島が語らないこと
アビーは、闇の中にあってはならない音で目を覚ました。
悲鳴ではない。もっと静かで、もっと悪い何か――湿った、ギザギザとした喘鳴。まるで、通るはずのないものを無理やり通そうとする呼吸のような音だった。
意識が完全に戻る前に、体だけが先に起き上がっていた。危険というものを、頭より先に体が理解する時のように。
くすぶる炉の薄明かりの中、床の上でエレオが横向きに倒れ、震えていた。
「エレオ――」
全身が、短く、激しい痙攣を繰り返している。踵が床板を打ち鳴らす。片方の鼻から、一筋の血。口の端からも、もう一筋。薄暗い光の中で黒く見えるその血に、唇にこびりついた白っぽい泡が混じっていて――理由を理解するより先に、胃の奥が冷たく落ちた。
「エレオ、ねえ――こっち見て――」
一瞬で、彼女は隣に膝をついていた。両手を宙に浮かせたまま、どこに触れていいのか分からず、それでも唯一知っている方法を試みる――母が、理由も説明せずに教えてくれたやり方を。二本の指を彼の首筋に当て、脈を探す。
あった。速すぎる。まるで叩きつけるような速さで。
「お願い」彼女は囁いた。「お願い、戻ってきて――」
震えが、止まった。
一気に――ずっと止めていた息を、ようやく吐き出すように。
全身が静止し――一秒だけ、たった一秒だけ、アビーは「終わった」と思った。慈悲深い、一秒だった。
エレオの目が、開いた。
それは、彼の目ではなかった。
青は完全に消え、こぼれたばかりのもののように濡れて見える深い赤に、すべて呑み込まれていた。
そこに、認識はなかった。エレオはいなかった。
ただ、何かが彼を通して外を見ていた――辛抱強く、目覚めていて、そして完全に、慈悲というものを持たない何かが。
もう一度名前を呼ぶ時間はなかった。
手が彼女の喉に食い込み、世界が斜めに傾いた――床に押し倒されたと気づく前に、肺から空気が叩き出されていた。
彼が、上に、のしかかっている。
生まれてから一度も脅威に感じたことのなかった重みが、今この瞬間、世界で唯一意味を持つものになっていた。
握る力が強くなる。強くなる。
部屋の輪郭が、やわらかく、灰色に滲んでいく。
彼女はその手首を引っ掻いた。口が、何もない空気を求めて開く。ずっと遠くの方で――自分が泣いているのだと、彼女は気づいていた。涙が横に流れて髪に沈み込んでいくのを。まだ考えることをやめていない、小さくて愚かな一部の脳が、この状況を「記録」していて――自分がこんなに怖がっていることを、恥ずかしいとさえ感じていた。
――こんな終わり方は、嫌だ。
遠く、奇妙な感覚の中で、そう思った。
――あんたに、こんなことされて終わるのは。
そして――何もなくなった。
手から力が抜けた。上にのしかかっていた重みが揺らぎ、傾き――エレオは、隣の床の上に、崩れるように倒れ込んだ。骨がないように。何もかも抜け落ちたように。
自分自身の奥底を、まるごと踏み抜いてしまった者の、ゆっくりとした深い呼吸だけが残った。
アビーはしばらく、そのまま動けずにいた。片手で自分の喉を押さえ、天井の梁を見つめながら、彼と同じくらい激しく震えていた。
母は呼ばなかった。
やがて、体を起こす。手の甲で顔を拭う。
彼を見る――また小さく、丸まって、まったく無害な姿に戻り、呼吸は今は穏やかで、鼻には乾きかけた血、口の端の泡ももう乾いて剥がれかけていた。
布を取ってきた。眠る彼の顔を、そっと拭う。理由も分からずただ通り過ぎた嵐に、しばらく体を借りられただけの者を看病するように、優しく。
それから壁に背中を預けて座り、膝を抱え、窓が朝の灰色に変わり始めるまで、彼の呼吸をずっと見守っていた。
こんなことは、今まで一度もなかった。
灰色の光の中、壁に背中を預けて座りながら、彼女がどうしても呑み込めずにいたのは――「起きた」ことそのものではなかった。
彼を知って過ごしてきたすべての人生、同じ家で分け合ったすべての時間、この島がくれるありふれた毎日のすべてが、今夜のことに対して何ひとつ備えを与えてくれていなかった、ということだった。
前触れもなかった。気づけるはずの兆候もなかった。
インクの力を得たとくすくす笑いながら眠りに落ちた少年が、目を覚ました時には、彼の顔をした「何か」になっていた。
その二人の少年の間には、橋なんてどこにもなかった。前もって見抜けるほど根深いものなど、何ひとつなかった。
