ルフランの怒り
「レノア様、ごきげんよう。
私、丁度仕事を探しておりますの。
何か、私でもお役に立てることはないでしょうか?」
水樹は、最近疲れていた。
言わずと知れたお金持ちになってから、いろんな奴が絡んでくるからだ。
家族全員好き勝手に行動した結果、何故か上手く成功してしまってから、うんざりしている。
リンダ夫人に事業を任せ、他国に移住することも視野に入れているところだ。
確かに、声をかけてきた『ルフラン』と言う少女は可愛い。
俺のフィギュアに激似だ。
けれど俺の嫁達は、あくまでも空想の産物。
現実に用はない。
2、5次元は、ない寄りのなしなのだ。
あくまでも俺の場合はね。
なので、
「俺は今のところ間にあっているよ。
バイトなら友人を紹介するけど、どうする?」と声をかけたら、一瞬睨まれた。
(怖えぇ、美人の怒り顔。
金糸の髪と大きな碧いタレ目で可愛いのに、スゲエ迫力。
これ平民じゃないな、たぶんそこそこの貴族だ。
に、逃げよう、知らんふりして)
俺は意を決して、独り言のように呟いた。
「そろそろリンダ夫人のとこに行かないとな。
ああ、忙しいな」
前侯爵夫人の名を出すと、さすがの彼女もピクッと反応した。
「夫人と懇意なのですか?」
既に怒りは収まり、急にアルカイックスマイルに変わっていた彼女。
「あ、うん。いろいろお世話になってるよ」
「そうなんですね、すごい!」
「俺は親のついでだけどね。
家族全員でお世話になってるから。
俺なんて、あんまり役に立ててない方だよ。
もし本気で働きたいなら、親に面接受けた方が良いよ。
じゃあね」
俺は一気に言い切り、走り抜けた。
あの手のプライドの高そうな女は、思い通りにならないと離してくれないと見た(最近の経験上で)!
貴族だと面倒だし!
そろそろ、ボディーガード必要かな?
取り残されたルフランは、レノアに逃げられて呆然としていた。
「私を置いて逃げたのね。話の途中で…………」
おもむろにポーチから扇を取り出して、“ヤアッ”と声を出したかと思うと、バキッと二つに折り捨てたルフラン。
「あの男、絶対許さないから!」
いつもの可愛らしい話し方とは違う、ドスの効いた声が轟く。
近くにいる彼女の取り巻きにもその声は届くが、コアなファンはそれも含めて彼女を敬愛していた。
「貴方達、彼の行きつけの場所を全て探してきて。
お願いよ!」
「「「「御意に! マイクイーン!!!!」」」」
何処に隠れていたのか、十数名のイケメンがワラワラと出てきた。
どうやらルフランは、女王様のようだ。




