Reunion
フルガイアの都市に着いた僕たちは、まずその名前に驚くことになりました。
都市の名は、キリエス。
そのことについてフォックスに、どういうことなのかと訊ねたのは言うまでもありません。
「そのことも含めて、全てはディミトリ様からお聞きください。」
僕らは、数多くの謎を抱えたままディミトリさんとの面会に臨むことになりました。
「その前に皆さん、申し訳ないが、これを飲んでおいてください。」
フォックスは、そう言って怪しげなドリンクを配りました。
「これは?」
「我々の世界に人間が訪れてくることなんて、長い歴史の中でも僅かに数えるくらいしかありません。もし、人間がフルガイアに居ることが他の者に知れれば、どんなことが起きるか私にも予測できません。これは、人間の気配を抑えることができるように作られています。まあ、念のためです。」
どうも怪しいですね。
こんなものを、はいそうですかと口に出来ません。
「レジェスさんとジャクリンさんは、この間も飲んで頂いているので、何も心配はいりませんよ。」
それを最初に言って欲しいものです。
他の皆も安心したのか、それを飲み干していきました。
「ねえ、ちなみに私はエルフなんだけど大丈夫なの?」
確かにシエルさんは、人間ではありません。
これは、エルフにも効力があるのでしょうか。
「貴女の場合は飲まなくても差し支えないと思います。フルガイアの民である私でも、貴女から人間の気配は感じません。なので、飲んでも飲まなくても、問題はないでしょう。」
「ふーん、そうなんだ――。」
シエルさんは、そう言いながら謎のドリンクをゴクゴクと飲み干してしまいました。
飲まなくても大丈夫だと言っているのに、飲んでしまうあたり、さすがはシエルさんですね。変わっています。
しかし、このフルガイアという場所は、何から何まで人間の世界と変わりませんね。
魔界のイメージが根底から覆されました。
「驚きましたか?」
僕は、もちろんと答えました。
「私たちのことを魔物と呼んだり、このフルガイアを魔界と呼んでいるのは、人間の勝手な解釈です。私たちは、自分たちのことを魔物だなんて一切、思っていませんからね。」
確かにそうかもしれません。
実際、僕たちとは違う人種ではあります。
ですが、得体の知れない者を魔物だと、一方的に決めつけたのは人間ですからね。
極論を言ってしまえば、もしかしたら彼らは神なのかもしれません。そう言っても否定できる確固たる証拠は何もないのですから。
「我々の中には、アイスの様に人間界に悪い影響を及ぼす、外れ者がいる。たが、それは人間界だって同じでしょう?人間に、もっと力があり、なおかつフルガイアへの行き来が自由に出来れば、もしかしたら私たちが人間を魔物と呼んでいたかもしれない。要はそういうことです。さあ、着きましたよ。中でディミトリ様がお待ちです。」
フォックスの言っていたことは、僕の心に刺さりました。
人間の僕でさえ、たまに人間の所業を悪魔のように感じることがあります。
彼らのことに対して、あまりに無知だった人間の決めつけが、存在さえしない魔物を生み出したのかもしれません。
とはいえ、テルミナにいたのは、どこからどう見ても魔物でしたけどね。
その後、僕たちが案内されたのは、街中にある建物の中では割りと大きな古びた、お屋敷でした。
その道中で見た、街中を行き交う者たちは皆、人間と全く変わらぬ容姿でした。
彼らは何かしらの身体的変化を遂げることは知っていますが、どごがどう変化するのか、予想さえつきません。
本当に、これが僕たちが魔物と呼んでいた者なのかと、思わずにはいられませんでした。
「……ここに父がいるのね。」
サーシャ様は、どこか緊張しているような面持ちです。
僕たちは中に通され、応接室のような部屋で少しの間、待たされました。
大人しく、その部屋で待っていると、突然勢いよく扉が開け放たれました。
「サーシャ!会いたかった、パパだよ!」