自分が何を見たのか、彼女には分からなかった。ただ、暗闇の中でたった一人で下した決断の、平坦で恐ろしいほどの確信だけがあった――それが何であれ、それはエレオのせいではない。
だから――これは、他の誰かに渡していいものじゃない。
今はまだ。もしかしたら、この先もずっと。
誰も知らない。
すべてに気づくルーシーでさえ、この時ばかりは何にも気づかなかった。アビーが、窓が灰色になるずっと前に、声を落ち着かせ、扉をきっちり閉めておいたから。
どこかにいるクマも知らない。グーも知らない。
それは四つの壁の中と、一つの決断の中だけに留まった。
たった一晩のうちに、八歳の少女が、一人で選んだ決断――愛する少年が、自分に何ができるのかを知らずに済むように、その重さを、代わりに背負うという決断だった。
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昼近くになる頃には、彼のどこにも、それを匂わせるものはなかった。
エレオはアビーの部屋の床にあぐらをかいて座り、開いた鎧戸から差し込む陽射しを肩に受けながら、表紙にマントを羽織った人参が下手くそに描かれた、薄っぺらい粗末な冊子に完全に没頭していた。
訓練とアビー以外、人生でほとんど何にも向けたことのない、あの特有の集中力でページをめくり、数コマごとに鼻を鳴らし、時々、自分でも聞いていて恥ずかしくなるような大仰なヒーロー声で、セリフを読み上げていた。
「『恐れるな、市民たちよ』」彼は誰もいない部屋に向かって宣言した。「『この人参ヒーローがやってきたのは――』ぷっ――『やってきたのは、忌まわしきナメクジ王から収穫を守るため――』」
彼は喘ぐように笑った。
「アビー。アビー。ナメクジ王だって」
部屋の反対側で、読んでいるふりをしていた巻物を膝の上に置いたまま、アビーが顔を上げた。
襟の下では、まだ喉がかすかに痛んでいた。誰にも言わないと決めた、鈍く、個人的な痛み――後で考えよう、いや、たぶん考えないでおこう、ただこの島が古い痣を静かに抱えるように、黙って持ち歩こう、と彼女は決めていた。
第二代のリーダーの沈黙。建国の、語られない傷。理解されていても、決して説明されないもの。
この島には、話題にされないものがいくつもある。
自分も今、そのひとつに加わったのだと、彼女は思った。
「ナメクジ王はいつも出てくるでしょ」彼女は言った。「このシリーズ、もう三回目よ」
「何度も戻ってくるんだよ、アビー」
「ナメクジだもの。そういう生き物なの」
エレオはケラケラ笑ってページをめくった。六時間前、自分の手がアビーの喉を締め上げていたことなど、まったく――本当にまったく、気づいていなかった。
下手くそに描かれた野菜が、軟体動物を納屋の壁ごとぶち抜くという、その喜びだけが彼のすべてだった。
今朝の彼には、影がなかった。まったく、何ひとつ。
まるで、昨夜あのことが一度も起きなかったかのように。床に倒れていたあの少年と、今、ナメクジ王にはしゃぐこの少年が、たまたま同じ顔を共有しているだけの、まったくの別人であるかのように。
それが、一番きついところだとアビーは思った。
暗闇の中で見た赤い目そのものより――朝になったら、太陽がそれをこんなにも完全に洗い流してしまうということの方が。
その漫画は、彼女が買ってあげたものではない。
三日前、エレオが自分で買ったのだ。補給船が来るたびにスモークラインの港近くに現れる、行商人の荷車で。干し魚とロープの間に、安っぽい手書きの冊子を並べて売っている、痩せた年配の島民だった。彼はいつも、それを買っていないふりをする親たちに向けて言うのと同じ台詞を、渡す時にウィンクしながら口にする。
「子どもはみんな『人参ヒーロー』が好きなんですよ。大人は好きじゃないふりをする。でも結局買っていく」
エレオは、二冊買っていた。
「なあ」エレオが、顔も上げずに言う。「大丈夫? なんか顔してるけど」
「顔はあるわよ、当然」
「そうじゃなくて。『顔』な顔。なんか、変な感じの」
アビーの手が、無意識に襟へ動きかけて――止まった。
「あんまり眠れなかっただけ」彼女は言った。ある意味では、本当のことだった。もっとも、一番大事な部分ではないけれど。
エレオは、自分の集中力が続く限り――つまり、あまり長くない間――彼女を観察し、それから満足げに頷いた。疑う理由が特になかったからだ。
