表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/65

5.街へ

今回少し短めです。

よろしくお願いします!

 洞窟を抜けると、そこは森林だった。見ると、モニカが黒髪の少女を木陰で休ませている。彼女はこちらに気づくと、駆け寄って来た。


「大丈夫でしたか?」


「ああ、案外あっけなく終わった。友達は大丈夫そうか?」


「ええ、疲労が溜まっているようですが、そのうち起きるかと」


「そうか。良かったな」


 一応、これで全て解決というわけだ。

 次にすることといったら、人里に降りるくらいか。幸い、その目標もモニカと一致している。


「近くの町に行こう。方向はわかるか?」


「はい。任せてください」


 そういえばこいつ、方向音痴だったな。あまり期待しないでおこう。


◇◆◇◆◇◆◇


 通常一、二時間程度の道を四時間ほどかけ、迷いながら俺たちは町についた。

 道中、町のことやモニカたちについて色々聞かせてもらった。そのため、特にトラブルなどの心配はしなくていいだろう。


「これが街か」


 あまり大都市というわけではないらしいが、簡単な防壁が備わっている。加えて、人の流通も多く、なかなかに活気があることがわかる。


「なに田舎者みたいなこと言ってるんですか。早く行きますよ」


「はいはい」


 門の前まで来ると、衛兵がニ名、検問のようなことをしているのが見えた。

 簡単な検問らしいから基本的には大丈夫だとは思う。しかし、万が一があったら恐ろしいな。

 特にモニカはナズナというらしい黒髪の少女を背負っている。そのせいで色々手続きがかかりそうだな。


[そういえばラインズ、君、盗品持ってなかった?]


(そうだったな。大丈夫なのか?)


[だいぶ他人事だな]


(戦利品だからな。俺は悪くねぇ)


[ゴブリンから取ったものってどうなんだろうね。法律によって違うと思うけど]


(お前神様だろ。把握しとけや)


[細かいことなんて知らないよ。管轄外だもん]


 神様に管轄とかあったんだ。と思いつつ、衛兵の近付いて行く。

 若く、真面目そうな衛兵だ。彼は丁寧な物腰で俺に話しかけてくる。


「はい、その風呂敷の中、見せて下さいね」


「はい。どうぞ」


 俺は風呂敷を広げ、中の戦利品を見せる。

 魔石はゴブリンとの戦いで全て使ってしまったが、まだ使えそうなものは残っている。

 例えば、金銭の類いであったり、魔力が込められたものだったりだ。


「これ、全部君が集めたのかい?」


「ええ、ゴブリンの巣で見つけました」


 多少驚いているな。やはり俺の見た目が子供であるせいか。

 嘘を言っても仕方がないので、正直に話す。この兄ちゃんからはあまり威圧感を感じない。戦利品として許されたと思っていいだろう。


「なるほど、ご協力ありがとうございます」


 そう言って衛兵は快く門を通してくれた。同時に、モニカも検問を終えたようだ。


「これから、どこに行くんだ?」


「私たちは、家に帰ろうかと思っています」


「シェアハウスでもしてるのか?」


「ええ。知り合いの宿屋がありまして、そこで住み込みで働いているのです」


「なるほどな」


 そういえば、故郷は少し離れたところにある村なんだとか言ってた気がする。


[へぇ。てっきり私は冒険者なのかと思っていたよ]


「冒険者登録はしていますよ。休みの日などは、森に出かけたりしています」


「なんか大変そうだな」


 確か15歳だったか? その歳で故郷を離れるなんて、俺なら耐えられない。


「ラインズさんは今まで何してたんです?」


「えーと……山の中で一人で暮らしてたぞ」


「……ご両親は?」


「この世界にいるのかもわからん」


「それは……すみません」


「別に気にすることじゃない」


 だって嘘だし。いやまあ、両親はこの世界にいるかわからんけどな。


[いないよ]


 いないってさ。


「なら、これからどうするんですか? 住む場所とか……」


「え? お前らと一緒じゃないの?」


「は?」


「え?」


「本気で言ってるんですか?」


「俺はいつだって本気だぞ」


 さっき嘘はついたが。


「いやですよ」


「何で」


「赤の他人だからです」


「何てこと言うんだ! 俺たちは一緒に死線をくぐった戦友! だろ?」


「違います」


 即答である。全く逡巡を見せなかったのはさすがに驚いた。意外とワンチャンあると思ったんだけどな。


「大体、ナズナはあなたのこと知りもしないんですよ! 無理に決まってます!」


「助けた恩があるから大丈夫だって!」


「よくそれを私に言えますね!? 恩返しの取立てやめてください!」


 正直、断られてもいい。ただ、助けた女の子にワンチャンを感じるのはそんなにいけないことでしょうか。いや、男として当然だろう!

 というか、異世界に来たっていうのにハーレム成分が足りねぇ。

 隙あらばヒロインを増やしていく方向性で頑張りたいものだ。


「とりあえず、ナズナさんに聞いてみたらどうだ? 案外許してくれるかもしれない」


「ええ……?」


「ちょっと聞いてみるだけだから! 先っぽだけだから!」


「一応、聞いてみますか……」


 言いくるめ成功だ。まさかいけるとは思わなかった。

 そして、宿屋でナズナの目覚めを待つ運びとなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