第七話 師と師
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「此処は……?」
蒼一郎が目を覚ましたのは石造りの個室だった。
窓枠が無く、光源は壁にかけられた燭台に灯る蝋燭だけで、今が昼なのか夜なのかは分からない。
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
個室の外から観衆の大声援が僅かに漏れ聞こえた。
未だ大会は盛り上がっているようだ。
「おはよー、婿殿」
「ますたー、おはよー」
「ああ、おはようございます。義母上殿、胡桃さん」
目覚めるなり飛び付く胡桃を両手で抱き止める。
反射的に両手を出したが、自ら斬り落とした左腕が繋がっていた。
新しいアバターを用意してもらったのか、それとも本来の肉体なのかは分からない。
体内で循環する魔力を軽く操って初めて、この身体がアバターでは無く、生身の物だと気付いた。
「それにしても君まで此処に来ていたのか」
胸中に沸き立つ薄ら寒い物を笑顔の裏に仕舞い込み、壁際に立つ妻に声をかける。
「ただでさえ興味が薄いのに、貴方がいないのなら見る意味は無いわね」
「素直に心配だったからって言えば良いのに」
「ええ、それもそうね」
「あら、ウチの娘素直過ぎ」
「変に意地を張る程幼くないつもりなのだけれど」
顔色一つ、表情一つ変えず、カトリエルは淡々と口にする。
それに引き換え、ハーティアはからかう様な表情を浮かべては、大袈裟に驚いてみせたり、ころころと顔付きを変えた。
――対象的な親子だ。
そんなことを思いながら胡桃の頭を撫でる。
「ところで自分が意識を失ってどれくらいの時間が経ったのですか? それに試合は?」
「貴方が倒れて一戦が終わって、次の試合がついさっき始まったところよ」
「へぇ……、自分の知っている人たちかい?」
「ヴィヴィアナ先生と、婿殿の同僚の娘の試合だよ」
同僚――、恐らくメアリのことを言っているのだろうと察し、顔をしかめる。
とは言え、アレの同僚扱いするのは止めてくださいと異論を口にすることも出来ずに曖昧な笑みを浮かべる。
「ヴィヴィアナ先生負けちゃったんだよねぇ……」
「? ままさん、げんきだしてね?」
溜息と共に肩を落とすハーティアの頭を、胡桃がよく分かってなさそうな顔を浮かべて撫でた。
「いやされるー……ままさん、これだけで千年はやってけそう!」
だらしない顔を浮かべて気合いを入れるハーティアを尻目にカトリエルに視線を向ける。
「強い強いと思っていたが、やっぱりあの女そんなに強かったのか」
「あなた、ガラベルに言っていたでしょう? 身体能力が高いだけのインテリちゃんって。彼女の場合は、それがガラベルよりも顕著だったということよ」
それなら確かにメアリが勝つ――と言うよりも、ヴィヴィアナが敗北するのも無理はない。
蒼一郎は納得がいったように頷いた。
「それで今は誰と誰が?」
「アーベルトと、ローレンという流れの剣士が戦っているわ。ま、結果は知れているわね」
身内同士で、安全に全力で力比べをしようとしたら、思いの外、金になりそうだったから興行化した。
そういった意味では身内以外の参加者など、ハナから論外扱いされて当然と言えば当然で、彼女の反応も尤もなことだった。
人工生命体オウラノ――、ルカビアンの手で新人類として生み出された現代人は大まかに三つに分けられる。
タイプベーシック――、現在、人間として認識されている標準タイプのオウラノ。
タイプビースト――、ルカビアンの因子に獣のDNAを組み込んだ肉体労働用のオウラノ。現代では獣人と呼ばれている。
タイプバスタード――、ヴァルバラ等、魔術実験で奇形化した若いルカビアンの因子が組み込まれた特殊型。現代のエルフやドワーフの祖だ。
そして、この三つには当てはまらない例外のタイプが存在する。
