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第十八話 集結

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Copyright © 2017-2019 芥川一刀 All Rights Reserved. 


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 魔人オズヴェルドに敗北した倉澤蒼一郎が目を覚まして、五日が過ぎた。

 この頃になると、蒼一郎も筋肉痛からも開放され、肉体を十全に制御出来るようになっていた。

 しかし、カトリエルを始めとする、周囲の人間の予想に反して、再開された日々は穏やかの一言に尽きる。


 冒険者ギルドには出勤するものの、やる事はと言えば、ヴィルスト等、冒険者見習いの講義や訓練だけで、依頼を受けようとする素振りすら見せない。

 普通と言えば普通のことなのだが、同じく魔人オズヴェルドに敗北を喫した、SSランク冒険者のメアリは、復帰早々に危険な依頼を立て続けにこなし、傷を癒すために血を浴びるかのような有様だ。

 冒険者ギルドソウブルー支部の二枚看板である蒼一郎と彼女との比較、何よりワーカーホリックと呼ばれていた男が、未だ目立った動きを見せていない。

 この事実が、ソウブルーの人々に、ある種の違和感や不安を抱かせていた。


「動かなかったら動かなかったで、こういう扱いなんですよねぇ」


 蒼一郎はカトリエルの淹れた紅茶を飲みながら、ぼやくようにして吐き出した。

 口でこそ、そうは言うものの言葉と共に紅茶の芳醇な香りが鼻孔を通り抜け、不満とは裏腹にその表情はゆったりとしたもので、一見すると微睡みに身を委ねているようにも見え、至って気楽なものだった。


 稀代の大英雄と呼ばれた破邪の龍殺しも腑抜けたものだ――。


 見る者が見れば、そう評するのも無理無からぬ様相だ。


「当然と言えば、当然の反応よね。それでどういった風の吹き回しなのかしら?」


 尤も、蒼一郎の態度を、額面通りに受け止める程、短慮に出来ていない者も数多くいる。

 蒼一郎に近しい者は、この男が何もしていないように見えるだけで、既に何かをしているのではないかと察していた。

 カトリエルに至っては察すると言うよりは、断定の域にいる。


「風の吹き回しって……」


「緊張感、隠せていないもの」


「流石、だな」


 カトリエルの何かを探るような視線と言葉に晒され、蒼一郎は苦笑を浮かべて、再びカップに口を付けて視線を巡らせる。

 リディリアは胡桃と配達に、リリネットは鍛冶組合へ、エーヴィアは冒険者ギルド、ネフェルトは商業地区へ買い物。

 それぞれに外出しており、工房には蒼一郎とカトリエルの二人だけしかいない。


 聞かれて困るような話では無いが、悪戯に不安を煽るようなことを口にしたくない。

 そういう態度が隠れていることに気付いて、カトリエルは姿勢を正す。


「違和感を覚えたのは三日前の朝だ。何者かがソウブルー要塞全域を意識している」


 カトリエルが訝しむ。

 彼女とて、望むのなら魔術師ギルドの大幹部、宮廷魔術師の長に推薦される程の魔力と魔術適性を備えており、普通に戦えば、蒼一郎やアーベルト、メアリにも匹敵する程の戦闘能力を持ち合わせている。

 だが、蒼一郎が悟っている気配のようなものは、全く感じ取ることが出来なかった。


「恐らく、戦意、警戒心からくる気配だ。魔力の放出とは違う」


 力と素質はあっても、本質的にカトリエルは戦う者では無い。

 だから、自分の感覚を煩わせる気配に気付いていないのだろうと蒼一郎は考え、そう口にした。


「何者かが襲撃を企てているのかしら?」


「何かを企んでいるのは間違いない。だけど、標的は多分ソウブルーじゃない。矛先は全く別のものだ。何処かの組織が何者かを待ち構えている。そのためには、ソウブルー側に自身の存在が露見するのは都合が悪い。恐らく、そういう意図があるんだと思う。それにも関わらず、気配と戦意は日増しに濃くなっていっている」


