状態異常
「ふぅ……ここもあらかた片付いたか」
パラライズクロウラーとの戦いもこれで三戦目。倒した数は……三〜四十匹くらいだろうか。
(だけど、おかしい。全然麻痺にならない)
四割で麻痺になるなら十五〜六回は麻痺を引いて奴らにボコられてなきゃいけないのに……
「大丈夫ですか、レオさん。攻撃何度かうけてますよね……」
「ああ。でも、大した傷じゃない。それよりも〈水弾〉で大分Mpを使っただろ?」
アイラは全力で俺に近寄ろうとするパラライズクロウラーに〈水弾〉で攻撃してくれていた。実際彼女の援護が無ければ何度も攻撃を受けていただろう。
「僕が外に出ている時は精霊魔法を使ってもアイラはあまりMpを消費しないよ」
「へえ〜」
やや自慢気に胸を張るハーディアの言葉に俺は驚く。
(マジでか! 初めて聞いた)
精霊守ってみんなそうなのかな? いや、そんなはずあるわけない。
「それにしてもキミは面白いね。凄く運が良いのか、何か他に理由があるのか……」
運は……いいかな? しかし、他に理由か。
(ステータスを見てみるか)
何かあったらステータスを確認。これは冒険者の基本だ。まあ、もう大分見てないけど。
◆◆◆
レオ 人間(男)
Lv 21
力 19
防御 17
魔力 16
精神 16
素早さ 18
スキル
〈雑用(Lv1)〉
※状態異常無効・経験値UP付与中 new!
SP 52
※連続撃破ボーナス new!
◆◆◆
え、Lvが滅茶苦茶上がってる。元々Lv12だったのに! 後、この「状態異常無効・経験値UP付与中」って何だ?
(それに……SPが52!?)
何気なく開いたステータス画面だったが、一体何が起こってるんだ、これは……
「レオさん、また!」
「いくよ、レオ!」
二人の声で前を見ると、新手のパラライズクロウラーが……ホント、うじゃうじゃいるな。
(とにかく次の野営地に着いてから考えよう)
俺は気持ちを切り替え、剣を抜いた。
※
かなりの数のパラライズクロウラーに出会ったので野営地に着くころには夕方になっていた。
(結局一回も麻痺にはならなかったな)
これも〈雑用〉のおかげなんだろうか……
(確認してみるか)
今、アイラは食事の準備をしていて俺は一人。あ、膝にはハーディアがいたか。ちなみにこの野営地も俺が綺麗に整えておいた。
◆◆◆
レオ 人間(男)
Lv 29
力 23
防御 21
魔力 20
精神 20
素早さ 22
スキル
〈雑用(Lv1)〉
※状態異常無効・経験値UP付与中
SP 158
※連続撃破ボーナス new!
◆◆◆
うおっ……何だこりゃ。
(この〈雑用〉ってどんなスキルなんだ?)
実は俺はこのスキルについての詳細を確認したことがない。だって、雑用だぞ!? 大した効果はないって誰でも思うだろ。
(まあ、いいや。見るだけ見てみよう)
◆◆◆
〈雑用(Lv1)〉
掃除などの雑用が手早く出来るようになる。また、雑用の恩恵を受けた者にランダムで追加効果を付与する。
◆◆◆
ランダムで追加効果……今回は状態異常無効・経験値UPが付与されたってことか。
(ん? 待てよ……じゃあ、今までは誰にこの効果が付与されてたんだ?)
ギルドの掃除なんかは俺の仕事だったから……どうなるんだ?
※
〈ザガリーギルド長視点〉
「これは一体どういうことだ!」
俺達はとにかく急いで合流地点に急いだが、勿論間に合うはずもなく……今は燃えるような赤髪の女剣士から猛烈な抗議を受けていた。
「ダグラス家からの襲撃が予想されたにも関わらす、“必ず護衛する”とそちらが何度も保障したから里を出たというのに!」
ぐぐぐっ、それは……
「皆様には今すぐ治療をさせて頂──」
恐る恐るマックスがそう言いかける。が、その申し出に赤髪の剣士は更に激高した!
「我らのことなどどうでもいい! しかも、やっと来てみればたった四人。しかも、退役したような冒険者ばかり……我らを舐めているのか!」
ぐぐぐ……本当は〈剣術〉のスキル持ちのオスカーとかうちのエースを連れてくるつもりだったんだよ!
(それもこれもあんた達が来るのが急に早まったからだろ!)
だが、そんなこと言えるはずがない。だって、時期が悪いと精霊守の派遣を渋るルースリー家に“必ず護衛を送る”と確約したのは俺だしな……
「これがお前達の言う誠意か……もう、いい! 私達はアイラ様を探す! お前らは私達の邪魔をするな!」
そう言うと、赤髪の剣士は名乗りもせずに部下を引き連れ、俺達に背を向けた。
(や、やばい)
完全に怒らせてしまった。何とか挽回しないと……
ブブブ! ブブブ!
「ギルド長、通信用の魔道具が」
「分かってる」
マックスにそう言われて、懐に手をのばす。これはよっぽどのことがない限り鳴らすなと言ってあるのだが……どうしたんだ、一体。
「ザガリーギルド長、大変です!」
何だ! 既にこっちは緊急事態だよ!
「オスカーのパーティーがクエストを放棄して戻ってきました!」
「何? オスカーが戻ってるのか!」
よし、なら急いでこっちに……って放棄だと?
「他にも続々とクエストを放棄して戻るパーティーが……先方からのクレームがつぎつぎと」
な、何ぃ?
「一体何があった? オスカーはウチのエースだぞ! それに他のパーティーもクエスト放棄っていうのはどういうことだ!?」
「状態異常にする魔物にやられたと……こんなことは初めてです!」
状態異常だと? そんな話今まで一度も出たことないじゃないか。
「とにかく早く戻ってください! 私達では手に負えません!」
はあぁぁ? こっちはそれどころじゃないんだよ!!!