝国の組織とも言うべき冒険者ギルド、戦士ギルド、魔術師ギルド、盗賊ギルドはトレスドアに存在しない。
この地にある戦力はアルスディヤに忠実な腐敗した衛兵団のみ。
存在する戦力は有象無象の塵屑――。
「つまり、お前は勝ち馬に乗りに来たと言うわけか」
「そういうこと! でも、タダで勝ち馬に乗せろって言ってるわけじゃないよ? アルスディヤが地下要塞に籠城してるんだけど、ニーサン達の装備じゃ要塞の壁を破れないでしょ?」
「お前達ならそれが出来ると?」
「そのための重装一個旅団!」
事実、グァルプであった頃ならいざ知らず、今の零に防御態勢を敷かれた要塞を突破する能力は無い。
率いているトロール達も気力だけで身体を動かしている状態で、切欠一つで瓦解する程に脆弱だ。
今一つ彼女達の行動理念が理解出来ないという懸念はあったが、イオナ達の提案を受ける他無い。
そして、零が再びアルスディヤの眼前に辿り着く頃には約二千人の亜人、獣人が要塞内部に入り込んでいた。
「貴様……零!? これは一体どういうつもりだ!!」
要塞の至る所から火の手が上がる中、零に対峙するアルスディヤが吼える。
相対する零は極めて冷淡であった。
「馬鹿が」
「何……!」
「この状況下で言うに事欠いて、そのような答えの分かり切った問いかけしか口に出来ぬとは。馬鹿で無ければ何だ? 阿呆か、白痴か、愚鈍か、凡愚か、無能か、生憎だが弱者を眼前に置いて安心する趣味は無い」
「弱者、だと!? このトレスドアが! このアルスディヤが弱いと言うか!!」
「弱いな。弱過ぎる。何故、トレスドアが帝国の主要都市に数えられているか疑問を挟まずにはいられないくらいだ。腐敗した衛兵共は脆弱を極め、ギルドは出張所の一つも無く、戦士も、冒険者も、魔術師も、盗賊もいない。語るべきことが何も無い程の弱さに罠の可能性を疑ったくらいだ。オライオンがハルロンティ・アーリーバードを討ち取った後の混乱を突いて、トレスドア地方を奪い取ったそうだが……、貴様は帝国に見逃されていたに過ぎん。その気になればいつでも殲滅出来る程度。脅威ですら無いと」
「零……ッ!!」
混乱を突き、帝国から完全な独立を果たした筈だったが、それも全ては手の平の上でしか無かった。
それが事実にせよ、挑発にせよ、アルスディヤを激昂させるには十分過ぎた。
電光石火の踏み込みと共に零の脳天にアルスディヤの斬撃が食い込み、剣の切っ先は零の心臓近くまで浸食していくが、その表情は嘲笑を浮かべたままであった。
「アルスディヤ。貴様の優れている点はその戦闘能力だ。それだけだと言っても良い」
頭部を真っ二つにされた零の身体が徐々に霧散していく。
「幻惑術式……! 小賢しい魔術師風情…………がッ!?」
肉体を霧状に変化させた零は、アルスディヤの背後で肉体を再構築し、音も無く肺を貫いた。
「その身体と力、頂いていく。満願成就のために!」
トレスドアを支配するアルスディヤの天下は僅か半年にも満たないまま終わりを告げた。
そして、その代償を支払うのはトレスドアの地でただ生きているだけの人間達だった。
トレスドア要塞を落とした零は当初の予定通り、亜人達を引き連れて氷の都へと帰った。
零に付き従ったのは当初の予定通りドワーフが五百人。そして、若いトロールの戦士が千人。
残りはトレスドアの人間達を家畜化する為、この地に留まった。
アルスディヤが討ち取られたことは既にトレスドア地方全土に広がっており、獣人や亜人の氏族たちがトレスドア要塞に結集し、群雄割拠の世が到来することは目に見えている。
帝国に翻意を抱く者達が一同に介する――、つまり、ソウブルーやレーンベルグにとって一網打尽の好機が訪れるということだ。
ある程度、まとまった戦力がトレスドアに移ることになれば、要塞の戦力が手薄になり、攻略も容易となるだけでは無く、潰走した亜人達は氷の団を頼る他無くなり、都合の良い状況を作ることが出来るようになる。
「争乱の火種としては上々、か。目的は果たした。撤退だ。氷の都に帰るぞ」
半月後には帝国の塵処理係が派遣される。
この地で待ち構えていれば、倉澤蒼一郎と再戦することが出来るかも知れない。
後ろ髪引かれる思いだったが、零は千五百の兵力を引き連れて、氷の都を目指す。
「支配者アルスディヤ。奴は愚かだが脆弱では無い。しかし、この程度の力で倉澤蒼一郎に挑むのは無謀か」
「ニーサンがたのしそーで何よりだねぇ。そいつ、そんなに強いの?」
「ああ、強いとも。今の私がお前達を率いて戦いを挑んだとしても奴は一人で私達を返り討ちに出来るだろうな」
だからこそ氷の都に帰らなくてはならない。
アルスディヤの力を取り込んだ今なら、オライオンと戦うことが出来るかも知れない。
オライオンを打倒出来れば、ヴァルバラと、洗脳が手に入る。
勝ち目が無いなら、今しばらく従いながら力を付けていけば良い。
雌伏の時が終わりを告げる瞬間が確実に迫りつつある事は疑いようが無かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
Copyright © 2017-2019 芥川一刀 All Rights Reserved.
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