「あなたのそういった感覚や感性を今更疑ったりしないけれど、その者達に心当たりはあるのかしら?」


「さっきまでは感覚的に思っていただけだからね。だけど、今、口にして初めて、自分が何に警戒をしているのかを確立することが出来た。そして、今の情勢からして、ソウブルーに軍を布陣したのは絶無軍だ。対する敵は魔人教団……それなら破裂寸前にまで膨れ上がった戦意も頷ける」


 カトリエルの何気ない問いかけが、蒼一郎の組み立てた予測を、じわりと確固たるものに組み替えていく。


「恐らく、グァルプは魔人教団と戦ったんだと思う。そして、個人の力では打倒出来ないと考え、絶無軍を結集させた」


「ソウブルーに軍を潜ませた理由は? 衛兵団やあなたに背後を突かれるリスクまで背負って」


「グァルプと絶無軍の力だけでは、勝てないと確信したんだ。今の帝国で、纏まった軍事力を保有しているのは、ソウブルーとレーンベルグの二カ所。けど、レーンベルグまで後退して、魔人教団を引き付けるだけの力が無いんだ。だから、ソウブルー要塞を決戦の地に選んだ」


「けれど、グァルプは何体かの魔人を取り込んでいるのでしょう? 魔人教団との戦いに、ソウブルーを巻き込み、乱戦に持ち込んで、要塞攻略を企んでいるとは考えられないかしら?」


「その可能性もある。けれど、ロイドさんが言うには魔人教団の指導者は魔人ベネディクト。トゥーダス・アザリンの狗だ。最上位級の魔人が二体では、下位の魔人を二、三体取り込んだだけのグァルプでも厳しいかも知れない」


「あなたは動かないのでは無く、動けなかったということかしら?」


「そうだ。勿論、この予測が外れている可能性もある。けど、最悪を想定するなら、魔人同士の戦いにソウブルーが巻き込まれることになる。その場合、潜んでいる絶無軍を排除するのは悪手だ。バーグリフが静観しているのも同じ理由だと思う。それに――」


「それに?」


「魔人同士が激突するような争乱だ。性懲りもなくオズヴェルドや、ヴァレイグラルフが現れるかも知れない。ただの思い過ごしなら別に構わないけど、自分が今出来る最良は、警戒し、静観することだ。義母上殿は魔人が人間に手出しをしないように交渉に行ったみたいだけど、戻りが遅過ぎる。多分、上手くいってないんだと思う」


「そう。戻ってきたら、姫――、ハーティア達を労ってあげないといけないわね」


 子どもの時のように「姫おねえちゃん」、もしくは本人が希望している通り「ママ」と呼んであげれば良いのにと蒼一郎は思う。

 その一方で、トゥーダス・アザリン達に攻撃を受けたり、幽閉されている光景も想像したが、それを口にすることはしなかった。


「何にせよ、大人しく静観することね。レーベインベルグ級の魔術兵装が無い以上、それが今あなたに出来る最良よ」


「何もしないでいるのは、どうにも据わりが悪い。自分の性分では無いな」


「そうかも知れないわね。けれど――」


 そう言って、カトリエルは蒼一郎の隣に、身体を密着させるようにして座った。


「見え透いた嘘だとしても、私達のためだと言って欲しかったわね」


 君以外にならそう言っていた――そう口走りそうになって、何とか言い留める。


「仕方が無いだろう。自分の本心――、特にこの手のことを聞かせられるのは君しかいないからな。恨むのなら有能な自分自身を恨んでくれ」


 まるで絶無軍の軍議に参加して、全てを見て来たような物言いをしたが、この男の雰囲気に違和感を感じて、声をかけたのがカトリエルで無ければ、此処まで己の警戒心を、具体的に形にすることは出来ていなかった筈だ。

