第一章 超一流サッカー選手と私 PART2
「次は目白。目白。お出口は……」
車内アナウンスの声にさくらは小さく反応した。
間もなく目的地に到着するらしい。
彼女は今まで確認していた島に関する資料をいそいそと鞄に仕舞い始めた。
六月某日、
さくらはプロサッカー選手島啓介との初対面を果たすべく
電車に揺られているところだった。
車内がとりわけ快適と言うわけではなかったが、
六月と言うには暑すぎる東京の街に再び降り立つのは、
彼女にとって億劫以外の何者でもなかった。
だが、仕事となればそうも言っていられないのが社会人の性である。
さくらの今日の服装は、
清潔感を意識した白いブラウスに黒のスカートの組み合わせという
無難な格好をチョイスしていた。
初対面の相手に会う格好としては間違いではないのだろうが、
道中にかくであろう大量の汗で、
その清楚感が台無しにならないかだけが悩みの種であった。
目的の駅を目の前にして、さくらは左手に巻いた腕時計に目をやった。
時刻の針は間もなく十三時に差し掛かろうとしている。
約束の時間は十四時に駅近くの喫茶店だったので、
ひとまずに遅れずに到着出来そうなことにさくらは安堵した。
ただ、相手は超有名人である。
喫茶店だと人目に付いて取材に支障をきたすのではないかという不安を、
さくらは今日の場所を聞いた時から感じていた。
もちろん、さくらはその旨を比呂木に話したのだが、
どうやらそこは島の方から提案してきた店らしく、
取材させて貰うこちら側としてもその言葉をむげには出来なかったそうだ。
まぁ、これまで取材を何本もこなして来た島の言うことだから大丈夫だろう、
と比呂木は無責任なことを言っていた。
そんな安易な考えはともかく、
もう決まってしまったことを心配していても仕方がないのも事実である。
さくらはそう腹を括って今日を迎えていた。
ほどなくして、
電車は目白駅に到着した。
電車のドアが開いた瞬間に外から入ってくる熱気、
そして降りるさくら達よりも先に車内に入ってこようとする人間、
始めて上京した際に感じた都会の輝きを、
さくらはそこに感じることはもう無かった。
同じものを見て感じているはずなのに、慣れとは本当に恐いものである。
ただ、品川や池袋ほど人は多くなく、
それでいて住宅街等に景観に高級感を漂わせている目白を指定してきたことは、流石はプロスポーツ選手といったところなのだろう。
比較的もの静かな町並みを通ることが出来たおかげで、
元来人見知りであるさくらが抱いていた緊張感も幾分ほぐれてきていた。
今日は、どちらかと言えば顔合わせの意味合いが強いので、
軽くインタビューして終了となる予定と比較的にスケジュールとなっている。
ただ、明日以降はトレーニング風景や食生活、
そしてプライベートな時間をどう過ごしているかなど、
文字通り密着取材が予定されていることを考えると、
従来の仕事として会っているさくらに比べて、
折角のオフの時間も仕事にとられてしまう島のほうが気の毒なのかもしれない。
さくらが駅を出てから五、六分ほど経っただろうか。
彼女が開いている携帯電話の画面に表示された地図によると、
そろそろ目的地である喫茶店が見えて来ていいはずだった。
とそこで、
携帯電話をまじまじと見るさくらの背後に大きな黒い影が接近した。
「『ホームタウン』の方ですか?」
「ふぇっ!」
急に声を掛けられた衝撃で、さくらの口から変な声が出た。
だが、
いきなり聞こえてきた言葉に自分が手掛けている雑誌名が入っているとならば、むしろ平静を保てと言うのが無理な話なのかもしれない。
急いでさくらが振り返ると、
さっきまでランニングをしていたのか、
スポーツウェアを着た男性が額に汗を滲ませつつこちらを伺っていた。
「失礼。
後ろから、見覚えのある店の名前が見えたものですから」
その男はとても落ち着いた口調で掛けていたサングラスを取りながら言った。