かつてオウラノを人工物では無く、生命として認め、人権、参政権を与えるなど人間として受け入れることを要求する団体が存在した。
その声に押されて極少数だが、オズヴェルドや、ヴァレイグラルフ等、最上位の魔人や、それにも比肩する優秀なルカビアンの因子で再設計された新型のオウラノが製造されている。
最終的には大きな反発の波に飲まれ、新型のオウラノも殆どが廃棄処分の運びとなった。
しかし、全ての新型が全て破壊されたわけでは無い。
一方的に生み出され、一方的に廃棄される弱き生命を哀れむ者達が消極的に匿い、歴史の影でどうにか生き残り、その因子を引き継いでいった。
稀にその因子を目覚めさせることが出来るオウラノがいる。
英雄になるには条件がある。
一つは優秀なルカビアンの因子が組み込まれていること。
そして、もう一つはその因子を起動させることが出来ること。
多くの魔人が稼働している現代ならば、ルカビアンに反抗してはならないとする安全装置が壊れていることも条件に含まれるだろうか。
安全装置の件は兎も角として、祖となるルカビアンの因子はある種、備わった才能以上に重要なファクターを占めている。
そういった意味ではアーベルトに備わった才能は極上中の極上だ。
ルカビアンの十九魔人、序列第三位――剣聖ヴァレイグラルフの因子を組み込まれた第四のオウラノ、タイプアドバンス。
特定条件下における戦闘能力と、その成長限界はルカビアンにも匹敵し、言うなれば寿命の短い魔人だ。
参加者のアバター制作に関わった者なら誰でも知っていることだ。
アーベルトが強くて当然なのだ。
アーベルトが勝って当然なのだ。
彼の戦いの行方など態々見るまでもない。
結果は分かり切っている。
彼の両腕が三枚に下ろされ、刀身の半ば程で切断された剣を咥えて片膝を着いて血達磨になる姿など、想像出来るはずもなかった。
「いやはや、強い強い。よくもそこまで磨き抜いたものだ。感心感心」
荒い呼吸を繰り返すアーベルトを見下す男が穏やかそうに言った。
アーベルトの下腹が赤黒く不自然に膨らんでいる。
腹を裂かれ、溢れ出した中身が衣服が辛うじて支えているのだ。
アーベルトに此処までの傷を負わせた男は、あまりにも凡庸そうな出で立ちをしている。
これだけの力を示したにも関わらず、一度目を逸らしただけで忘れてしまいそうな程だった。
男と直面しているアーベルトですらこうなのだ。観客も同じだった。
既にこの男が何と言う名前であったかさえも憶えていない。
その不自然過ぎる在り様は、アーベルトの戦いを見守るティアメスの心でさえも惑わせる。
オウラノよりも遥かに優れた知覚能力を持つルカビアンでありながら、この異常性に未だ気付けないでいた。
「両腕を引き裂かれ、腸がはみ出し、武器はその様。しかし、これは戦争ではない。優秀な救護班もいる。今すぐ降参しても命も国も奪われない。ただの余興だ。なのにお主は拙者を宿敵であるかのように見る。お主の素晴らしいところは、こんなお遊びでも、戦意を些かも揺るがせないところだ。真剣勝負なら、どうなっていたのか……それが本当に悔やまれる」
其処から先、アーベルトは己の身に何が起こったのか知ることが出来なかった。
次に意識を取り戻した時、彼は救護室で、涙を浮かべるティアメスの抱擁に包まれていた。
「実に愉快。なんと小気味の良いことか」
アーベルトを斬った男は意気揚々と選手専用の通路を歩く。
とても地味な印象とは裏腹に、その足取りはスキップしているかのように軽い。
印象に残らなさ過ぎる地味なおっさんが、無理して異様に陽気に振舞っている珍妙な光景だ。
「良いな。拙者の弟子にしたいくらいだ。天然でああまで育つなら拙者が磨けば剣の頂きに辿り着けるかも知れん。いやいや、待てよ。天然でああまで育つなら天然のまま何処まで上り詰めるかも見てみたい! 上り詰めたところで拙者が斬る。むふふふ……それもまた悦なり、悦なり」
