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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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真面目な話し合いは退屈

 情報の共有をすると言っても、共有するのはジグの長年の調査により、ルミネ王女を教皇の手から救い出すことができた、というところまでである。

 ジグが騎士団を裏切っていたことまでは話さないし、その詳細については語らない。

 そこまでの事情を語るのは、昨晩一緒にいた者たちまでである。

 悪事は全て、教皇と【人形遣い】に丸投げだ。

 今更一つ二つ余罪が増えたところで何が変わるわけでもない。


「……ルミネお姉様は今までずっと操られていた、ということなのかしら?」

「そうですね……。どうやら随分と長いこと操られていたようです。その間もぼんやりとした意識はあったのですが……。ファンファ王女は幾度も会いに来てくださいましたよね?」

「そう……、ですわね……?」


 あまりに今までと反応が違うため、まだついていけていないのだろう。

 ファンファは小首をかしげながら、穏やかに話すルミネの顔をじっと見つめる。


「いつもちゃんとお話しできなくてごめんなさい」

「いえ、お姉様の意思でなかったのでしょう……? 随分と長い時間、辛い日々を過ごされたのですからそんな……」


 座ったままではあるが、深々と頭を下げられると、ファンファは動揺してすぐにルミネのことを許してしまう。これまでの上下関係のこともあって、強く出るのは難しそうだ。


「姉上はいつからか随分と性格が変わったものだと思っていたが、そのような事情があったのか。結局のところ、ファンファが悪さをしたのもその【人形遣い】とやらの仕業で、ジグが裏切っているように見えたのも、それらを騙すための演技であったということだな。……正直、ほっとした」

「……ご心配をおかけいたしました」

「いや……、俺のことは気にしないでいい。ホワイト殿は無茶をするところがある。二人が揃っていないと、騎士団が心配だ」

「そう……、でしょうか」


 ハップスを騙している感覚が心苦しいジグであったが、これからは一生こんな感覚が続いていくことになる。

 それが、裏切った自分に与えられた罰であると噛みしめながら、ジグは問い返す。


「騎士団にはジグ殿を慕う者も多い。ジグ殿が認めるから、ホワイト殿を認めている者も多い」

「そんなことはありませんよ。ホワイト殿は立派に団長の任をこなされています」

「…………ジグ殿はどうもホワイト殿に甘いところがあるからな。俺もそこに甘えていた部分はあるが」


 そう言ってハップスは腕を組んで口を閉ざした。

 あまりしつこく言ったところで、この辺りの意見は中々すり合わないと分かっている。

 ハップスはなんとなく、ジグがホワイトに甘い気持ちも分かるのだ。

 ホワイトの強さは、騎士を目指す者や、強さを求める者たちにとっての憧れでもある。


「それにしても、随分とクルムの派閥も大きくなってきたものね。これなら王位継承争いにも勝ち目が出てきたんじゃないかしら?」


 ファンファが調子に乗りながらクルムへと話を振る。

 実際、街の商店の人たちくらいしか味方がいなかった状況から考えると、随分と勢力が拡大したものだ。

 大商会の一つであるパクス商会。ファンファの支援商会であったランゴート=ゴールドも、一応味方に数えていいだろう。それに旧アルムガルド領の〈要塞軍〉と、旧貴族派閥の一部。そして今回取り込んだ騎士団の副団長であるジグと、ルミネの影響力が強い教会勢力。

 大した進歩であると浮かれても構わない程度には、協力者は増えている。


「まだまだ、ですね」


 しかしクルムは冷静に首を横に振った。

 明るく話していたファンファも、つまらなさそうに口をとがらせて、テーブルに頬杖を突く。


「クルムは真面目過ぎるわ。たまには現実を忘れてパーッと喜んだらいいと思うのだけど?」

「ファンファお姉様が代わりに喜んでくださるので、それで十分かなと」

「それは褒めているのかしら……?」


 微妙なところだが、まぁ、ファンファが浮かれて騒いでいると場の雰囲気が明るくなることは確かだ。彼女には天性のそういう才能がある。


「冷静に考えて……、王国の様々な力を全部で十に分けたとした時……、私に協力してくださる勢力は、かき集めて精々一から二、程度でしょうね。おそらくジグラお兄様が、外部から勢力を持ち込んできても一程度。……そしてヘグニお兄様がおそらく、五から六程度でしょうか。王国の主な貴族はほとんどヘグニお兄様の味方ですし、商人たちも基本的には長いものに巻かれることを良しとします。何もしなければ、民衆もヘグニお兄様に味方するでしょうね。それが一番順当ですから」

「そうやって、希望のない話をする……」


 ファンファがぶーたれたまま文句を言うが、クルムはそこできりっと表情を引き締めて、もう一度首を横に振った。


「いいえ。ようやく、ヘグニお兄様とまともに意見をぶつけ合える程度まで持ってこられた、と考えてください。先日陛下の前での報告会で、大事な議題が出されました」

「ああ、【自由に殺してください会】じゃな……」


 正直話がちっとも面白くないグレイが、自分の分かる話が出てきたところでぼそっと呟く。

 ハップスとファンファがぎょっとした顔で、クルムがジト目で、ジグが目元をひきつらせ、そしてルミネが目をまん丸くしてグレイを見た。

 グレイは頬杖を突いたまま、つまらなさそうに「なんじゃ、続けよ」と、まるでこの場で一番偉い人間かのように、空いている方の手をプラプラと振るのであった。

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― 新着の感想 ―
いつでも盤をひっくり返せる最終兵器だからねえ 脅威に思われたら何をされるか分からん 王様が終了をかければそこで詰む どっち付かずを増やして敵の首を引っこ抜くのもアリ
まあ、一番年嵩だから…目上って言うか?ではあるなw いや、目上って役職もあるからやっぱダメか?w
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