その顔を見て、
ようやくさくらにも、この男が誰なのかが分かった。
「こ、こちらこそ失礼致しました。
島啓介さんですよね。
わたくし、『ホームタウン』の矢作さくらと申します。
本日はお忙しいところ、
わざわざお時間を作って頂きまして、誠にありがとうございます」
ここに来るまでに落ち着かせた気持ちは何処へ行ったのやら、
さくらは噛み々みなセリフを早口で捲し立てた。
そして、急いで名詞を渡そうとガサゴソ鞄を漁るさくらとは対照的に、
島の対応派は冷静そのもので、静かに「どうも」と言うだけだった。
しかし、
何時までたっても名刺が見つからずにあたふたしているさくらに見兼ねてか、
島はゆっくりと次の言葉を口にした。
「少し早いですが始めてしまいますか」
そう言って島は、さくらの返事を待たずに歩き出した。
さくらは何とか「はっ、はい。よろしくお願い致します」とだけ言い、
一先ず名刺を探すのを諦め、慌てて彼の後ろに付いた。
こうして爽やかな風貌のスポーツマンと、
緊張で必要以上に顔を強ばらせた女という
対照的な表情をしたカップルが出来上がったのだった。
と言っても、二人は微妙な距離感を保ちつつ歩いているので、
事情を知らない人間が端から見ても、恋人同士とは思わないのかもしれない。
道中、特に二人の間に会話はなかった。
ただ、さくらは島の後姿を見ながら、堂々と歩く人だな、
と思っていた。
先ほどの彼の落ち着いた対応や、
目の前にある伸びきった背筋を見れば、
さくらでなくても同じ感想をもつものなのかもしれないのだが、
それほどまでに齢三十一歳にして、
海外で成功を収めた人間が持つ風格が島からは滲み出ていたのだ。
ほどなくし歩いたところで、島の足が止まった。
「あのお店です」
島が指差す先には、
少し古びてこそいるものの、茶色の外壁に小窓が数箇所、
そして入り口のドアの上には小さな屋根が付いている、
レトロで落ち着いた雰囲気を漂わせる店があった。
ドアの傍に『喫茶店Pause』と書かれた小さな看板が立っていた。
「おぉ。どこか趣があるお店ですね」と思わずさくらは声を洩らした。
島には見慣れた風景なのか、
短く「そうですね」と言葉を返して再び歩き出したので、
さくらも遅れまいと後に続いた。
直ぐに店の前まで辿り着き、島が店のドアを開けた。
すると、カラン、カランっという鈴の音が響き、
二人の目の前に店内の様子が浮かび上がった。
店内にはクラッシク音楽が流れており、
テーブルや椅子など木製の家具で統一されたその空間には、
外と同様に落ち着いた雰囲気が漂っている。
だが、店内に他の客はいなかったことだけがさくらに少し違和感を与えた。
「いらっしゃいませ」
そう言って二人をにこやかに向かえてくれたのは、
店主らしき老人である。
カウンターの内側でコップを磨いていたようで、
彼の手元にはまだ乾ききっていないコップが幾つも並んでいた。
島はその店主に小さく頭を下げた後、
店内をグルッと見渡した。
「こんにちわ。
あそこのテーブルを使わせて頂いてよろしいでしょうか?」
島は、奥に見えるテーブル席を指差しながら言った。
「ええ、どうぞこちらに」
店主はそう言ってカウンターから出てきて、さくら達を促した。
さきほど島が指定したテーブルの傍まで行くと、
さくら達が通れるように店主は一歩退いて道を譲った。
「ご注文はいかがなさいますか?」
いつの間に準備したのか、
さくら達が席に着くと、その前におしぼりをそっと置いて店主は尋ねてきた。
「いつものでお願いします」
「かしこまりました。お連れ様はいかが致しましょう?」
「えっと、じゃあ同じものを」
さくらは二人の言う「いつもの」が何かも分からずに答えた。
「かしこまりました。
それではブレンドコーヒーを二杯準備致しますので、
少々お待ち下さい」
店主は一礼して、元居たカウンターへと戻って行った。
ああ、「いつもの」とはコーヒーのことだったのかと、
