9 客人
秋比古は立ち上がった。
空夜はそれを見て、
「なんだ? それだけ言うために来たのか? これからリヴンに帰るのか?」
「いや、どこかで宿を探す。リヴンであんなことがあったから、街を出てきたんだ。つまり、逃げてきた。あそこの港で軍が網を張ってる」
「じゃぁ、ここに泊まっていけばいい」
そう言うと、秋比古は照れたように頭をかいた。手を広げて、手荷物が何もないことをアピールする。
「実を言うと、お前を当てにしてきたんだ。居候させてもらおうと思って」
「じゃぁ、」
「でも、悪いよ。彼女がいるし、部屋は狭いし、床は抜けそうだし……」
「……泊めてほしいんなら、もう少し遠慮してものを言え」
「だから他を探すって」
そう言って秋比古が身を引くと、今まで黙っていた桐珂が微笑んで言った。
「ここに泊まっていけばいいわ、秋比古。部屋が狭くても構わないなら」
彼女は立ち上がった。
「毛布を用意するわ」
「あ、いや、でもほんとに……」
「泊まっていけばいいよ」
空夜は秋比古の慌てぶりに笑いながら言った。
「まだ一組、寝袋があるから」
「いや、そんな、この寒いのにお前を寝袋で寝させるなんて……」
「寝袋で寝るのはお前だ」
「俺は客だぞ」
「招待した覚えはないし、居候ってどうせ無銭宿泊なんだろ?」
「……実は、借金も抱えてる。お前の付けにしてリンと飲んできた」
「……」




