プロローグです。1
よろしくお願いします。
平凡、そんな言葉が自分には似合う。生まれてきた時からずっとそうだ。どんなことでも、ちょうど真ん中。勉強でも、就職でも、身体的にも。なんでも人並みにできた、その代わりに何一つ得意なものはない。だから結果的に、評価は普通に収まる。だから、どこへ行っても、モブであり、いつからか本名でもないのに中野なんて呼ばれている。だからこそというのもなんだが、こんなにも、それが普通であるかのように、『異世界』にも来てしまったのだと思う。
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その日も普通に出勤した。はずだった。それなのに、朝礼で上司から伝えられたのは、『社長室へ行け。』一平社員の自分が関わることのないと思っていた場所に向かう。足取りはとても重たい。何故、まさか。そんなことを考えていると、今朝の朝礼でのことが思い出される。
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「中野、社長室に行け。」
「え?」
上司の言葉に声が出ない。シャチョーシツ。ドコソコ。ここで周りを見てみる。
いつも、うるさいというかウザい、俺にタメ口を使う後輩、メガネをかけたおとなしい女性の先輩、無口だけど義理堅い大男の先輩、その他にも個性的な同僚たちが、何か意味深な、思いつめたような表情をしている。派遣できているはずの清掃の職員さんまでもが。これは言わずもがななんだろう。この重苦しい、お通夜みたいな空気は。だが、声をかけずにはいられなかった。
「あのー・・・・・・・・・。」
「いや、わかるっすよ。先輩。」
あ、今先輩って言った?言ったよね。めずらしいなー。うれしいな。
「分かってるわよ。中野君!あなたなら大丈夫。」
ありがとうございます、先輩。後、俺は中野じゃないんですけど・・・。
「諦めろ。骨は拾ってやる。」
怖いですよ!普通に怖いですよ。
「そろそろ時間だろう。荷物をまとめろ。」
何故、荷物をまとめなくちゃいけないんだ・・・。
『逝ってらっしゃい、中野(君)。』
いやだ、辞めたくない。俺のザ・普通の人生をこんな形で終わらせたくない。
・・・・・・・・・何故担ぐ。エレベーターに押し込むなッ。やめろ、やめ・・・・・・・・・。
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・・・・・・・・・こうして半ば強引に、退路(社長室はもちろん最上階で、エレベーター、階段は元同僚に塞がれ占拠。つまりを塞がれ突撃するしかなくなってしまった、というわけなのだった。
だが、まだ辞めなければいけない、というわけでもない。普通に考えてこんな急に、退職させられるわけがない。大丈夫、大丈夫・・・。大丈夫なのか? しかし、行かなければ、始まらないし・・・・・・・・・。
「あのー。何かご用でしょうか。」
「え?」
もしかして、考え事して違う部署に来ちゃった?自分の会社で迷っちゃった?とにかく謝らないと…。
そう思って顔を上げると、とても美人な女性がいた。うん、いた。それはいい。いや、よくないんだけど。人生で一度逢えたらいいぐらい美人なんだけど。
それより問題なのは、日本では、いや世界で見ても普通には存在していない髪の色とまるで天使が着ているような服そこから生えている羽。それを例えるなら、まさしくコスプレ。しかしよくできたコスプレである。だが、聞かねばなるまい。何故こんなところにいるのか。何故、用があるか聞かれるのか。話そうと、意を決したその時、
「もしかして、普通の中野さんですか。」
そう聞かれてしまった。他のことはどうでもいいだが、これには、反論しなければいけない、我が全身全霊をかけて。
「違います。絶対に違います。」