ここでさくらはようやく合点がいった。
さりげなく店主が教えてくれたことに感謝したのと同時に、
出来れば注文をする前に教えて欲しかった、と内心毒付きたい気分でもあった。
島は、ふっと息をついてハンドバックから取り出したタオルで汗を拭き始めた。
目の前のおしぼりに手を付けないのは、
彼なりのルーティーンなのだろうか。
それにしても、
今しがたまでランニングしていたわりには、あまり汗をかいていない様である。
プロスポーツ選手というものは汗の量までコントロール出来るものだろうかと、さくらは密かに疑問に思った。
そして、それからしばしの間沈黙が流れた。
向こうから声を掛けてきてくれる雰囲気ではないことを感じたさくらは、
彼が一通り落ち着いたのを見計らって、自分から話を切り出すことにした。
「改めまして、
わたくし片桐出版『ホームタウン』で編集をしております、
矢作さくらと申します。
お忙しい中大変恐縮ではありますが、よろしくお願い致しゅ、……致します」
さくらは挨拶をし直し、
島に出会った後からこの店に着くまでの道中から、
彼と店主がさっき挨拶しているまでの間に見つけ出した名詞を
すっと彼の前に差し出した。
もちろん、最後に噛んだことは気にしていない素振りを装うことは
忘れてはいない。
島は、目の前に差し出された名刺を手に取ったが、
その表情からはこれといった感情が宿っていないようだった。
「すいません、名詞は持ち合わせておりませんもので」
島は手に取っていた名詞をしまわず、テーブルにそっと戻しながら言った。
「いえ、お気になさらずに。
早速ではございますが、幾つかご質問させて頂きたいと存じます。
その際にボイスレコーダーを使用させて頂いてもよろしいでしょうか?」
記者が取材を行う際はもちろんメモを取るのだが、
このように相手の了承を得てからボイスレコーダーを使用するのが主流である。
島はさくらの手元に目線をやりながら、
「構いません。
ただ、コーヒーが来てから始めて頂いてもよろしいでしょうか?」と
別段申し訳なそうにせず、それでいてきっぱりした声で言った。
「ありがとうございます。
ええ、実は私もコーヒーが好きなので、
どんなものが飲めるか楽しみだったんです。
島さんは、こちらのお店によくいらっしゃるのですか?」
「ええ」
…………。
会話終了。
二人の間には再び静寂が流れた。
なんだか気まずさを感じ始めていたのはさくらだけなのか、
先ほど一言答えたっきり窓の外に目をやった島の横顔からは、
相変わらずその感情を読み取ることが出来なかった。
それどころか、
どことなく話しかけてくれるなオーラが出ているようにも感じるし、
別に何も考えていないようにも見える。
何れにしても、
さくらは「落ち着いた雰囲気のお店がお好きなんですね」とか、
「いつも同じコーヒーをご注文されるのですか」といった
次の言葉を出すタイミングを完全に見失っていた。
ほどなくして(さくらにとっては何時間もたったかのような静寂だったが)、
店主がコーヒーカップを二つ載せた丸いトレイを持って
二人の下に近付いて来た。
彼はさくら達の邪魔に無らないように配慮してくれたのだろうか、
静かにカップをテーブルの上に置いた後、
軽く会釈をして無言のまま立ち去っていった。
普段コーヒーを飲む際にはミルクを使用するさくらだったので、
テーブルに備え付けられているそれらに目をやったのだが、
島がブラックのまま口を付けたため、
それに習うように何も入れずに頂くことにした。
だが、これが結果的に正解だったらしい。
さくらは一口飲んだ後に、
思わず「……美味しい」と言葉をこぼしてしまった。
豆が持つ素材の風味というものなのだろうか、
コーヒーに口を寄せると仄かな苦味を含む優しい香りが彼女を出迎えてくれ、
さらにそれを口に含むと体を包み込むような温かみを感じることが出来たのだ。
