風雲急を告げる
僕が失恋?をして、およそ一月が経とうとしていました。
本格的な夏の暑さが連日続いています。
結局、あれが失恋なのか何なのかを、この一月は自問自答する毎日で食事も喉を通りません。
え?夏バテなのではないか?ですって……違います。
さて、そんなある日の夕刻でした。
僕らが暮らす家にカモミール姫からの使いがやってきました。
何でも急ぎ伝えたいことがあるので、登城しろとのことです。
まさか、レジェスが見つかったのでしょうか?
それだけは、勘弁してほしいです。
もし、彼が見つかってしまったら、僕らは本当にキリエスへ行かねばなりません。
城へ行くと、カモミール姫とタイゾウが何やら落ち着かない様子で待っていました。
「やっと来たわね。タイゾウ、さっそく説明して。」
僕らはお茶を飲む時間さえ与えられず、椅子に座らされました。
「実はフェイトフル・リアルムから火急の知らせが届いたんじゃもん。」
きっとレジェスが見つかったという報告だと、皆が確信している様子でした。
しかし、僕たちが思い描いていた、それとは全く違っていました。
「ザラス――いや、キリエスが遂に挙兵したのじゃもん。そして今すぐにでもフェイトフル・リアルムへ進軍しそうな勢いじゃもん。」
予想は外れましたが、これはこれで大事です。
いつか来るとは、予想していましたが、かなり早い動きです。
「おそらくこれは、レト大陸全土を巻き込んだ戦になるわ。ザラスの挙兵は、キリエスからの指示によるもの。そうなると、ソルディウスも黙って見ていないでしょう。」
確かに。レト大陸を二つに分けての大戦になりかねません。
「そこで、貴女たちにチャンス到来よ、サーシャ。」
カモミール姫、何のチャンスかは知りませんが、そんなもの要りませんし、欲しくありません。
「貴女たちは、今すぐにでもフェイトフル・リアルムに向かいなさい。そして、この混乱に乗じてキリエスへ潜入するのよ。」
この姫は、目茶苦茶な事を言い出します。
ここは断固として断るべきですよ、サーシャ様。
「それでレジェスは見つかったの?」
そう!それです、サーシャ様。僕たちがキリエスへ行く条件はそこです。
「残念ながら見つからなかったわ。ただ代わりにフェイトフル・リアルムが、手練れを用意してくれるそうよ。今回は、それで手を打ちなさい。」
さあ、サーシャ様拒否するのです。
そんな条件呑めないと言ってください。
「それでは条件が違います。残念だけど、行けないわ。」
ブラボー!
そうです、そんなパワハラ紛いの理不尽な要求は全面拒否です。
「そう、分かったわ。ただ一つだけお願いがあるの。」
「何でしょう?」
「キリエスへの潜入をやる、やらないは貴女たちが決めればいいわ。だけどフェイトフル・リアルムへは行ってもらうわ。何でも、あちらのお偉いさんが、どうしても貴女たちに伝えたい真実があるそうよ。」
お偉いさん?パークさんの事でしょうか?
「真実?」
「ええ。でも、その件に関しては私たちブレイズの者には断固として、明かしてはくれなかったけどね。」
まあ、フェイトフル・リアルムとブレイズは仲が悪い訳ではありませんが、同盟国という訳でもありませんからね。
機密情報を共有する程ではない関係性です。
「……分かった。フェイトフル・リアルムへ行くわ。」
とりあえず最悪の状況は乗り切りました。
この辺が落とし所でしょう。
僕はキリエス行きには絶対に反対なのです。
「船はこちらで手配するわ。」
ああ、これでブレイズでの平和な時間が失われるのかと、思うと少し寂しいですね。
「サーシャ――気をつけるのよ。」
カモミール姫の言葉にサーシャ様は、頷いて応えました。




