古代遺跡キーラ③
ーーシロナsideーー
私は白井 聖蘭、高校二年生。
ある日、学校帰りのコンビニで雑誌を立ち読みしていたら、衝撃的な記事を見つけてしまった。
私が好きなアーティストの新曲が来週TV生放送⁉︎しかも限定グッズの応募まであるの⁉︎
あぁー!1週間も待てない!帰ってすぐに録画予約しなきゃ!
テンション上がって訳もなく走って帰る私は、きっと周りからみたら変人なんだろうな。
でも気にしない。私はこのアーティストのファンクラブ歴5年!今更こんなの一々気にしないわ。
でも、今振り返ると、周りをもっと気にしておけば良かったなぁと思う。
そうすれば、脇見運転していたトラックに轢かれる事も無かったのに。1週間待つどころか、一生見れなくなるなんて…
……あれ?
私、生きてる?トラックに轢かれて死んだはずじゃ?
って待って、真っ暗なんだけど⁉︎
しかも壁⁉︎なんか丸い壁に囲まれてる!
も、もしかして…
実は生きてた私を誘拐して臓器売買するとか…?
今はその輸送途中で何かに入れられてる?
い、いやぁぁ!
そんなの絶対嫌よ!
せめて一思いに殺して!
〈条件を達成したことによりスキル【ステータス閲覧】を獲得しました〉
え⁉︎今度は何⁉︎
突然頭の中に無機質というか、無感情そうな女の人の声が…
スキル?ステータス閲覧?なんかクラスの男子達がそういう言葉使ってたような…ということはゲームやアニメ関係の言葉ってこと?
私そういうの殆どやったこと無いんだよなぁ。
ゲームなんてマ◯オパーティとか、どうぶつ◯森くらいしかやらないし。
ど、どう使うんだろう?
ステータス閲覧って頭で念じれば良いのかな?
わっ⁉︎なんか頭に文字が⁉︎
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名前:ーーー
種族:天上より舞い降りし竜
レベル:1
体力:506/506
攻撃:300[200×1.5]
防御:278[185×1.5]
速度:285[190×1.5]
ランク:E
『パッシブスキル』
【ホーリーヴェール】【自動浄化】
『補助スキル』
【鑑定上級】【気配遮断】【ステータス閲覧】
『攻撃スキル』
【ホーリーアロー】【聖竜のブレス】【ヘブンズゲート】
『回復スキル』
【浄化】【キュア】【ヒール】
『特殊スキル』
【竜の鱗】【竜王の加護】
【光転写】【再現操作】
[称号]
『天上へ誘うもの』『竜王の子』
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え?え?なにこれ?
これ、私の情報?
いやいや、待ってよ。色々おかしいでしょ。
種族のこれ何?ヘブンズドラゴン?厨二病の男子が付けそうな名前ね。
じゃなくて!え、私…人間じゃ無いの?
やっぱりあの時轢かれて死んじゃったの?
暗くてよく見えないけど、確かに手が人間のとは違うような…
〈条件を達成したことによりスキル【暗視】を獲得しました〉
うわ⁉︎また来た!
あ、ちょっと見え易くなってる。私の手、白くて小さくて鋭い爪があって、人間のじゃ、無い…
私、まだ高校二年だよ?
これからだったじゃん。大学行って友達と遊んだり旅行に行ったり、素敵な出会いして恋して、ちゃんと就職して良い人見つけて結婚して、平凡な家庭でも幸せな人生を送るんだって…
そう、思ってたのに…
こんな、こんな白いドラゴンなんて…
ゲームもアニメも知識の無い私が、こんな状況受け入れられるわけないじゃない!
「お!見ろよ最深部だぞ!」
!?
だ、誰か来た⁉︎
そういえば、ここって何処なんだろ?外が見えないから全く分からないや。
「ってあれ?ここにあるのこの卵だけか?」
「なんだよ…お宝期待してたのによぉ」
「まぁまぁ、もしかしたらすげー貴重な卵かもしれないだろ?」
い、いや…待って!
外の状況も分からないのに連れて行かれるのは怖い!
私が言葉分かるって事は、日本語喋ってるのよね?
日本にこんなドラゴンが居るなんて信じられないけど、今度こそ誘拐される!
壁をドンドンと叩いてもビクともしないし、声を出そうにも何も出ない。
〈相応しい主人では無いので孵化できません〉
「あ?なんだよこれ持ち上がらねぇじゃねぇか!」
「ぶっ叩いて壊してみようぜ」
なんか変な声また聞こえたけどそれどころじゃない!