「なんか食べなよ。疲れてる時、ママの朝ごはん美味しいよ」
出っ歯ごと、完全にいつもの彼の笑顔で言う。
「人参は大抵のことを解決するから」
「全然そんなことないわよ」
「大体は解決するよ」
彼女は、あやうく笑いそうになった。思ったより小さな笑い声だったけれど、確かに出た。
そしてこの朝は――それだけで、十分だった。
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アビーが「探検に行こう」と決めた朝、彼女は何も宣言しなかった。
ただ、寝袋の足元に、荷物を詰めた鞄と結んだ髪で現れて、「起きて」と言った。すでに決定した、という響きの声だった。
エレオは起きた。
《アイアン・ファング》の厨房がまだ本格的に動き出す前に、二人は裏口から抜け出した。ルーシーが朝の人参と干し魚の配達を仕分けている間に。
だが、ルーシーは気づいていた。彼女はいつも気づく。
「暗くなる前に戻りなさい」振り返らずに、そう声をかける。
「はーい、ママ」
「行く前に何か食べて。カウンターにパンあるから」
「はーい、ママ」
「エレオ」
エレオが戸口で止まる。「なに、ルーシーさん?」
彼女はそこで振り返り、笑みとも、笑みでない何かとも判別のつかない、あの独特の表情で彼を見つめた。何かを、心のどこかに書き留めているような目だった。
「耳にインクついてるわよ」彼女は言った。「昨日の」
彼は自分の耳に触れた。あった。先端に、乾いた黒いしみ。見逃していた。
「あ」
「お互い、気をつけなさいね」
彼女はそう言うと、また人参の方へ向き直った。「それだけ」
彼は、必要以上に少しだけ長く、そこに立っていた。理由は、自分でもよく分からなかった。
やがてアビーが彼の袖を引っ張り、朝の中へと引きずり出した。
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早朝のポーク・アイランドには、名づけがたく、そして忘れがたい何かがあった。
東から差す光は低く、金色で、海の湿気にかすんでいる。
その光は――干している漁網も、窓辺で眠る猫も、開けっぱなしの門も――まるでわざと配置されたかのように照らし出していた。
空気は塩と、濡れたジャングルと、立ち上り始めた最初の炊事の煙の匂いがした。
集落は、急がずに目を覚ましていく。時間があると分かっている場所が、そうするように。
二人は港を過ぎ、南へ向かった。波にコツコツと揺れる小舟の脇を通り過ぎる。すでに漁に出ている者たちがいた。銀色の水面に浮かぶ、小さな影たち。一人が、こちらを見ずに片手を上げる。アビーも片手を上げ返した。
「知ってる人?」エレオが訊く。
「ミロ長老の息子さんよ。毎朝ここで漁をしてる」一拍おいて。「お父さんが亡くなってから。同じ場所でずっと」
「なんでそんなこと知ってるの?」
彼女は肩をすくめた。「ママが教えてくれたの。ママはいろんなこと教えてくれる」
集落は、やがて海辺の草地へ、そして潮に洗われた岩へ、そして入り江に沿って弧を描く黒い砂浜へと変わっていった。足の下は、もう温かい。
エレオは考えもせずにサンダルを脱いだ。アビーも脱いだ。
しばらく、二人は黙って歩いた。彼にしては珍しいことだった。
「アビー」やがて彼が言った。「この島って、何年前にできたの?」
「五十年」
「そんなに古くないね」
「うん、古くないわ」
「でも、なんか古い感じがする」
「それは、そこに『詰まってるもの』のせいよ」彼女は言った。「五十年分の、本物の暮らし。毎日毎日、『続けてよかった』って人が決め続けてきた五十年。それが、場所を老けさせるの」
「開拓者たちは、何を置いてきたの?」
彼女は、本当のことを言おうとする時のような選び方で言葉を選んだ。
「たくさんの、悪いこと。彼らにされたこと。それを背負ったまま、この島に来て――今度はそれが『ない』場所を作った」
彼女は足を止めた。
「たぶん、それが人間にできる一番難しいことなの。傷を、前に運ばないで、置いていくこと」
「うまくいったの?」
「大体は」彼女は言った。「うん、大体はね」
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森は木々の際から始まり、そこから先はすべてが変わった――光が、空気が、音が。
深い水と、古い木と、名前のない緑の匂いがした。
