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7.冒険者ギルド

よろしくお願いします!

 木製の扉を開けると、人々の笑い声や、美味しそうな食べ物の香りが一気にこちらへ流れ込んできた。


 ここは始まりの都市トータスの冒険者ギルド。表の市場よりも多くの人で賑わう、トータスの顔と言っても過言無い場所だ。


 そんな場所に今、俺はモニカやナズナと一緒に来ていた。当然目的はこいつらとパーティを組み、それを登録することだ。


「私はまだ認めていませんよ。何で素性もわからない人とパーティなんか……」


「お前、これから同じ宿に泊まる人間だぞ? もう身内みたいなものだろ」


「嫌だ! こんないつか衛兵に捕まりそうな身内なんて絶対嫌です!」


「残念だったな! お前がいくら嫌がっても俺が宿屋に泊まる事実は変えられねぇんだよ!」


 加えて、冒険者ギルドに出発する前、クラウスさんに言われた「同じ宿屋に泊まっているなら新人冒険者同士でパーティでも組んだら?」という一声。それにより、モニカはともかく、ナズナは、


「まあパーティを組むくらい、いいんじゃない?」


 と、俺に賛成の姿勢を示している。


「今のところ反対してるのはお前くらいだぞ? 別にパーティは一度組んだら変えられないってわけでもないんだ。了承しちまえって」


「ぐぅ……」


「よし、ナズナ! モニカは喜んで賛成だってよ! 受付にいこうぜ!」


「え? あ、うん。わかった!」


 そう言って俺は入り口から右手にある、カウンターへ向かった。モニカはナズナに手を引かれながら嫌々付いて来ているようだ。


 受付には、モニカとはまた違ったベクトルの、綺麗な女性が座っていた。カウンターに彫られた文字を読むと、この一つの窓口でクエストの受注やアイテムの売買など、様々な仕事をしているようだった。


(というか、俺ってこの世界の文字読めたんだな)


 俺は念話でエレノラに話しかける。なんか少し久しぶりな感じがするな。


 ところが、返事は帰ってこなかった。あいつの性格からして、無視はしないと思うんだが……。


(まさか、これでチュートリアルは終了だよ! とか抜かすんじゃねぇだろうな。……それならそれで、一声かけろよ駄女神)


 反論を期待して罵倒を吐いてみても、全く反応がない。これは、マジで消えたな。


「どうしたの?」


「何を突っ立ってるんですか?」


「いや、女神の声が聞こえなくなっただけだ」


「? どうしたんでしょうね。あなたに呆れられてしまったのでは?」


「そうかもな」


「ラインズ……。急にどうしたの? ……やっぱり頭が」


 何やらナズナが失礼なことを呟いているが、無視して受付に進んだ。まあ、女神のことは何とかなるだろう。適当だけど。


「こんにちは。こちら一番受付でございます。本日はどのようなご用件ですか?」


 ポニーテールに髪を結んだ、ギルドの受付嬢は、ふわりと微笑んで言った。

 なるほど、良いな! 俺はロリコンではない。ぶっちゃけ、モニカたちよりも、こういった年上の女性のほうがタイプだったりするのだ。その胸元に飛び込みたい気持ちでいっぱいだよ。


 しかし、ここは煩悩に負けている場合ではない。さっさと用事を済ませてしまおう。


「俺たち、パーティの登録をしに来たんです。あ、俺は冒険者登録も一緒に」


「かしこまりました。では、冒険者登録からですね」


 そう言って、受付嬢のお姉さんはカウンターの上に水晶のようなものを取り出した。よく、胡散臭い占い師が使うようなものだ。


「これに、手をかざすことで、冒険者としての登録をすることができます」


 なるほど。案外簡単だな。


「わかりました。手数料はどうしましょう?」


「あ、手数料は十ゼニ―になります」


「はい。十ゼニ―ちょうど」


 俺はモニカから買い取った風呂敷から、銅貨を一枚取り出した。

 ちなみに、この風呂敷は格安価格で買い取った。モニカはもともと使ってなかったから。とか言ってたが、多分建前だったのだろう。やはり、意外と優しいな。


 そんなことを考えながら、俺は水晶に手をかざした。すると、水晶は青く輝きだす。そういえば、この水晶、魔石に似ている。おそらく、材料として使われているのだろう。

 水晶の輝きがちょうど終わったあたりで、受付嬢は話し始めた。


「はい。これで登録はおしまいです。このプレートをお持ちください」


 そういってお姉さんは、灰色の物質でできた板を、手渡してきた。


「これは、あなたが灰級冒険者であることの証明です。功績が認められると、鉄、銅、銀、金、白金、霊金剛(オリハルコン)と階級が上がっていきます。霊金剛目指して、ぜひ頑張ってください!」


 うん。基本的にテンプレ通りだな。なら、俺の異世界での目標の一つに、最速霊金剛級昇格をくわえておこう。ちなみに、最終目標は貴族になってハーレム作りだ。


「これ、失くしたらどうなりますかね?」


「基本的には再発行です。過去には例外もあったようですが」


「わかりました。ありがとうございます」


「はい。それで、パーティ登録に移りますね。パーティについての説明は致しますか?」


 そうだな。エレノラもいないし、聞ける説明は聞いておくか。


「はい。お願いします」


「かしこまりました。それでは、説明させていただきますね」


 お姉さんは笑顔を絶やさずに話し続ける。


「パーティを組んでいることの利点は、まず、経験点の分配ですね。クエストをこなすと、その難易度に応じたポイントが配られます。そのポイントによって、昇級や、いくつか景品があったりします。パーティを組むと、通常、クエストの受注者のみに支払われる経験点が、各パーティメンバーに均等に分配することができるのです」


 なるほど。特に強い奴だけが地位を高められる、というわけではないということだ。


「さらに、モンスターを討伐した際に体内へ吸収する経験値、それもパーティ内で分配することができるのです」


 ちょっと待て。初耳な情報が出てきたぞ。今の話から察するに、この世界にはレベル制のようなものがあるということか?

 つまり、生物を倒した分だけ強くなれるような。

 ……やべぇ、俺、殺人衝動を抑えきれるか? 一番効率的なレベリングってそれな気がするんだが。捕まらなければ。


「と、他にも、パーティ限定のクエストやギルド内イベントなど、とりあえず組んでおけば間違いなしです! 手数料に関しては、今回は初回ですのでいただきません!」


 お、おう。急にセールスマンみたいになったな。あまりパーティを組む人っていないのだろうか。


「わかりました。登録をお願いします。で、いいよな?」


 俺は、今までずっと後ろで暇そうにしていた二人に確認する。モニカは心底嫌そうな顔をしているが、反対とまではいかないようだ。


「それでは、この登録石にみなさん、手をかざしてください」


 俺たちは水晶、もとい登録石とやらに手をかざした。登録石は、先ほどより少し大きく輝きながら、その赤い光を収束させていった。


「これで、登録は終了です! お疲れさまでした! それでは、良い冒険者ライフを」


 受付嬢はそう言って、俺たちを見送った。


「ありがとうございました」


 俺たちはお礼を言ってから、冒険者ギルドを後にした。


 今日から、俺は冒険者だ。未だ、微妙に実感が持てないが、とりあえず、仕事を受注するのは明日にしよう。

 俺は、法に触れない程度に効率的なレベリングの方法を考えながら、宿に戻っていった。

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