進軍
ここフェイトフル・リアルムで勝利を納めた連合軍。
キリエスは退却し、どうやらフード平原に陣を構える部隊と合流するつもりのようです。
その先は、ソルディウスでも襲うつもりでしょうか?
それともマビン・グラスへ引き揚げるのか?
どうなるにしろ、僕らはフード平原へ向かわねばなりません。
戦いの翌日。
まだ昨日の戦の余韻が消えぬまま、ここジャスティス城では朝から会議が行われていました。
「まずは、この度の戦に協力頂いた、ブレイズ、グリフォンブルーの両国に礼を言いたい。」
フェイトフル・リアルムの国王オベリンの一言からスタートします。
「それで、今後についてだが。パークよ、我々はどうすべきかな。」
オベリンさんは、パークさんに意見を求めました。
「陛下。今こそ兵をフード平原へ出し、キリエスを殲滅させることが必要かと。ここで息を吹き返せば、またしても我々の禍いとなるのは必定かと思われます。」
「うむ。儂も同感だ。ならば、ここは間髪入れずにキリエスを追ってフード平原へと進軍する。そこでソルディウスと合流し、最後の決戦の場としようぞ。」
今は良い波がこちらに来ていますからね。
これは絶好の好機といえます。
「あの、ちょっといいでしょうか。」
そう声を上げたのはブレイズのネリ王子でした。
「僕たちブレイズは、フェイトフル・リアルムでの戦いに参上したまでです。これ以上の戦いは完全にレト大陸の戦。僕たちブレイズとは無縁の戦いといえるでしょう。」
つまりは、これ以上、手を貸すことを拒むということでしょう。
しかし、ここにきてブレイズの大軍を失うのは相当な痛手となりますね。
「ネリ様。お言葉ではありますが、フェイトフル・リアルムと交わした約束を覚えておいでですか?」
パークさんは、唐突にそんな質問をネリさんに投げ掛けました。
「どういうことでしょう?」
「あなた方、ブレイズへの報酬はフェイトフル・リアルムの隣国ザラスの土地。それには、キリエスを潰さねばなりません。もしも、この後の戦で私たちが負けてしまえば、報酬の件も立ち消えてしまい、さっきの戦での貢献が無かったものになってしまいます。ここは、どうか我々に最後まで、お力を貸しては頂けませぬか。」
ネリさんは、考えるように暫く目を瞑っていました。
「――僕は、病で伏せている父上の代役カモミール姫――僕の姉の命令でここへ来ています。ですが、ここでのブレイズ軍の動かし方は全て僕に委ねられている――ブレイズは、最後まで皆さんと共に戦いましょう。」
「おお!ネリ王子。感謝しますぞ。」
オベリンさんは、ネリさんの手をガッチリ掴んで固く握りました。
「さすがはネリ王子様です。素晴らしい決断力、このパーク感服致しました。それでは、グリフォンブルーの方はどうですかな、ディルク将軍。」
「私どもは、契約に則って動くのみで御座います。契約では、フェイトフル・リアルムの防衛戦と記してありましたので、これから先の戦いには、グリフォンブルーは一切関与しません。」
こちらは、ブレイズとは異なります。
完全に金銭での契約を交わしているのですからね。
彼らを使おうと思うなら、もっとお金が必要という訳でしょう。
「ならば、追加の料金を払おう。」
「契約は、グリフォンブルーでのみ執り行われるのが仕来たりです。それに国王様の承認も必須。残念ですがお応えできません。」
これは、思った以上に難しそうです。
彼らの戦いは、かなりのものでした。
この後の戦いにも是非とも参戦して欲しかったですね。
「私の頼みだとしても、か?ディルクよ。」
「ゼロ様――いや、パーク殿。貴方の頼みでも、です。」
パークさんとディルクさんの間に張り詰めた緊張感が漂い始めました。
「――しかし、そこに居られるレジェス様ならば話しは別です。」
レジェスは、自分の事を名指しで言われているのに、気づいていない様子で、ぼーっとしています。
まるで阿呆ですね。
「レジェス様は、継承権を弟君のウェル様にお譲りになられたとはいえ、紛れもなく王家の方です。その、レジェス様からの命令となれば私は従うしかありません……と、まあそんなところです。」
ディルクさんは、そう言って無邪気に笑いました。
「私か!?おお、そうだった。私はグリフォンブルーの王子です。ディルクよ、共に戦おうぞ!」
「――!レ、レジェス様?声が出ているではありませんか。」
「ん?ああ、まあな。まあ、色々あってまた声が出るようになった。」
今まで何一つ喋らずに、ぼーっと座っているだけでしたからね。
なんか、ディルクさんが可哀相になってきました。
こんな、王子の命令に従わなければならないんですからね。
「すまぬ、ディルク。恩に着る。」
パークさんは、ディルクさんに頭を下げました。
おそらく、最初からそのつもりだったのでしょうね、ディルクさんは。
ひと芝居打ったと、いったところでしょう。
「これで、話しはまとまった。城壁の修復に兵を少し残し、あとはフード平原へと進軍するぞ。ところで、ダマン殿。フード平原のキリエスの状況はいかに?」
黄金の戦士ダマンは、この会議場にもしっかり眩い鎧を着こんで来ていました。
「はっ。ソルディウスはフード平原近くに陣を敷き、キリエスの動きを注視しておりますが、その……なんというか、実に妙なのです。」
「ほう?どんな風にじゃ?」
「何やら全く動きがないというか、動く気がないというか。とにかく、じーっと時を待っているような、そんな感じなのです。」
「そうか。何を企てておるのかは知らんが、動く気がないのなら、動かしてみせようぞ。」
こうして、会議は早々に打ち切られ、すぐにフード平原へ向けての大進軍が始まろうとしていたのでした。