アビーは速度を落とすことなく進んでいく。エレオには、その上に立つまで見えなかった道を辿りながら。
「よくここ来てるんだ」
「小さい頃から。ママがよく連れてきてくれた。ママ、この島の道、全部知ってるの」
「ママって、ここで生まれたの?」
「ううん。私が赤ちゃんの頃に来たの」一拍。「前のこと、あんまり話さないんだ」
彼はそれを、そのまま流した。どの質問を流すべきか、少しずつ学び始めていた。
若い木々の間に、最も古い木々が姿を見せ始める――言葉では収まりきらないほど巨大で、根がジャングルの床を突き破り、地形のように盛り上がっている。
エレオは、胸の高さまである根っこをよじ登った。
「これが、古いやつね」アビーが見上げながら言う。
「動くんだよね」思わず、彼は口にしていた。「その話。誰も見てない時に動くって。おじいちゃんが言ってた。『誰も証明できてないけど、誰も信じるのをやめてない』って」
「まさにその通り」彼女は幹に手のひらを当てた。「本当だと思う。この木たちは、行きたい場所を知ってて、いつかそこに辿り着く。生きてるものは、みんなどこかに行きたがってるから」
エレオも幹に手を当てた。
樹皮は、温かかった。かすかに、ありえないほど、温かい。
彼は手を引っ込めた。
アビーは、彼を見ずに微笑んだ。
「うん」彼女は言った。「知ってる」
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《コールド・ワン》は、姿より先に音で自分の存在を告げた――なめらかな石の上を流れる冷たい水、澄んでいて、清らかな音。
エレオはしゃがみ込み、水に手を入れた。
「冷たっ」
「だから『コールド』って言うのよ」
彼は、川の流れを目で追った。「これ、聖なる森まで続いてる?」
彼女が、意外そうに彼を見た。「聖なる森のこと、知ってるの?」
「みんな知ってるよ。ただ、行ったことなかっただけ」
「行きたい?」
「うん」彼は言った。「行きたいと思う」
彼女は立ち上がり、川上へ向かった。
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木々が曲がり角ごとに、より古く、より大きくなっていく岸辺を、二人は歩いた。
光は緑を増し、世界は川と足音と、時折頭上を横切る鳥だけに狭まっていく。
アビーは、露出した根の塊が絡み合う場所で立ち止まった。
「ここ。ここで川から離れるの」
前方のジャングルは、通り抜けられないように見えた。まるで壁だ。
「ほんとに?」
「うん」
「これ、壁だよ」
「その中に、歩いて入ってみて」
彼は彼女を見た。彼女も見返す――「冗談じゃない」という時の目だ。
彼は、壁の中へ歩いていった。
隙間は、そこにあった。目の前に立つまで見えなかったそれ。曲がり、また曲がり――開けた。
森は、彼が三歩も進まないうちに彼の足を止めた。
大きな木々の島にあってさえ、彼が今まで見た中で最も巨大な木々。その樹冠はあまりに密で、自分自身の光を作り出していた――緑で、静かで、上空の空とは切り離された何か。
床に広がる根は、何世紀もかけて絡み合い、足元は柔らかく、わずかに――呼吸をしているかのように――動いていた。
木々の際を越えた瞬間、音が消えた。無音になったわけではない。もっと違う種類の静けさ――この場所が「聞いている」ことを示すような静けさだった。
「初めての時は、いつもこうなの」アビーが静かに言った。
中央には、何十年もの使用でなめらかになった平らな石があった。その上には――乾かした豚肉、一握りの黒い人参、彼が見たことのない淡い色の花。最近捧げられたばかりのものだ。
「ザルカーン」エレオが言った。
「うん」
彼はその石の近くに立ち、触れはしなかった。肋骨の下の温もり――Sオーブ――を感じる。それが、この場所に反応しているような、奇妙な感覚があった。まるでコンパスが北に反応するように。
「ママは私が六歳の時、ここに連れてきてくれたの」アビーが樹冠を見上げながら言った。「『この島で一番正直な場所』だって言ってた。『何かのふりをする必要がない場所は、正直なの』って」
小さく笑う。
「六歳の私は、変な匂いがすると思っただけだった。今は、ママの言いたかったこと、分かる気がする」
「ザルカーンは、あなたが従順だったかどうかなんて気にしない」彼女は続けた。「気にするのは、あなたが『自分らしくあったか』どうか。自分を小さくしないこと。他の誰にも、自分を小さくさせないこと」