 他の家人なら適当に言い包める自信があったし、適当に言い包めた言葉が真であると、自分自身さえも錯覚させていたかも知れない。


 しかし、彼女に適当な返答をしたところで、秒殺でそれを見抜かれるであろうことは想像に難くない。

 それならばいっその事、自分の中にある曖昧な警戒心を言葉にしてみようとした。その結果がこれだ。


 幸か不幸か定かでは無いが、蒼一郎の予測は神がかり的な冴えを見せていた。

 鷹の目をも思わせる盗賊ギルドの情報網が、散発的にソウブルー地方に結集する絶無軍の動きを察知していたのである。

 統合され、精査された情報は蒼一郎の予測とほぼ完全に一致していた。


「単独では魔人教団の背後にいる魔人に太刀打ち出来ず、上手い具合にソウブルーの戦力を引き出し、ぶつけ合わせたい。その申し出をしてこないのは、あわよくばソウブルー要塞を占領したいという欲があるからか」


 その情報と、ホライムーン地方から逃げ出す多くの者達の動きから、バーグリフは絶無軍の意図と、魔人教団の接近を完全に予期していた。


 その一方で、零は自らの魂と結合させた、魔人探査魔術兵装『ヤンクロットの眼』を駆使して、魔人フィラビオの追撃を避けるどころか、翻弄する程の芸当をやってのけていた。


「フィラビオの奴め。まさか帝国の社会に適合していたとはな」


 上位の魔人、フィラビオを相手に、不眠不休で撤退と誘引を続けて既に五日目。

 ルカビアン時代には、全く接点の無い関係にあったが、寝ても覚めても一人の相手のことだけを考え、命のやり取りをしていれば、嫌でも相手のことが分かるようになる。


 零は、ある種の勝機に、口の端を吊り上げる。


 ソウブルー地方への到着と同時に、フィラビオの激しい攻撃が一気に鎮静化した。

 魔人にとって、たったの五日程度、全力で魔力を放出したところで、肉体的、精神的な疲労など、有って無いようなものだ。

 それにも関わらず、此処に来てから、あからさまに攻撃の手が緩んだ。

 時折放たれる魔術攻撃の際に、残留する魔力から攻撃を躊躇う気配を察した。


 この辺りにルカビアン時代の遺物は存在しない。粗末な村落や民家が点在するだけだ。

 普通のルカビアンならば意識すらしない地点に、攻撃の余波が届き、ソウブルー地方に被害が出ることを嫌がっている。

 少し前なら、零がグァルプであった頃なら、理解の範疇には無かった。

 だが、決して少なくない人数のルカビアンが変わり、零も変わりつつある今なら理解出来る。


 攻撃の中に込められた躊躇いは、フィラビオが帝国に、オウラノの社会に適合していることの証左なのだと。


「ルカビアンの叡智、能力をオウラノに見せ付けて、賞賛されるのは気持ちが良いか。それとも、ソウブルーの発展に関与でもしていたか」


 決死の時間稼ぎであったが、ソウブルーに到着してからは状況の全てが零に味方した。

『いっそのこと此処でケリを付けるか?』などという欲が首を擡げるが、零は心身をオライオンの物に変性させる。

 手持ちの身体の中ですこぶる性能が良く、頭も回るが、その反面、臆病という欠点を抱えている。

 だが、思わぬ好機で、血気に逸る思考を鎮静化させるには、その欠点が零を有利な方へと運ぶ。


――奴は、ソウブルー地方に愛着がある。しかし、奴には確たる思想や価値観が無い。身に危険が迫れば、ソウブルーを切り捨てる。ましてや、ソウブルーに入ったとは言え、この地は辺境だ。恐らく奴の執着の元は、ソウブルー要塞などの都市圏にある。戦術級超広域術式を使われないという余裕がある今だからこそ、後退に専念すべきだ。


