表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/92

#44 扉の向こうで鳴くまで

(2026/02/24)


無事に愛媛から大阪へ戻ってきた。


道中ずっと、自宅に残してきた小さな鳥のことばかり考えていた。


扉を開けて、何も声が聞こえなかったらどうしよう。

小さな命が、ひとり孤独に炎を絶やしていたらどうしよう。


そんな最悪を、つい想像してしまう。


直したい癖だ。

けれど最悪を思い描くことで、「そんなわけないだろ」と自分を安心させているのも事実だ。

困ったものだが、これも私なりの生存戦略なのだろう。


梅田に予定より四十分早く着いた。

祈りが通じたのかもしれない。

いや、運転手さんのおかげだ。


お土産と、実家の本棚から持ち帰った本を詰め込んだキャリーケースを引きずり、駅の階段をズイズイと上る。


今ならぶつかりおじさんが現れても吹き飛ばせる。

覇王色が出ていたと思う。


最寄り駅に着き、まっすぐ帰宅。


鳥よ。

鳥よ。

鳴いてくれ。


鍵を開ける。

キャリーケースの音で何も聞こえない。


もしも、がよぎる。

体温がすっと下がる。


部屋に入り、灯りをつけた。


――ゴソゴソ。


音がした。


マイスウィートバード。


帰ってきたよ。


帰省前と何ひとつ変わらぬ様子で、ケロッとしている。

ケージを開けると、不思議そうに私を覗き込み、羽をバタバタさせて


「ギャギャギャ」


と、可愛げのない声で鳴いた。


元気だ。

良かった。


いつも通りの、可愛くない声だ。


肩に乗り、手に乗り、顔を近づけると鼻の油を舐めようとする。

指を差し出せば、頭を取れそうなほど上下に振る。

爪と肉の間に嘴を差し込み、剥がそうとする。


変わらない。


「帰るまでが遠足」とはよく言ったものだ。

今になってやっと分かる。


帰省は楽しかった。

もっといたかった。


けれど、この小さな鳥との暮らしを再開できる喜びに、私は震えている。


いつか、母や祖母にも会わせてあげたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