基礎体力は大切に。
レアの村まではしばらくは道らしい道がなかった。
というのも俺のワンルームはちょうどレアのような狩人もよほどの事がない限り行かないぐらい奥地のようで、レア自身もコロコロ虫をおいかけてたまたま立ち入ったぐらいである。
しかも、その奥地は本来は聖域と呼ばれているようで、よけいに立ち寄らない。
そんな場所に住んで良いものかとレアに話したところ、「神様の代行者である賢者様なら問題ないと思う」とのことだった。
暫く道なき道を行き、ようやく道のような場所に出る。といっても現代のように舗装されているわけではなく、人がある程度通っているためにできた踏みしめられたような道であるので、足場はあまり良いと言えない。
舗装された道になれた俺にとっては結構つらい道のりだったが、スマフォによりステータス強化されている分、幾分ましと言える。幾分、といったのは所詮魔法使いのステータス、体力に自信があるわけもなく、膝は笑うし、息切れはするしで涼しい顔のレアやはしゃぎ回ってあっちこっちにマーキングするぽんたと比べると情けない姿である。
「あと少しだよ。トトナ、がんばって!」
レアが励ましてくれる。その両手には俺がつくった手土産が提げられている。
出発時はたしかに俺が持っていたのだが、俺がへばり始めたころにレアにバトンタッチされた。
軽々と持っているが、あの巨大なイノシシの肉の塊とベーコン、ウインナーがぎっしり入っているのだ。当然、軽いはずはない。レアの怪力があればこその悠々さだ。
「ご主人様、なんで精霊魔法つかわないんだぁ?風の精霊に協力してもらえば移動は楽ちんじゃないだかぁ~?」
─── 豆ぽんめぇ・・・なぜもっと早く言わないっ!
移動するということは徒歩であると勝手に決めつけていたが、よく考えると今の俺は見た目は現代人だが、ステータス的には大賢者トトナ・マルコシアスなのである。
ゲーム内で駆使してきた加速スキルがあるではないか。
だが、気づいたときには遅かった。
「トトナ、見えてきたよ。あれが火の部族の集落だよ」
レアが言う方角をみると、集落の目印なのか、入口の門とその支えにたてられた巨大なトーテムポールのようなものが見えてきた。
村の中心からは煙のようなものが細く長く立ち上っている。
近づいていくと門のでかさがはっきりとわかる。
自分の背丈の3倍はあるんじゃないだろうかというぐらい巨大な木製の門である。
「兄さんー!今帰ったよ!!」
レアが門の前にいる男に手を振った。
門の前の男も手を振り返すが、首をかしげて固まる。
「妹よ、よく帰った。でもなぜ何も仕留めずに帰ったのだ。けがでもしたのか?」
「違うよ。獲物はココだよ。そしてみんなに紹介したい人がいるんだ」
そういうと、両手に提げた鞄を示した後、疲れてヘトヘトの俺の腕をぐいっと引き寄せて俺を兄と呼んだ男の前に引っ張り出した。
レアの兄は、筋肉ががっしりついた体型で、レア同様に赤い髪に赤い瞳、そして日焼けした赤銅色の肌をしていた。筋肉はがっしりだが生活に必要で使い込まれたようなそんな体つきであり、村の門前を守のにふさわしいたくましさである。
レアがそのたくましい兄の前に俺を無防備に出したものだから、穴が空くほど見つめられて俺の滝汗が止まらない。
「初めまして、トトナ・マルコシアスと申します」
「ん。名前付きと言うことは神の祝福を受けたものか。歓迎しよう、神に祝福されし客人よ。あいにく、俺は未だに祝福を受けられずにいるので名のる名前がない。名のれない無礼を許してほしい。みんなに紹介と言うことは族長にもだな。よし、客人、今から村への門を開くので、まずは妹についていき、族長に会ってほしい」
レアの兄はそう言うと、その筋肉のついた太い腕で重そうな木の門を押し開いた。
この門の重さをみると余程の力がないと開けられないようになっているようだ。
並の力では無理そうだ。
「いこう、トトナ。族長の家はこっちだよ」
レアに手を引かれて、俺は火の部族の村へと入っていった。