中に私がいるのよ!ねぇ待って!
〈相応しい主人では無いので孵化できません〉
「かってぇな!罅一つ入らねぇ!」
「んだよ唯の飾りかよ。期待して入った遺跡なのにガッカリだわ」
「正直一番当たりだったの7階層のアイアンゴーレムじゃんか」
か、帰ってく?助かったの?
取り敢えず、『相応しい主人』って人が現れない限り私は安全みたいね。
少しだけ安心したし、もう少し落ち着いて現状を整理しよう。
正直認めたくないけど、私はドラゴンになった。
日本の何処か分からない場所、遺跡とか言ってたわね。その遺跡の最深部に私は置かれてる。
相応しい主人が来ないと、私は孵化することが出来ない。
時々聞こえる謎の声が重要な事を教えてくれそう。
…あんまり進展らしい進展無いわね。
何も出来ないし、さっき見たステータスとやらをもう一度見ようっと。
この【鑑定上級】ってなんなんだろう?お宝鑑◯団みたいに価値を教えてくれるのかな?
試しに使おうとすると、『鑑定する物を見るか言葉を思い浮かべる』ように指示された気がして、取り敢えず【ホーリーアロー】と念じる。
『【ホーリーアロー】:聖属性の魔力矢を放つ。アンデッド・不死属性に威力増大』
魔力矢?なにそれ?日本にそんなものあるはず無いんだけど
それにアンデッドと不死ってなに?
駄目だ。ゲームとかの知識が無さすぎて鑑定しても理解出来ない。
実際に使ってみれば良いのかな…でも卵の殻の中で使えるの?
この『攻撃スキル』系は私に当たったら怖いしやめよう。『回復スキル』なら問題無いかな。
手を自分に向けて【ヒール】を使ってみると、薄い黄緑色の優しい光が私を包んだ。
あ、これ暖かくて落ち着くかも。
映画の魔法みたいな事が出来てちょっと嬉しくなったけど、日本じゃない事がほぼ確定して悲しくもなった。
それから私は殻の中で色んなスキルを覚えていった。
条件がよく分からないけど、たまにくる人が触ったり叩いたりしてるみたいで、その時によくスキルを手に入れる。
でも、毎日毎日起きてるのに殻から出られないし、話し声は聞こえるのに私は喋れないし、結構精神的にキツいかも…
〈条件を達成したことにより称号『ひとりぼっち』を獲得しました〉
ちょ⁉︎酷い!そんな称号いらない!
絶対この謎の声私の事バカにしてるでしょ!
一人で謎の声とそんなやりとりを続けて、どれくらい経ったんだろう。
何日?何ヶ月?いや、もしかして何年?
いい加減暗闇の中から出たい。誰かと話したい。
いつだか覚えた【吸生】のスキルで、卵に触れた人から少しずつ体力を回復させてもらえてたけど
それも段々触れても無駄って思われたのか、近くにきて少し喋ってすぐに帰っちゃうし。
レベルもいつの間にか上がってスキルも増えたけど、体力が半分近くまで減っちゃった。
【ヒール】系のスキル使えば体力は回復する。でもその分疲労というか、倦怠感が来るからあまり頻繁に使うと結局動かなくなるし…
私、このまま生まれる事も出来ずに殻の中で死ぬのかな?
折角、死んだと思ったら生き返れたのに…
あ、また新しい人だ。でもどうせすぐに行っちゃうんだろうな。
初めて来た人だったのか、ペタペタと触ったりしてるみたい。
「これが例の卵だろうが、やはり何も起きんな」
「他の人達では壊す事も持ち帰る事も出来なかったそうですが、ご主人様は持ち上がりますか?」
「やってみよう……むぅ、駄目だな。何かで固定されてるのかと思う程に全く動かん」
〈相応しい主人ですが、条件を満たしていない為孵化できません〉
…え?えぇ⁉︎相応しい主人⁉︎
今外にいるの⁉︎会いたい!出して!孵化させて!
でも触っても持ち上げても孵化しないって、何か足りないのかな?
諦めないで!頑張って私の主人!
「あの、一種の賭けになるかと思いますが、【捕食】はどうなのでしょうか」
ほ、捕食⁉︎
待ってなんかそれ嫌な予感がする!
他の人からは聞いたことないスキルだし、そのまま捕食されたら死んじゃうの⁉︎
〈条件達成。深淵の影を感知したことにより孵化します〉
き、きたぁぁ!
やっと出られるよ!
ありがとうご主人様!ありがとう付き人さん!