 敢えて自らの意思を手放し、オライオンの残留思念の思うがままに思考させると頭の中に、そんな考えが浮かび上がった。

 即座に自らの意思を取り戻し、零はつまらなさそうに鼻を鳴らす。

 慎重で、無難で、面白くない。だがしかし、成る程、確かにその通りだと頷く。


 何よりソウブルー地方に入ったことで魔人対魔人の戦いから、人間対魔人の戦いへとスケールダウンさせることが出来たが、依然として彼我の実力差は埋め難く、圧倒的だ。

 当初の予定通り、フィラビオを引き付けつつ、ソウブルー要塞に布陣した絶無軍と合流。

 ソウブルー軍を巻き込み、返す刀でフィラビオ、その背後にいる魔人ベネディクトを討つべきだと考えを改めた。


「糞が!! グァルプの野郎、よりによってソウブルーに行きやがって!!」


 遥か前方の丘陵地帯の向こう側から、魔力の槍が雨霰と降り注ぐ。

 人間の魔力にしてはそれなりの威力だが、魔人の魔術耐性、再生能力を凌駕する程のものでは無い。

 寧ろ、自らの居場所を悟らせるだけの自殺行為にも等しい。


 だが、フィラビオは己の身を貫くことすら出来ない、魔力の槍の軌道をつぶさに観察する。

 恐怖にも似た感情で冷たくなった息を鋭く吐き出す。


 魔力の槍に打たれながら、丘陵ごと零を撃ち抜くことは容易い。

 だが、丘陵の頂上には酪農家の牧場が広がっていることを、フィラビオは知っている。

 去年の中頃に、待望の子供が生まれたことも知っている。


 その子供の名付け親はフィラビオだ。

 旧ルカビアン語で、幸福を意味するアムデインと名付けた。

 若い夫婦が、アムデインにハチミツを食べさせようとしているところを見て、肝を冷やしたこともあった。


「あの野郎、まるで見ていたみたいにしやがって……!!」


 いっその事、零の追撃を止め、丘陵の上にある若夫婦を訪れて、ルカビアン式の料理の一つでも披露してやろうか。今やっていることよりも遥かに有意義だ。

 そんな衝動に駆り立てられるが、あの男を放っておいては、帝国各地にいる友人たちが奴の巻き添えになって殺されてしまうかも知れない。

 脳裏に浮かぶ嫌な予感を断つようにしてフィラビオは跳躍し、丘陵を飛び越える。


 ついでに丘陵全体を覆うようにして防御結界を展開しておく。

 実用的な防御力と言うよりは、後から来る魔人教団や、ベネディクトが巻き添えにしないようにするための目印みたいなものだ。

 フィラビオは友人や知人らが巻き込まれることだけを恐れていた。


 両者の間に存在する圧倒的な差。それがあるが故に、ということもある。

 しかし、零が想像している以上に、フィラビオは現代で多くの人間と関りを持っており、零の挑発的な攻撃は想像以上に、彼の神経を摩耗させ、意識を多方面に分散させていた。


「野郎の狙いは、俺をホームに誘い込んで殲滅しようって腹か……!!」


 寧ろ、知人を巻き添えにしないで済むだけ気楽だ。

 あの男の挑発的な攻撃で、友人が巻き添えになることの方が、余程神経が摩耗する。


「テメェはオウラノをヒドモドキなんつって見下してっから何も知らないんだろうけどよ。俺は今の状態が一番弱いんだ……・!! 憂いさえ無くなりゃ、お前なんか一撃で灰に出来るんだよ!!」


 フィラビオにとって此処は最悪な場所だ。意識が散漫になっていることへの自覚はあった。

 今、まともに戦えば、負けはせずとも心身共に追い込まれるであろうこともだ。


 だが、それは零も同じことだ。


「威力が知れているとは言え、魔力光の派手な広域魔術の曲射だ。確実に盗賊ギルドの網にかかってもいよう。バーグリフ、アーベルト、そして倉澤蒼一郎の耳にさえ入れば良い。奴等は状況を正確に理解する。他の凡俗共が理解出来ずとも、奴等なら確実に取るべき手段を誤らない」