腰からぶら下げた長細い片刃の曲刀を鞘から出し入れして、鍔鳴りの音を立てながらケタケタと笑う。
笑い声、足音、鍔鳴りがある種の音楽のようなリズムを奏で、地味なおっさんが通路を行く。
「……師よ」
武者鎧の意匠が施された陣羽織風のコートを羽織る女が、静けさを感じさせる冷たい声で男の行く手を阻んだ。
「おやまあ、メラーナではないか。三百年ぶりだなあ。壮健か? 壮健だなあ」
ルカビアンの十九魔人の一人、魔人メラーナ。
そして、彼女が師と呼ぶ存在は過去にも現在にも一人だけだ。
この印象どころか記憶さえも残させない地味な男が――。
アーベルトの身に宿るルカビアンの因子の提供者。
ある意味で祖とも言うべき存在。
魔人ヴァレイグラルフその人である。
「ご無沙汰しております。師よ、早速一手指南願います」
「うんうん。流石は拙者の愛弟子。実に勤勉だ。それに以前とは比べ物にならない程力が増している。何より気概がある。今度こそ拙者を斬るという気概が」
今から七千年前ヴァレイグラルフはメラーナに言った。
『俺が欲しければ剣で奪い取って見せろ!!』
地殻変動が起こる前、女として想いを告げたヴァレイグラルフの返答だ。
当時は今とは違い、剥き出しになった刃を全身に纏っているかのような、人が持つ鋭い思考と感情を剥き出しにしたかのような男だった。
過去と現在のヴァレイグラルフ。
メラーナは寧ろ、今の彼を、過去の彼が現在の彼になっていく様を見届け、その想いをより一層強いものにした。
かつての彼は無数の刃が人の姿を模っていた。
だが、地殻変動以降、彼を構成する刃が一つ、また一つ減っていった。
刃が抜け落ちたのではない。
一つ、また一つ、刃と刃が重なり合って一つの刃に研ぎ澄まされていく。
今や一振りの刃金と言っても過言ではない。
メラーナはヴァレイグラルフに刃の化身を見た。
だから欲しい。その想いは日に日に募っていく。
「ええ……、今日は勝ちます。御身を斬り………………私の物に…………なって頂きます。そして………………、私を…………御身の物に…………して頂きます……………………」
男は口の端をニィと吊り上げる。この女の本質は愛欲と被虐だ。
男はそれを汚らわしいとは思わない。
男はそれを愚かだと嗤わない。
男はそれを不純だと憤らない。
メラーナにはそれが要る。それが在るから力を得た。
そして、遂に己を斬るという確信に至った。
寧ろ、男はそれが酷く嬉しかった。
「今日は良い日だ。とても良い日だなあ。メラーナ、お前の肢体から放たれるそれは神の気だ。お前はあの神々を喰らったのだね? 拙者を斬るために。楽しみだ、ああ、愉しみだ」
得意気にはにかんで頷く愛弟子に、男は心の内から込み上げる獣欲に憑りつかれたように粗暴な笑みを浮かべる。
頭の中で女を切り刻み、襤褸になった服から髪を引っ掴んで裸体を引き摺り出し、無理矢理犯しながら斬り殺す光景を空想する。
女と斬り合うことは今までに何度もあった。
だが、このような空想を浮かべたのは今回が初めてのことだった。
それだけ愛弟子からは、己の勝利を信じて疑わない絶対的な確信と、その根拠足り得る力が溢れていた。
そして、女は師の視線から放たれるヒトの、生物の原始的なあらゆる感情に晒され、大いに悦んだ。
ねっとりと視線が絡み合い――女が先手を切った。
男が女に先手を切らせた。確信足り得る力の具現が見たかったからだ。
傲慢さと寛容さを兼ねた姿勢にメラーナの身体が迸る。
錯覚的なものでは無い。物理的にメラーナの全身が迸り、血肉が通路を埋め尽くし、それらの一つ一つが脈動するかのように不吉な色を明滅させる。
「これは……」
ヴァレイグラルフが戸惑っている。
その姿にメラーナは勝ち誇った笑みの中に僅かな失望を含ませる。
「邪神マルコバクドロスの権能…………。彼の神は奪った命を己の力に変える……。要はグァルプと同じ能力……。それを喰らい、奪いました……。ご覧ください……。貴方の弟子が………………殺した神々の力を……………………」
