ギアン大陸
遂に僕たちはギアン大陸へと上陸を果たしました。
未知なる大陸に僕たちは心が踊りました。
「これよりは、馬車にてアトラス国の王都、キュラリスタへとご案内致しまーす。また、レト大陸へのご帰還の折りには是非とも、このテトラを指名して頂きたく存じ上げまーす。」
船を下りると、すぐに馬車が横付けしてきます。
何から何まで至れり尽くせりですね。
そこから、アトラス国の王都キュラリスタまでの意識は殆んどありませんでした。
あまりの乗り心地の良さに熟睡してしまいましたから。
昨晩、遅くまでテトラ船長と飲んでいたせいでしょうね。
「ピート、着いたわよ。早く起きて。」
サーシャ様に肩パンを喰らって僕は目覚めの悪い、目覚めをしました。
「おお!これがキュラリスタ!美しい。」
この大国の王都であるキュラリスタは、やはり栄えた町でした。
ですが、その町の中にも緑が多く配置してあり、癒しの空間を演出してありました。
センスの良い町ですね。
新鮮な気持ちで都に降り立った僕たちは宛もなく、ふらふらと町を探索しました。
「変わってないな、ここは。」
「シエルは、前に来たことあるのよね。だったら案内してよ――肉屋に。」
どうして、サーシャ様はいつもそうなのでしょうか。もう少し風情があってもよいでしょうに。この町の雰囲気を味わうのが至高。肉は、その後にでも味わえばよいのに。
「はい、着いたよ。ここが肉屋だ。」
シエルさんも案内するな、と言いたいです。
「へい、いらっしゃい!今日は何にいたしましょう。」
威勢のいい若者が出迎えます。
しかし、この男どこかで……ローラスじゃありませんか。
サーシャ様は、気付かれていないようです。
ここは、敢えて黙っておきましょうか。面白そうですし。
「一番ランクが高い、お肉ってどれ?」
「そうですね、やっぱり――ってかサーシャじゃないか!」
「えっ!えーと……どちらさま?」
本気ですかサーシャ様。ついこの間まで共に修行した仲ではないですか。
「冗談よ。お久しぶりね、ローラス。ところでローラスって肉屋さんだったっけ?」
そこは僕も気になります。
そもそも、肉屋ならば魔法剣の修行をする意味がありません。
「ハハハ、これはとんだ姿を見られちゃったな。まあ、ここだと色々と都合が悪いから、あっちへ行こう。」
僕たちはローラスと共に近くの広場に行き、芝生の上に腰を下ろしました。
「実はな俺は今、アトラスで調査を専門にして、フリーで働いているんだ。」
「調査?肉屋で何の調査してるのよ。」
「今は、肉屋の産地偽装の調査だよ。まあ、だいたい調査終了だけどな。ちなみに、あの店は白だ。」
そんなことは僕らには関係ないと思いますが。
「それでサーシャたちは……と、ところで、そちらの美しい女性は、どちら様?」
「ああ、そうか。ローラスは初対面よね。シエル、三魔人のシエルよ。」
「ええ!この、お美しい方がシエル様!?わ、私ローラスと申します。是非とも貴女の下僕にしてください。」
「苦しゅうないぞ、ローラス。せいぜい、わらわに仕えよ。」
「ははっ!」
何の茶番劇でしょうか、これは。
「それはそうと、アトラスへは何か用があってきたのか?」
サーシャ様は、だいたいの説明をローラスに話しました。
「そうか。大変だったんだな。まあ、ゆっくりしていくといいさ。」
「ローラスさ、どうせ暇でしょ。アトラスを案内してよ。」
「人を暇人みたいに言わないでくれよ。俺は明日から新たな調査依頼がきているんだ。それより逆にサーシャ達こそ暇だろ?それだったら俺の調査を手伝ってみないか。」
冗談じゃないですよ。せっかくゆっくりできるチャンスを潰させませんよ。
「ローラスさん。僕たちは修行を兼ねて来ているので。遊んでいられないんですよ。」
「だったら尚更だ。これは絶好の修行になるかもしれない。」
ローラスの次の任務は、魔物が最近頻繁に出現するという場所の調査ということでした。
その話しを聞いたサーシャ様、シエルさんは、乗り気でした。
僕は全く、やる気はありませんでしたがサーシャ様が行くと仰るのなら仕方ありません。
ここはローラスに上手く乗せられておきましょう。
「それで、その魔物の出現する場所はどこ?」
ローラスは立ち上り、遠くを指しました。
「あそこだ。」
そこには高く連なる雄大な山々か聳え立っていました。
「あれは、マゼイル山脈。ギアン大陸を縦断する山脈なんだ。」
その山脈の中腹より上には、まだ白いものが多く残っていました。
ようやく春を迎え、暖かくなってきたというのに、また寒い場所へ行かなければならないなんて、気が重くなりました。