 敵に対する絶対的な肯定と否定。それはある種の共感と信頼だ。

 例え断片的であろうとも、適切な情報を幾つか与えてさえおけば、正しく情報を組み立て、状況を理解出来る。

 己がそうなのだ。宿敵たちもそれが出来て当然だと考えた。


 そして、戦いに事関して言えば、奴等は誤らず、躊躇うことは無く、徹底的だ。


 奴等は絶無軍を、何より己を絶対に信用しない。

 だが、魔人フィラビオ、魔人教団の脅威から目を背けることは絶対に有り得ない。

 消極的共闘、或いはフィラビオ、魔人教団を殲滅するまでは監視に留める筈だ。


 零の予測は、ほぼ完全な形で的中した。


「倉澤。ソウブルー要塞周辺で、絶無軍が身を潜めているのは察しているな?」


「一家の団欒に割り込んできて何を言っているのかしら?」


 オズヴェルドに敗北した後、魔人ハーティアに拉致される形で救出され、姿を消していたアーベルトがカトリエルの錬金工房に飛び込んで来た。

 本来ならば、無事なことをお互いに喜び合う場面だが、二人掛けのソファで身を寄せ合い、指を絡ませて睦み合っているところを邪魔され、カトリエルが不快感を顔と声に滲ませる。

 蒼一郎の胸元から、身を離す様子は微塵にも無かった。


――甘えん坊の犬か猫みたいだな。無理矢理どかそうとしたら、噛みつかれるか引っかかれそうだ。


 そんなことを思いながら、邪険にするよりはとカトリエルの髪を撫でながら、蒼一郎は口を開く。


「魔人教団に追われるグァルプが……、ソウブルーに逃げ込んできましたか?」


「夕暮れよりも先に、奴が要塞に到着することになるだろうな。そして追撃者は一人だ」


「魔人ですか。教団を率いるベネディクトが、単独で動くとは思えない。トゥーダス・アザリンが先行するとしたらベネディクトも同行する筈。今のグァルプの力の根本は、他者と集団だ。オズヴェルドやヴァレイグラルフが、奴に執着するとも思えない」


「その通りだな。状況証拠的にはルカビアンの十九魔人、序列九位、魔人フィラビオだ」


「当然ですが上位ですか。どちらにせよ、グァルプの手に余る敵ですね。アーベルトさん、刻印装甲は?」


「ああ、問題無い。貴様と同じように魂に癒着させた」


「であれば、魔人フィラビオは任せます」


「貴様はどうする?」


「バーグリフ、様の意図は絶無軍と消極的に、精々敵対しない程度に魔人教団に当たるという考えでしょう?」


「その通りだ」


「自分としても絶無軍の組織力は、魔人教団の殲滅に利用したい。だが、奴の存在は不要だし、危険だ。混乱に乗じてグァルプを討ちます。レーベインベルグの代わりは完成していませんが、自分の刻印装甲の修復もほぼ完了している状態です。ソウブルー軍で魔人教団を、自分とアーベルトさんで魔人ベネディクトを討つ。絶無軍が使い物にならずとも、これで十分に勝てる筈だ」


 敵を増やす結果になろうとも、絶無軍を潰すことを決断し、蒼一郎は言葉を続ける。


「油断しない魔人など、生かしておいてもろくなことになりやしない」


 だが、これは正しく零が予測した通りの選択であった。

 倉澤蒼一郎が己を信用することは絶対に有り得ない。最大限の警戒と共に奇襲を仕掛けてくるであろうと。

 タイミングは、絶無軍抜きでも魔人教団の殲滅の目途が付いた頃。


 零にとって、この戦いは賭けだ。倉澤蒼一郎の攻撃を凌ぎ、ソウブルー軍の攻撃で弱ったフィラビオのトドメを刺して、その身を奪い取ることが出来るか、否か。


「これで三度目の戦いだ。倉澤蒼一郎よ、今度こそ私が勝たせてもらう」


 戦う者達がそれぞれの思惑を胸に抱いてソウブルー要塞へと集結する。

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Copyright © 2017-2019 芥川一刀 All Rights Reserved. 


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