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1.エミリア・キャベック

行き当たりばったりで一気に書いたお話です。

書きかけ途中でリタイアするかもしれません。

更新は非常に遅いです。

 眼鏡姿に重めの前髪。パッと見は暗そうな優等生。それが私、エミリア・キャベックだ。


 日頃は家に閉じ籠り、勉強の毎日。日焼けを一切しないほど外出しないが、私の肌は父に似て褐色だ。父は私よりも濃い色をしているから、私も日焼けすればもっと地黒になるんだろうけど。


 子供の頃は、活発な子だったと母に言われている。近所の子供と一緒に、外を駆け回っていたそうだ。今の私からは考えられない姿だ。


 私が毎日勉強するのは訳がある。


 勉強が好きだというのもある。だが、一番の理由は……私の隣の家に住む、幼馴染に負けたくないからだ。


 幼馴染の名前はデイル・ライティーン。愛称はディー。私も小さい頃は「ディー」って呼んでいた。今は表では「ライティーンくん」、裏では「あいつ」って呼んでる。


 デイルは何でも出来る子だった。本当に、何でも。勉強もスポーツも、魔法だって一番だ。学校の先生も、デイルには一目置いている。


 負け惜しみと言われるかもしれないが、小さい頃のデイルは、今みたいに優秀じゃなかった。むしろ、私の背中に張り付くような、頼りない男の子だったのだ。


 勉強も、運動も、魔法の扱い方だって、私の方が上だった。当たり前だ。私には小さい頃から、父が家庭教師をつけてくれていた。他の子供たちとは違い、先に学習していたのだ。


 机に向かう時間が一日の大半を占める私は、同級生の中で一番優秀であれと教育されて来た。ふたつ上の姉が優秀だった為、私にも姉のようにあれと教育されたのだ。


 小さい頃は、それが窮屈で、よく家を飛び出した。


 そんな時、いつも一緒になって遊んでいたのがデイルだった。デイルはよくめそめそ泣いてしまう子供だったから、私がお姉さんぶって、面倒を見ていた。デイルも私を頼り、信頼してくれていた。当時は、一番仲の良い友達だった。


 それが今や――立場逆転だ。


 デイルは、天才だった。1学べば、10のことが出来る。悔しいが、本当に頭が良い子供だったのだ。


 私が親切ぶって教えた勉強や、魔法のコツを、あっと言う間に吸収し、私を追い越して行った。


 それからというもの、私は常に2番に甘んじることになった。


 両親は、最初の頃は私にもっと頑張るよう指導した。今まで一番だったのだから、努力が足りないのだと叱られた。


 私の遊ぶ時間はなくなり、息を吐く暇もなく、知識を与えられる毎日。


 ずっとずっと努力したのに、デイルに勝つことは無理だった。1年が経ち、両親は私を見放した。一番にさせることを諦めたのだ。


 姉のティルミアは優秀なのに、妹のエミリアは出来損ない。そう親戚中に紹介され、私は死にたくなった。


 要らない子だと思われたくなくて、必死に頑張ったのに、どう足掻いてもデイルには勝てなかった。


 次第に、私はデイルを憎むようになった。


 デイルが居なければ。デイルさえ、消えてくれたら、私は一番になれるのに。


 一番の親友が、一番嫌いな奴に変わるのは早かった。


 自分がどんどん嫌な奴になっていることは自覚していた。でも、デイルに八つ当たりをして気を紛らわせないと、死にたくなる気持ちが抑えられなくなる。


 鬱々とした気持ちを抱えながら、家に帰ったある日。


 デイルが私の家族に囲まれ、客間に居た。


 何で? 何でこいつが家に居るの? 私のことは、こんな風に温かく迎えてくれないのに。


 姉が嬉しそうに微笑みながら、デイルの手に触れている。いや、そんなことはどうでもいい。父も母も、デイルの存在を歓迎しているのは、何故?


