8 生き残り
「分からない」
やがて、秋比古は低く言った。
「でも、リヴンだけじゃない。調べてみれば、国中で何人かのクレッフェ確保の動きがあるという。もちろん未だ戦後の混乱があるこの時だ、何人かは別件で行方不明になったと考えることもできる。でも、軍の動きと併せて考えると、それだけとは思えない」
「僕たちもあるいは……か」
「あぁ」
秋比古は深刻な顔をして、お茶を飲み込んだ。
彼の手はささくれだって黒く、確かに工事夫の手になっていた。それが戦場で鍛えた掌を最大限有効に用いる仕事だったのだろう。そのうえ、戦後の住宅不足から、建築業は他の工業と並んで今もっとも発展している産業である。その掌の状態から見て、彼はそれなりに安定した生活をしているのだろう。
空夜は声をひそめて言った。
「散花六部隊の生き残りの数ははっきりしてるのか?」
「してはいない。だが、六部隊全部で百人程度の小部隊だ。あんなことがあってからも、生き残っているのはほんの少しだろうな。俺が知っているのはクレハスと、ソドニの街にいたっていう一人、あとは本当にクレッフェの人間かはよく分からない人間のうわさ話だ」
「二人は確実なんだな?」
「所属と名前までは分かっている。彼らのために、軍が動いているってことも」
「そうか……」
「まぁ、原因はどうでもいいんだ」
彼は努めて明るくそう言った。それから桐珂に向かって笑いかけた。
「ありがとう、桐珂さん。お茶、おいしかったです」
「それは良かった」
彼女はにっこりと笑った。
「とっておきのだったから」
「あぁ、それは悪かったな。わざわざ、すみません」