出たら沢山お話しようね!ずーっとひとりぼっちで寂しかったんだよ!
自力で殻を破いて外にでた私は、今なら声が出そうだと叫んだんだけど…
「ピィー!ピッピィー!ピッ!?ピピピィッピ」
ちょっと!折角お話し出来るかと思ったのにこんなのって無いよ!
私は皆の言葉分かるのに、なんで私は喋れないの⁉︎
私を出してくれた人達を見る。
目の前にいる二人は私について話してるみたいだけど、最後の一人が私を見ながら離れちゃった。
「ご、ご主人様…ネル…離れて…早くソレから離れて下さい!」
え、なんで⁉︎折角会えたのに!
「は、早く…ご主人様、ネル…そ、ソレはご主人様とは違う!魔物がこんな力を持っていたら危険すぎます!」
わ、私のステータスってそんなに高いの⁉︎大丈夫だよ!絶対に攻撃なんてしないから!
ずっとひとりぼっちだったから話がしたいだけなの!お願い怖がらないで!
あ、あぁ…ご主人様って呼ばれてた人まで離れていっちゃう。
嫌、嫌だよ…私を置いて行かないで!
「ピッ!?ピッピィ!ピィピィピピィ!」
あ!ご主人様らしい人が戻ってきてくれた!
ありがとう!怖がらないでくれて!
この人がご主人様って呼ばれてるなら、私を孵化させてくれた人だよね?
す、凄く美人な人…こんな人初めて見た…
モデルさんかな?いや、ここにモデルなんて職業があるか分からないか。
「お前、私の言葉が分かるか?」
「ピピィ!ピピピピィ!」
でも私は話せないの…
これがどうにかなれば凄く楽なのに。
「お前は、私達と敵対し戦うつもりか?」
「ピィ⁉︎ピピィ!ピピピィピピ!」
こんな長い間1人で寂しかったのに、そこから助けてくれた人に敵対なんてするわけない!
「お前、これからどうしたい?いつからここにいるか知らんが、自由になれたのなら好きに出て行けるぞ」
「ピィー…ピピィ、ピピピピィ。ピィーピピィピピピピィ」
折角一生懸命伝えても、この人には上手く伝わらない。
だから私は振り払られるのを覚悟でご主人の肩に乗ることにした。
初めて翼を動かすから上手く飛べなかったけど、ご主人は様子を見て待っててくれたし、私の気持ちも通じるかな…
「一緒に来たいのか?」
「ピィ!」
やった!漸く通じた!
それからご主人があの二人について教えてくれて、怖がらせないでってお願いしてきた。
もちろんだよ!怖がってはいても攻撃はしてこなかったし、お互いに敵意は無いってことだもんね。
ご主人の肩に乗って二人の所へ連れて行ってもらう。
ご主人の肩から降りて、挨拶しないと。
「ピピィ!ピィピッピピピィ!」
つ、通じたかな?
まだ猫耳の女の人の目が怖いけど、ご主人が説得したら許してくれたみたい。
まだ警戒が解けたわけじゃないだろうから、これから信頼されるように頑張らないと!
私が意気込んでいる間に、私の名前を決める流れになってたみたいだけど…
ピィは安直過ぎるし、キーラってのがここの名前ならそれもちょっとなぁ…
「白いドラゴン…『シロナ』はどうだ?」
「ピッ、ピピピィ!」
こうして私の名前は、無事にシロナとなった。
ご主人は凄く美人で、私に優しくしてくれて、名前までくれて、この人が私のご主人で良かったぁ。
この後は遺跡を出るみたいだから、またご主人の肩に乗せてもらう。
正直、慣れない翼で飛んだり、地面を歩いてると遅くて足手纏いになりそうだから。
でもこの状態、何故か付き人さんの二人から凄い見られて落ち着かないなぁ…
まだまだ警戒は解けないから、少しの辛抱なのかな。
階段を上がった先には何も居なくて、ご主人はそのまま反対側の梯子を登っていった。
今度はマンホールみたいな蓋を開けて出ると、木や川が流れる綺麗な自然の中に出た。
早いね、もう外なんだ?
他の人達の会話だともっと長そうだったけど、この森が広かったのかな?
そう思ってたけど、ご主人達が上に続く道を探してるのを見て察した。
もしかしてここ、人工的に作られた自然?だとしたらどれだけデカいの…
東京ドーム何個分かも分からない。こんなのが遺跡の部屋の一つだってこと?ここを作った人達は凄い技術かスキルを持ってたんだね。