彼女はエレオを見た。
「開拓者たちがここに来たのは、誰かに『お前らは劣っている』って言われたから。ザルカーンは、それは間違いだって言う。すべての生き物は尊い、って。それを信じるのは、決して小さなことじゃない――自分より力を持つ誰かが、正反対のことを言っている時にはね」
エレオは、長い間、黙っていた。森は、それを難なく受け止めていた。
彼は――望んでもいないのに――赤い目のことと、自分のものではない手が、大切な何かに巻きついていく感覚を思い出していた。なぜ今それが浮かんできたのか、自分でも分からなかった。
彼はそれを、押しやった。ここで口に出すべきではない類のものだと感じたから。テーブルで誰も第二代リーダーの名前を口にしないのと同じように。
いくつかの真実は、自分から静かになっていく。根深く、語られないままに。
「アビーのママは、それを信じてるの?」彼は尋ねた。
「悪い場所から来たの。詳しいことは知らない。ママ、話してくれないから」一拍。「ママは、人のために朝ごはん作る。あなたのお気に入りの釣り場も覚えてる」また一拍。「信じてると思う。たぶん――この島が、ママにそれを信じさせてくれたんだと思う」
彼は振り返り、彼女を見た――まだ上を見ている。動く緑の光を、誰も注意深く見ていない時に古い木々がすることを。
その表情には、まだ言葉がついていなかった。悲しくもない。嬉しくもない。そのどちらよりも、真実に近い何か。
「なあ、アビー」
「ん」
「なんで魔法の勉強してるの?」
「急に何よ、それ」
「そんなに急でもないよ」
彼女は、本当の答えを渡してもいいと決めた。
「ママは戦えないの。習ったことない。別のところで強い人だけど、そっちじゃない」一拍。「そして、世界はこういう世界でしょ。何かがママに手を出そうとした時、その前に立てる誰かになりたいの」
自分の両手を見つめる。
「ママは、遠くから、良いものを築くためにここまで来たの。私を通して、何にも届いてほしくない」
彼女は言わなかった――もう一つの理由を。最近、夜によっては、自分が前に立ちたいと思う相手が、赤の他人ではないこともある、ということを。
「わかった」エレオが言った。
「それだけ?」
「うん。分かる。理にかなってる」
彼女は、短く、心からの笑い声を上げた。
「時々、あんたって、変な意味で鬱陶しくないわね」
「僕、最高だからね」
「調子に乗らないで」
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二人がジャングルから出てきたのは午後遅くだった。本物の場所で一日を過ごした者らしく、汚れていた――草の染み、川の泥、エレオの耳の先には、本人も気づかない葉っぱが一枚くっついている。
急がずに、二人は戻った。
《アイアン・ファング》の裏口では、窓越しにルーシーが働いている姿が見えた。アビーは中に入る前に、しばらくその姿を見つめていた。
「ただいま」
ルーシーはまずアビーを見た――生きているか、怪我はないか、無事か、それでいいか――親特有の、素早い一瞥。それから、エレオを見た。
「まだ耳にインクついてるわよ」
彼は触れた。まだあった。
「座りなさい、二人とも。何か作るから」
二人は座った。厨房は、夕食が出来上がっていく匂いがした――豚肉、根菜、オーブンの中で何か甘いもの。外では、最後の光が、闇が来る前の一瞬だけ、最も古い木々を金色に染めていた。
エレオは、手のひらの下にあった温かい樹皮のことを考えた。石の上の供物のことを。悪い場所から来て、扉を開けて入ってくる人たちのために朝ごはんを作る女性のことを。
何もないところから良いものを築き、命がけでそれを守るということを。
聖なる森で、自分の両手を見つめていたアビーのことを。
ルーシーが、彼の前に器を置いた。
「ありがとう、ルーシーさん」
彼女は、今朝と同じ「心に書き留める」表情を彼に向けた。
「どういたしまして、エレオ」
その言葉には、言葉そのもの以上の何かが込められていた。彼女はそれを説明しなかったし、彼も尋ねなかった。
この島には、説明のいらないことがいくつもある。
それはただ――そういうものとして、そこにあった。
外では、最も古い木々が闇の中に立っていた。
辛抱強く。
行きたい場所へ向かって。
まだそこに、立っていた。