通路を覆った愛弟子の……いや、ただの肉の塊が脈動する速度を速め、己の肉を裂いて力を現出させる。
井戸の神。
嫉妬の神。
焚火の神。
氷柱の神。
刑罰の神。
邪神、善神、荒神、若神、祟神、特に法則性はない。
いかにも偶々目に付いた神を手あたり次第に殺して取り込んだといった有様だ。
誇りも拘りもない。手段を選ばぬやり方、つまりは弱者が慌てて付けた見せかけの力だ。
ヴァレイグラルフが腰から下げた曲刀の鍔を鳴らす。
如何にも不機嫌だと言わぬばかりの乱雑な音が鳴り響く。
「メラーナ、この力は何だ?」
「…………っ………………………………!?」
短く穏やかな問いかけに肉の塊が怯えたように身を震わせる。
「久々に楽しく剣を振るえたんだ。この手で斬るか、この手で磨くか。素晴らしい出会いがあったんだ。それだと言うのに、愛弟子の君が拙者の上がった気分を、地の底に叩き落す真似をするとはね」
ヴァレイグラルフが一歩を踏み出す。不機嫌そうな鍔鳴りが響く。
通路を包む肉塊が四方八方に巨大な裂傷を作って、裂け目から血を吐き出す。
「剣の神、刃の神、武器の神、包丁の神、片刃の神、両刃の神、大剣の神、二刀の神。剣に関わる神は多い。邪神や逸話まで含めれば無数と言っても良い程、剣の神は沢山いる。君は拙者を斬りに来たのではないのかね? この無様な肉の塊でどうやって剣を持つ?」
苦し紛れのように肉の塊がヴァレイグラルフの背面を襲った。
肉の塊の先端には申し訳程度、剣の切っ先が生えている。
それを横目でちらりと見やり、鼻を鳴らして冷笑を浮かべる。
鍔は鳴らない。肉が肉を打つ乾いた音が響いた。
ヴァレイグラルフの掌底が迫る肉塊を刃ごと押し潰した。
「こんな物は剣ではない。力を得ることは重要だ。だが、我々は、拙者の弟子は、得る力と手段に執念と矜持と拘りを持たねばならない。それは強者の義務だ。メラーナ、お前の手段を選ばない振る舞いは、手段を選べない弱者のする事だ」
歩を進め、右脚を鞭のように撓らせ、肉塊を吹き飛ばす。
「メラーナ。今のお前は拙者の愛弟子ではない。今のお前は剣士ではない。だから、剣は抜かない。その代わり、今からお前に暴力を振るう。良いね?」
そして、吹き荒れる拳打と蹴撃の嵐。あのメラーナが一方的に蹴られ、殴られ、肉片と化していく。
やがて肉塊となったメラーナは元の姿に戻り、息も絶え絶えで手足が明後日の方向に捩じれ、腹部には空洞が出来ていた。
「勝利を確信するお前はとても美しかった。お前を私の物にしたかった。だが、今のお前は要らん」
空洞と化した腹部に足裏を侵入させ、僅かに残った骨身を抉る。
だが、女はその表情に苦悶と――悦楽を滲ませた。
師の身体が己の身体の一部に入り込み、同化したからだ。
何より――反射的な行動かも知れないが――ヴァレイグラルフは片手に持った曲刀を高く振り上げていた。
抜かないと言った師の刃が己の頭蓋に食い込むのを今か今かと待ち受ける。
――卑しい女だ。
そう口にしようとした瞬間のことだった。
「其処で何をしている!!」
男の声がヴァレイグラルフの背中に鋭く突き刺さり、その視線がメラーナから外れた。
「おやおや、人避けの結界を乗り越えてくるとは、話には聞いていたが真面な存在では無いようだ」
ハーティア、ヴァルバラ、ティアメス、ヴィヴィアナ、ガラベル、魔人の認識能力でさえも改竄する力を持つヴァレイグラルフの人避けの結界。
その効果は呼んで字の如く。効果対象はオウラノとルカビアンの二種族の人のみ。
地球人であり、半神でもあるこの男に、その法則は通用しない。
「異世界の純粋種、倉澤蒼一郎君」
メラーナから興味を失ったかのように向き直り、血に濡れた刃を振るって鞘に納める。
「師よ……」
女は其処まで喋って全身がばらばらに崩れ落ち、灰になる。
――ドウシテ?
