剣技大会~in BLAZE~
大会は手際よく進められていきます。
おそらく進行慣れしているのでしょう。
この国では頻繁に何かしらの大会が開催されているようですからね。
僕とローラス、その他六人の予選突破者は、先ほどの会場から少し移動させられました。
その会場は、さっきより一回りほど小さな会場ですが、予選とは違って観客席が設けられていました。
その観客席は既に超満員になっているではありませんか。
これには僕もローラス、そして他の参加者も驚きを隠せません。
「こ、こんなに見物客がいるのか。やばい、緊張してきた。」
ローラスは小心者のようですね。
僕は全然余裕です。むしろ目立てて嬉しいくらいです。
「それでは出場者の皆さんは、これを引いてください。」
係りの者が僕らの前に現れ、箱の中からくじを引かせました。
これで組み合わせが決定するのでしょう。
僕が引いたのはCと書かれてある紙でした。
ちなみにローラスは、Aでした。
僕は他の参加者を見回して、一つだけ切に願ったことがありました。
八人の中に一人だけ美しい女性がいます。
白銅の胸当て、綺麗な彫刻の入った籠手を装備しています。
その立ち姿は凛としていて、とても素敵です。
僕は是非とも、この方と対戦したい。
変な下心はありませんよ……決してね。
「ではまず、AとBの抽選の紙をお持ちの方、こちらへ。」
どうやらアルファベット順のようです。
ということは僕の相手はDの紙を持つ人ということになります
その女性の持つ紙を、そーっと覗きこみました。
彼女の細い手で一部しか見えません。
ですが、可能性はあります。少しだけ見えましたが、Dの可能性は高いですよ、これ。
「私がBだ。」
そう声を上げて前に出たのは、彼女でした。
……残念です。しかし、彼女がローラスに勝てば次に当たります。
僕は心の底からローラスの敗北を願いました。
「おいおい、あの女。グリッジブルーのアレックスだぜ。」
「グリッジブルー!?あの、グリフォンブルーのお抱え騎士団か!」
「ああ、やばい奴が目白押しだって噂だぜ。しかもあのアレックス、実は……男らしいぜ。」
僕は観客席の噂話しに耳を傾けて、驚愕しました。
あんなに綺麗な女性が男ですと!?
いいえ、僕はそんなこと絶対に信じません。
いや!むしろ男だろうが構いませんよ、僕は……冗談ですけどね。
「相手が女性でも俺は手加減しないぞ。」
「当然です。手加減していては死んでしまいますよ、貴方。」
ローラスはアレックスが女性だと信じて疑わないようです。
まあ、それは当たり前ですよ。あれだけ上品な美人はなかなか、お目にかかれません。
「それでは第一戦目を開始致します。ローラス殿対アレックス殿の戦いを始めます。両者、正々堂々と力の限り戦ってください。それでは、始め!」
ローラスとアレックスの戦いは、大歓声の中スタートしました。
アレックスは、その美貌に負けるとも劣るともいえない、美しい剣を抜きました。
おそらく相当できますね、アレックスは。
対してローラスは魔法剣の腕は確実に上がったと思われますが、剣術の方はどうでしょうかね。
最初に動いたのはアレックスでした。
ローラスとの間合いを一気に詰めます。
しかしローラスもいい反応で剣を振ります。
それを見通していたように、アレックスは半歩ほど下がりました。
紙一重でローラスの剣を避けたアレックスは、一瞬にして懐へ飛びこみローラスの喉元へ剣先を突き付けました。
「こ、降参……だ。」
会場は静寂に包まれた後、大歓声が起こり空気が割れました。
勝負は一瞬にして決してしまいましたね。
実力の差がありました。
ローラスは、まだまだ力不足ですね。
さあ次は僕の番です。
ひと暴れしてきましょう。
さて対戦相手はどなたでしょうか。
女性はもういないですが、僕とスリリングなバトルを繰り広げられる相手が良いですね。
「さあ、続きましてはCとDの方、前へ。」
さあ、来い。
――僕の目の前に姿を現したのは、どこかの蛮族のような男でした。
だ、大丈夫でしょうか。
ちょっと不安になってきました。
「これより、ピート殿対ガース殿の戦いを――。」
進行役のベンの開始の合図を待たずして、ガースは僕に斬りかかってきました。
「ちょっと、それは卑怯ですよ。」
しかし、ガースは聞く耳を持ちません。
おのれ!そういう卑怯さは、ばれない程度にするべきです。
「ガース殿、まだ開始の合図を出しておりません。今すぐ攻撃をお止めください。さもなくば失格と――。」
ベンの言葉を遮る様に僕はベンを制止しました。
「僕は構いません。続けましょう。」
僕は怒っています。
このような礼節も知らない粗野で暴力的な者は許し難しです。
僕が求めている戦いとは正反対のガースに、僕は最初から全力でいきます。
「黒い稲妻」
僕の音速に達するスピードと変則な動きに、ガースはついてこれません。
「さらば!」
「ぎぁぁあ!」
ガースはなす術なく力尽きました。
会場は第一戦の時と同じく、一瞬の静寂が訪れた後に大歓声が巻き起こりました。
それはローラスとアレックスの戦いよりも大きな大きな歓声でした。
決して盛っているだけでは、ありませんからね。
この時、僕は多くの観客を味方につけました。
そして、この大会は、きっと僕の大会になると、確信したのであります。