人前でなければ一気に飲み干したくなるほどの願望さえ湧き上がってくる
くらいの美味だった。
一方の島の表情は相変わらず変化が無かったが、
コーヒーを一口飲んだ後にふうっと小さく息を洩らす声がさくらの耳に届いた。
「お待たせしました。始めて頂いて構いません」
島は顔を上げ、さくらの目を見ながら言った。
「は、はい。ありがとうございます」
あまりのコーヒーの美味しさにさくらの方が固まってしまっていたところに、
島から声を掛けて来てくれた驚きが重なり、
一瞬さくらの頭は真っ白になっていた。
さくらは一度深呼吸をした後、
「では始めさせて頂きます」と改めて一言断ってから
ボイスレコーダーのスイッチを入れた。
「島さんは三年前の世界大会で日本人最多の四ゴール、
これは大会全体でも五番目に多いゴールをあげたことが評価され、
スペインのトップチームからお誘いを受けたと存じます。
その大会で証明されたように、
日本でプレーしていた時から
世界でも活躍出来る自信はおありだったのでしょうか?」
「一試合一試合全力で取り組むだけなので、
自信がどうとかは考えた事はありません」
そう言う島の表情と声は素っ気無い。
「な、なるほど。
一つ一つの積み重ねが大切ということでしょうか。
では、スペインに出てから従来のポジションであった前線ではなく、
トップ下や中盤で起用されることが多いようですが、
慣れない役割でのプレーは大変だったのではないですか?」
「必要があるからやるだけですので、
それも特に気にかかることはありませんでした」
「与えられた仕事をしっかりとこなす!
これはサッカーだけではなく、社会人としても大事な考えの一つですよね!」
さくらはだんだんと島のリズムに体が順応してきたのか、
気の無い返事が返ってきても問題なく会話が進められて来ている、
ような気がしていた。
ただ、このままだと取って付けたような
一問一答にしかならないのも事実である。
新しい試みであるこの企画を成功させるために、
少しでも深みのある記事を作成しようとさくらも必死だった。
「移籍一年目から試合に出場し、
そのシーズンの途中から不動のレギュラーとして
その座を守り続けていらっしゃいますね。
リーグ内でも注目を集める存在かと思いますが、
私生活にも変化はありましたか?」
「特にありませんね。私よりも活躍している選手はたくさんいますし」
「サッカーの強豪国ともなると、
周囲の方も気を使って静かにしてくれるのかもしれませんね!
では、少し質問を変えさせて頂きます。
今は久しぶりの日本の生活を送っていらっしゃいますが、
帰国するにあたり、楽しみしていたことはございましたか?」
「それも特にありません。
オフ中もトレーニングや、
マネージャーから言われている仕事がありますので」
「……お休み中のところ、この度はお受け頂きありがとうございます」
折角の日本での生活を邪魔されている批判を
やんわりとぶつけられたかともさくらは思ったが、
島には特に深い意味は無かったようで、また静かにコーヒーを飲んでいた。
「むしろ……」
そこで島はふっと小さな息を吐き、コーヒーを置いた。
「日本の雰囲気は嫌いです。
何で普段は興味も無いことに対してあんなに騒ぐことが出来るのでしょうか。 名の知れた人と少し接触したからって、
自分の価値を高められるわけでもないのに」
島の表情は変わっていない。
しかし、だからこそその冷たい声は目の前のさくらに、
より強い恐怖感を与えた。
「スペインとは受ける印象が違う、と?」
何とかさくらは恐る恐る聞くことが出来た。
「と言いますか……、
いや、ごめんなさい。今のは聞かなかったことにして下さい」
「え、でも―」
さくらの言葉を、
島は「すみません」と小さく頭を下げて遮った。
さくらとしても、もう少し掘り下げていきたかったのだが、
島にここまでされたら引き下がざるを得ない。
「分かりました。
