社交辞令
私は小さい頃より社交辞令が苦手だ。
記憶を遡ること、それは小学三年生のとき。
ヒロ君という友達がいた。
帰り道は学校で反対方向ということもあり、放課後によく遊ぶ友達というほどではなかったが、休み時間はよくサッカーをして遊んでいた。
私はあまり友達が多いわけではなく、数少ない、上下関係なく遊べる仲間だった。
そんなヒロ君が引っ越すことになり、クラスのなかでも人気者(今で言う陽キャ)だった彼は、お別れ会を始め、多くの人に惜しまれながら転校していった。
翌日から私は、学校に行く前に郵便受けを確認する日々が始まる。
そう、お別れの際に彼が言った「少し落ち着いたら手紙書くね」のひと言を真に受け、いつ届くだろうか、返事はどんなこと書こうか、毎日楽しみに待っていたのだ。
しかし、待てども待てども返事が来ない。
ほかのクラスメイトに聞いても、手紙をもらった人はいないようである。
ついに1ヶ月が経とうとする頃、私は母に頼んで、便箋を買ってもらった。
来ないなら私から書けば返事が来るはずだ。そうおもったのである。
内容は最近のクラスの様子や、思い出など、書きためていたことをたくさん書いた。
そして、気づくのである。
彼の住所を知らないことに。
彼は一体、どこに引っ越したのか。市内なのか県外なのか、はたまた国外なのか、一切知らないのである。
もしかしたら、彼も手紙を書こうとしたのかもしれない。しかし、住所が分からなかったから、書けなかったのではないか。
そう思い、私はおもむろにペンを置いた。
あの私の書いた下書きはどこにあるのだろうか。今はもう誰も知らない。
そして、彼が本当に手紙を書こうとしたのかどうか、これも誰も知らないのである。




