フリュス・11
「いらっしゃいませー」
「・・・・」
俺が店員の前、つまりやっと酒呑童子の前に立った時、日はすでに暮れていた。
「何にしますか?」
「・・・・」
やたらニコニコ笑顔で話しかけてくる酒呑童子。
「あれ?お客さん?・・・・ってお前は」
「やっとか!やっと気付いたか!」
「いやーすまん。ココンとこ激務でな。酒が売れるのなんの」
「商売繁盛ええですね!!そうじゃねぇ!!そうじゃねえよ!!なんでお前生きてんだよ!」
「いや、だって俺こう見えても大妖怪だぜ?そう簡単に死ぬかよ。相手が神だとしてもな」
「・・・・じゃああそこの豪鬼はなんなんだよ」
俺は店の周りの掲示物をいそいそ片付けている豪鬼を指さす。
「いやそりゃ生きてんだよ。大妖怪の部下が雑魚じゃ困るだろ」
「・・・じゃあなんだ。あのときはやられたふりをしてたと?」
「ああ、そして本気でもない」
言い切りやがった。
言い切りやがりましたよ。こいつ。
「じゃあなんで本気出さなかったんだよ?そうすりゃ俺たちを撃退できてたかもしんねーのに」
「・・・まぁ、頼まれてたんだよ。あんときはお前らの力がどんなもんか確かめろってな」
「誰にだよ」
「お前の知り合い」
「???」
「・・・マジでわかんねぇのか」
「・・ああ」
「神官だよ神官。キョウのな」
「はぁ??なんであいつが・・?」
「それは直接あいつに聞いてみな。」
「・・・だとしても・・なんでお前は神官の言うこと聞いたんだ?敵だろ」
「・・・まぁ、俺はあいつと戦いたくない。万一にも勝てる可能性がねーからな」
「そりゃ・・」
神官は超高度な空間を操る魔法を使うからな。飛ばされたら勝ち目はない。
「それに「処刑」されるのも嫌だ。・・いや「処刑」が一番嫌だ」
「?処刑?なんだそりゃ」
「・・・この世界じゃ常識だぞ・・。まぁお前は来訪者だからな。知らんのも無理ない。」
「この世界には何人か「神官」の名前を持ってるやつがいる。・・まぁ、本当に神に仕えてる「神官」とかじゃなくてそのぐらいの力を持ってるってことだが・・」
「で、キョウの神官は空間転移を使って増えすぎたモンスターやあまりにも狂暴なモンスターをほかの魔力が薄い星に飛ばすんだ」
「そしてその飛ばされた星には飛ばされたモンスターを狩る「処刑者」がいるんだよ。で、そこで確実に「処刑者」どもに殺されるってわけだ」
「この「処刑者」って奴らは恐ろしく強いらしい。そしてその「処刑者」の中にはモンスターを殺して喜ぶ変態もいるらしい」
「ま、そういうわけだから俺は神官にはさからわねぇ。そんなことして「処刑」されるのは嫌だからな」
「ふぅん・・」
「しかし神官が俺に頼んできたときは驚いたな・・。」
「なんだ。俺の時が神官に初めて頼まれた「依頼」だったのか?」
「ああ」
神官は俺の力を図るためだけにあんなことを・・
「ま、そんなことはどうだっていい」
「「!」」
俺の後ろから聞こえた声に俺と酒呑童子が同時にその声の主を見る。
「そいつは「妖怪」なんだろ?なら殺しとかなきゃな・・。」
「お、おい夜叉・・」
夜叉から放たれる殺気が今までに感じたことがないまでに膨らんでいる。
「ふん・・なるほど・・。君、「刀」・・「日本刀」がモデルの付喪神か・・」
「わかったか・・。」
「ああ、これまでの歴史の中で一番妖怪を屠ってきたのは「刀」・・「日本刀」だ。妖怪の一番の天敵といっていいだろう」
「そのとうりだ。強い刀が生まれればそれ以上の強さを持つ妖怪が・・そしてさらに強い刀が・・。妖怪と刀は敵対関係」
「僕はここの人に害を与えるつもりはないよ・・。色々よくしてもらってるしね。食べ物とかもらってるし・・。と言っても聞いてくれないか」
「その通りだ」
夜叉が駆け出す。酒呑童子に向かって。
「お、おい!待て!!」
「・・・」
主の俺の声すら届かない。俺は夜叉を止めれない。
ならば・・
「大丈夫だよ。町に被害は出さないから」
酒呑童子しかいない。今の夜叉を止められるのは。