では気を取り直しまして、
オフとはいえトレーニング等でお忙しい日々をお過ごしと伺いましたが、
気分転換には……」
その後も幾つかの質疑応答が二人の間で飛び交い、
およそ三十分後に本日の取材は終了という運びとなった。
終始、島の塩対応とも言える
淡白な答えを記録するだけに留まった今回の取材は、
素人の目から見てもとても充実した内容とは言えない事は明白である。
さくらとて不完全燃焼な気持ちを抱えていることを否めかったが、
そこは島のせいにするのではなく、
自分の記者としての力が足りていなかったことを認め、
今回の反省を生かして明日以降の取材を実りのあるものにするために
気を引き締める方が生産的であると、彼女は結論付けた。
お店を出る際、
どうせ会社の経費だからと支払いを任せて欲しいと言うさくらの言葉に、
島は素直に従った。
これがさくらにとって目上の人物であったり、
一般的に見ても地位の高い人だと、
逆に嫌な顔をされることもあるのだが、
取材中と変わらない彼のそのドライな対応には
むしろさくらにとっては好印象だった。
とは言っても、島はスペイン仕込みの紳士である。
彼はさくらを駅までは送ってくれると申し出た。
しかし、この店から駅までは近かったし、
少し一人でゆっくり歩きたい気分だったさくらは、
その申し出を丁重にお断りして、
このまま店の前で別れることとなったのだった。
さくらは手早く会計を済ませ、店の外で待つ島の元に足早に近付いた。
「本日はお時間を割いて頂き、ありがとうございました。
明日以降もご面倒をお掛け致しますが、よろしくお願いします」
「いえ、こちろこそ。
それじゃ、お疲れ様です」
これからランニングの続きをするのだろうか。
島は軽く手を挙げ、その場から走り去っていった。
さくらも島の背中を見届けた後、
駅に向かって歩き出そうとした。
「と、その前に……」
周囲を見渡すと、
駅とは反対方向ではあったが一軒のコンビニエンスストアが
さくらの目に入った。
取材を受けて貰っている立場であったことと、
健康第一のプロスポーツ選手を前にしているという二つの理由から、
さくらは島と一緒に居る間は煙草を吸うのを密かに我慢していたのだ。
これでようやくニコチンを摂取出来ると、
さくらはそのコンビニエンスストアへと足を向けた。
果たしてそこにはさくらが期待した通り灰皿があった。
最近では、
煙草を売ってすらいないコンビニも多く、
もちろん、そういうお店の前には灰皿も置いていないわけで、
今回はそれがあっただけでもラッキーと思うべきなのだろう。
さくらはとりあえず鞄から取り出した煙草に火を点けて、大きく煙を吐いた。
そして、思わず「……疲れた」と溜め息を洩らしてしまった。
これは相手が島だったからというだけではなく、
やはり、初対面の人との顔合わせは緊張すると
さくらが常々感じているからだった。
それに加えて島との会話をあれだけ膨らませられなければ、
溜め息の一つも出ると言うものである。
煙草をぷかぷかと吹かしながら、
さくらは以前に見たスポーツニュース番組のことを思い出していた。
その番組に出ていたある野球解説者は、
「マスコミや周囲の人間を味方につけてこそ、本当のプロである」
と言っていたのだ。
確かにさくらは記者と言う立場上、
饒舌に語ってくれる人の方がありがたい。
だが、
仕事を抜きにした個人的な感想としては、
リップサービスに定評がある人よりも、
島の様に黙々と主戦場であるピッチでのみで仕事をこなす姿勢が、
本当のプロスポーツ選手として正しいと思えるのだった。
まぁ、どちらにしても読者に満足してもらえる記事を作らなければ、
今度はプロの記者としてのさくらの立場が危ないのは事実である。
取材期間は、今日を含めて一週間。
さくらは、先行きに対する不安をどこかに吹き飛ばすべく、
作れもしない煙の輪っかを吐き出そうと口をモゴモゴと動かした