蒼一郎の眼には崩れる寸前の彼女の眼がそう訴えているように見えた。
「今のはメラーナ……。それに師……? ならば貴様は……魔人ヴァレイグラルフ……!?」
「如何にも如何にも。その通り」
「貴様がヴァレイグラルフなら、何故メラーナを殺した? 彼女は貴様の弟子ではなかったのか?」
半神の叱責するような物言いに魔人は肩を竦めてお道化てみせる。
「何故、君が怒る? なんでも君はライゼファーの核を破壊したとかで彼女に命を狙われていると聞いたが?」
「俺も弟子が居る身でな。貴様の弟子へのやり方が気に食わん。ただそれだけだ!!」
軽い踏み込みからの急加速。下から掬い上げるような蒼一郎の刺突を、ヴァレイグラフの抜刀術が迎撃した。
「低い姿勢で視界の外に身を置き、小さい動きながら必殺の威力を持つ突きで心臓を狙ったか。真正面の暗殺剣としては基本中の基本だ。しかし、君はその基本を極め、匠の域まで昇華させている。実に素晴らしい一撃だ。君が剣士なら絶対に見逃さないところだよ」
ギチギチと音を立て火花を散らしながら講釈を垂れる魔人に苛立ち混じりに半神が牙を剥く。
「随分と上から目線の戯言を吐く……!!」
「彼アーベルトって言ったかな? 彼は実に良い剣士だ。この手で鍛えるか、それともこの手で手折るか実に悩ましい。そして君との教育論には興味がない」
「生憎と貴様の主義主張に興味はない。魔人だということを差し引いても貴様は危険だ。此処で殺してやるから大人しく死んでおけ」
「良いかな、倉澤蒼一郎。拙者は剣士だ。興味があるのは剣だけだ。しかしながら、この大会に興味のある剣はもう残っていない。だから、今回は何もせずに立ち去ってやろうと親切で言っているんだ。これ以上、拙者の気分を悪くさせるなよ。安易に最強を掲げる短絡的な莫迦者共が」
「何……………………っ!?」
突如として激しい振動に晒される。
自然に発生した振動では無いが、目の前の魔人とこの振動に因果関係は無い。
感覚的にそれを悟ると、魔人は穏やかな教師のような目をして頷く。
「オウラノがヒトモドキと蔑まれるに相応しい脆弱さと愚かさを持っていたのも今や昔のことだ。本当にオウラノは強くなった。八雷神の加護を得、魔人の因子を覚醒させ、安全装置も外した。今は限られた者だけだが、そういった者がこれから先、加速度的に増えるだろう。だが、それらの者の出現を心待ちにしている魔人もいる。我々は基本的に暇だからな」
再び激しい振動に晒される。先程よりもずっと強い力だ。
「そら遊び相手に飢えている者が暴れにきたぞ。彼は拙者とは違い拘りがない。だからこそ理不尽で単純に強い。何より拙者とは違って自己中心的だ」
「序列三位のヴァレイグラルフがそこまで言う魔人……まさか!?」
魔人は穏やかに笑みを浮かべて首肯した。
「ルカビアンの十九魔人、序列一位オズヴェルドだよ
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Copyright © 2017-2019 芥川一刀 All Rights Reserved.
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