 私が出入り口の扉を開けたまま戸惑っていると、姉が私の存在に気付いた。デイルの傍を離れ、私の元へやって来る。


 そして、彼女は私の耳元で囁いた。


 ――デイルが、自分の婚約者になった、と。


 その時の姉の顔は、成長した今でも思い出せる。自慢げで、私を嘲ったかのような、癇に障る顔をしていた。


 私は特に何の感慨もなく、「そう。良かったね」と返事をした。その対応が不味かったのか、姉は一瞬顔を顰めた。両親の前では見せない、怒った表情だ。


 姉のティルミアは、母に似て美人だった。誰もが姉を美の女神として崇める。


 私も姉の外見は美しいと思っている。でも、私には、いつも怒ったような顔を向けてくるので、私は彼女の何処が美しいのか、理解出来ないでいる。


 どれだけ綺麗でも、怒ったり、嘲ったりする彼女は、醜いと思う。


 彼女はやはり私の姉だ。私と同じで、心が醜い。デイルを妬む私も、同じかそれ以上に醜いって解っていた。


 まるで鏡を見ているよう。


 どうして姉が私を嫌うのかは知らないが、私は姉の姿を見たくなかった。


 嫌でも、自分の醜さを痛感するからだ。


 私を睨む姉に、部屋に戻ることを告げ、私はそれきり扉を閉めた。


 姉とデイルが、将来結婚する。私は、大嫌いなあいつを義兄と呼ぶことになるのか。


 自嘲が止まらない。あんな奴、大嫌い。


 ずっと居場所がなかった家が、増々居辛くなるのは間違いない。


 そこから先、私の行動は早かった。下準備を整え、父に嘆願した。


 春になったら、王都セイルーンにある寄宿学校へ入学したい、と。


 子供の私が、家を出て行く方法は、これしかない。以前から、考えていた候補のひとつだった。


 セイルーンにある寄宿学校は、たったひとつしかない。王立魔法学園アルカディア。王国中の一握りの優秀な人間のみが進学を許されるエリート学校だ。


 デイルに劣る私だが、入学資格は満たしていた。


 父は難しい顔で考え込んでいた。


 出来損ないと蔑んでいた私に、更にお金を使うのが嫌なのか。私はそこまで穿って考えていた。だからこう切り出した。


「私がこの家に居ては、色々と邪魔でしょう? 私の存在を親戚に紹介するのも恥ずかしがる家族ですもの」


 全く感情を込めず、自虐混じりに笑いながら父を見た。


 そのとき、初めて父の顔が歪んだ。私の顔が、とてつもなく醜かったのだろうか。しかし、父の感情などどうでもいい。ただ一言、「いいだろう」と頷いてくれさえすればいいのだ。


「………わかった」


 渋い顔で頷く父に向けて、私は感情のない笑顔を浮かべ、「ありがとうございます、お父様」と心から感謝した。




 翌年、王立魔法学園アルカディアに私は入学した。


 入試テストは、またしても2位。


 結果を知った家族は、さぞ私のことを馬鹿にしただろう。だが、離れてしまえば、家族にどう思われようがどうでもいい。


 故郷で私の上に立つのは、同世代ではデイルだけだった。広い王都には、デイル以上に素晴らしい人間がたくさんいるに違いないと思ってた。


 その中で、2位だった。


 私はもっと、自信を持ってもいいのではないか。恥ずかしいと顔を背けられる存在ではないのかもしれない。


 自分は1位にはなれない。どれだけ頑張っても、才能という壁があり、上には上がいる。それでも、自分の上に立つのは、たった一人だ。


 努力すれば、いつか1位になれるかもしれない。デイルには、根こそぎ自信を奪われたけれど、もしかしたら―――。


 そう、淡い希望を抱いて、私は王立魔法学園アルカディアの門扉前に立った。


 ここから私の人生は、再スタートするのだ。


 もう故郷や、家族のこと何て気にしない。


 私は、私の道を歩むのだ。


 学園に向けて足を踏み入れたら、新しい人生が始まると思っていた。


 だけど、世界はそう甘くはなかった。



「やあ、エミリア。久しぶりだね」



 私に手を振る長身の少年が、にっこりとほほ笑んだ。


 それは私が一番会いたくなかった相手。憎しみさえ抱いた幼馴染。


 デイル・ライティーン。



 私はまた、逃れられぬ怨嗟に苦しむのか。


 他ならぬデイルの存在によって。



 これが運命だというのなら。


 ―――神様なんか、大嫌いだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


>>>修正履歴

(2019/02/16)ディルミア→ティルミア、大人になった今でも→成長した今でも

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