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1.我は棍棒ではない!!

はいっ!!新連載です!よろしくお願いします!!

 王都は紅蓮の炎を上げて燃えていた。


 逃げ遅れた数少ない民衆に紛れながら、シルフィアは街の中を駆けていた。


 焼けつくような鉄と煙の匂いにむせるが構ってなどいられなかった。血の匂いが鼻につく。敵兵のものか、味方のものか、あるいはその両方かは分からない。


 「シルトベルト帝国の奴ら、こんな辺境の国に攻め込んで何がしたいんだ!」


 シルフィアは、ここ辺境の国、ベールウェスト王国の王女である。


 だが、彼女には王女という気品も高貴さも感じられない。感じられるとすれば粗野な野生の香りか。


 短く刈り込まれた赤い髪のせいで、一見すると少年のように見えるが、目鼻立ちは可愛らしい。だが、その目付きはギラギラと燃えていた。


 突然、彼女の前にシルトベルト帝国兵が三人、壁のように立ちふさがる。黒いフルプレートの鎧が殺意の光を放っている。


 対するシルフィアは古い皮鎧を纏っているだけだ。王女らしくない理由の大半はこの恰好のためだった。そして、その背中には彼女の身長と同じくらいの黒い大剣を背負っていた。


 「へっ、まずは、お前らからだ」


 シルフィアはニヤリと笑いながら、そう言い放つと同時に背中の大剣を抜いた。鞘ごと。


 よく見ると大剣の鞘(さや)と鍔(つば)は、何故か、決して抜けないように皮紐で固く結び付けられていた。


 魔剣エクリプス。


 それを使う者に大いなる富、もしくは不幸をもたらすという、ベールウェスト王国城内のダンジョンに千年封印されていた伝説の魔剣。


 すると魔剣エクリプスから低く、そして傲慢な響きを感じさせる声が発せられた。


 『シルフィアよ。我は棍棒ではないッ!せめて鞘から抜いて使え!』

 「鎧相手には、この使い方が一番効率がいいんだよ」


 シルフィアが面倒臭そうに答える。明らかに魔剣と喋っていた。


 それを見たシルトベルト帝国兵が動きをとめる。


 目の前の奇怪な光景に浮足立った。シルフィアはその隙を見逃さなかった。一気に間合いを詰める。一瞬時間が止まったように見えた。


 目にも留まらぬ一撃が一番前の帝国兵を捉える。


 ゴインッ!


 鈍い音と共に不運な帝国兵が真横に吹き飛ぶ。


 ドゴンッ


 という音と同時に帝国兵は建物の壁に激突していた。黒いフルプレートの鎧の右腕が有り得ない角度でひしゃげていた。


 「き、貴様っ!」


 帝国兵の残りの二人が戦慄する。


 シルフィアの華奢な体のどこに黒い大剣を振り回す腕力があるのか。二人は剣を構え直して距離をとる。だが、シルフィアの動きは止まらなかった。


 一人目が吹き飛んだ直後には二人目に肉迫していた。


 「遅えんだよっ!」シルフィアが叫ぶ。


 ガインッ!


 シルフィアの一撃は帝国兵の頭部を正確に捉えていた。帝国兵の兜がひしゃげる。そのまま魔剣エクリプスを振り抜く。相手は首がねじ切られたと思うほど曲がる。


 その帝国兵は不運だった。完全に勝ち戦。ベールウェストの民から略奪しようと街を漁っている所にシルフィアと鉢合わせしたのだから。


 そのまま、シルフィアは返す刀で三人目の帝国兵の喉元に突きを入れた。

 それは流れるような華麗な動きだった。


 ガシャンッ!


 帝国兵は受け身も取れずに、そのまま後ろの民家に吹き飛んだ。


 シルフィアの剣技に決まった流派はない。

 本能的にその時、その時の最適な動きを導き出す。

 これは父であるベールウェスト国王アーサーによるスパルタ教育の賜物だった。


 わずか十秒で、屈強な帝国兵三人を再起不能にする王女。それがシルフィア。

まだ弱冠十六歳だった。


 だが、今のシルフィアには勝利の高揚感は無かった。


 大国シルトベルト帝国に祖国ベールウェスト王国は滅ぼされようとしている。王城は大量の爆薬で木っ端微塵。すでに瓦礫の山だ。その上、父王アーサーの生死は不明となっている。


 シルフィアは憤っていた。なぜ、こうなってしまったのか。考えれば考えるほど腹が立ってくる。


 「畜生っ!なんでこうなっちまったんだ!」


シルフィアが解けない疑問を口にする。


 『フンッ。我を手に入れたからに決まっておろうが』


 魔剣エクリプスが答える。さも当然のように。


 だがシルフィアは納得できなかった。違う。あいつらのせいだ。シルトベルト帝国大帝。そして裏切り者マーリング。


 ――全部、あいつらのせいだ。


 「次は、大帝とマーリングをぶっ飛ばす」


 先ほど、ぶっ飛ばした帝国兵三人が地面に転がっている。

それを冷ややかに見下ろして、新たな復讐を胸に誓い、シルフィアは不敵に笑った。


 「貴様ッ!そこで何をしているッ!!」


 気づけば、新手のシルトベルト帝国兵に見つかっていた。今度は十人ほどの中隊だった。


 帝国兵はベールウェスト王国の王都を、略奪し尽くす気らしく街の至る所にいた。アーサー王がいち早くほとんどの民を避難させておかなかったら、虐殺も起こり得たかもしれない。


 『何をしているシルフィアよ。とっとと逃げい!』


 魔剣エクリプスが指図する。


 「はっ! 逃げる? 冗談じゃない!

 これからあたしは帝国に喧嘩を売るんだよ!あんたも付き合え!」


 『だったら、せめて鞘から抜いて使えッ!』


 シルフィアは一人帝国へ喧嘩を売った。

 頼みの武器は、棍棒代わりに担いだ一本の魔剣。


 『我は棍棒ではないッ!!』


 千年の長きに渡り、封印されていた魔剣エクリプスが、今日もキレていた。


 シルフィアは黒い大剣を大上段に構え、シルトベルト帝国兵の一団の中に切り込んでいった。シルフィアの長い戦いの日々がこうして幕を開けた。


 いや、戦いは魔剣エクリプスと出会ったその日から、すでに始まっていたのかもしれない。


 脳筋王女と伝説の魔剣の物語が――。

読んでいただき、ありがとうございます!!

今日から始まった新連載です。よろしくお願いします。


「面白かった!」


「続きが気になる!」という方は、


ぜひブックマークをして頂ければ、とても嬉しいです。


ついでに評価もお願い致します。星ひとつでも構いません。お気持ちだけで結構です。


では、次回も、お会いしましょう!

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