デートの予行練習7
予行デートも終え、帰路に着いていた。
ショッピングモールからバスを使い、駅まで向かう途中だ。
隣に座っているまりんが、俺に体重を乗せている。
肩を枕にしているおかげで、さらさらの髪の毛が腕に絡まっていた。
甘い香りと、柔らかい温もり、窓から刺す茜色の陽光に、青春してる実感が湧く。
浮気じゃないよ。俺の本命はいつだって詩にゃんだ。
今はまりんとデートしているのなら、隣の女の子を優先するべきだ。
……浮気じゃないよ?
これは練習だから。
「天音さんと、ソプラちゃんは置いてきて、よかったの?」
疲れているのか、まりんの瞼は重たそうにしている。
「目的地が一緒なだけで、一緒に行ったわけではないからね」
特に邪魔されることもなく、何が目的だったのか、最後まで理由は分からなかった。
「ソプラちゃんのこと、今の奏はどう思ってるのかしら?」
八木家の女性陣との話し合いの末、ペットになると結論に納得した変な奴だ。
今更、仲良くするつもりもなければ、過去の因縁をどうこう言うつもりもない。
「もう俺には関係ないと思ってるよ」
「奏、それはストーカーになったとしても、実害がなければ、放置ってこと? いつ、愛情が憎悪に変わるか分からないのよ?」
怖いことを言う。
一度、自分で振っておいて、その自責の念を抱きいた。それはもう許しているのだから、後はソプラの自由だ。
今、ソプラが八木家に執着している理由が何なのか。
「一方的に愛したいとか、怖いことを言ってたけど、まさかストックホルム……」
あまりの恐怖心に、恋心だと勘違いした。罪悪感と恋心を勘違いしたよりか説得力はありそうだ。
「そこまで、ソプラちゃんを怖がらせたの?」
「拒絶されてから、全然干渉してない」
「それでストックホルムになるのかしら?」
「そうでも理由をつけないと、不自然じゃないか?」
「ソプラちゃんが本当に罪悪感を持っていたなら、ずっと……奏を考えてたはずよ。いつしか恋心に変わったとしたも変じゃないわよ」
言われて、何となく理解できてしまった。
俺も、詩にゃんを好きだと思い続け、想うようになった。
まりんも、俺を好きになるように動いて、その通りになった。
なら、ソプラは俺に謝りたいと思い続け、反省し続けていたはずだ。
その反省が、愛し続けることだとしたら、いつしか本物の気持ちにもなっていても不思議ではない。
思考は、言葉になり、 行動に移し、性格が形成され、運命が決まる。
「なぁ、本当にソプラが、俺のことを愛したいのだとしたら、その気持ちを否定するべきなのかな?」
想い続けた気持ちを、理解されないまま否定される痛みは知っている。
それを教えてくれたのはソプラだ。
傷つけられた過去があるから、傷つけても大丈夫とは俺は思えない。
けど、愛し続けたいという気持ちに対する解答は持ち合わせていない。
まりんは何も言わない。
バスに揺られながら、夕焼けの景色を眺める。
小さな呼吸のリズムが、まりんの休眠を知らしてくれた。
駅に着くまで、まりんを休ませてあげよう。




