↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付いたら???になっていた〜全てを飲み込む影〜  作者: 小鳥遊 蓮
第二章『ネクノロギア王国』
21/33

ローズの非常事態②

 

 ーーソフィアsideーー


 僅か30分程で素材が集まり、薬師の方が最優先で薬を調合して下さいました。


「ではヴァイト君、あとは頼んだよ」

「任せてくれ、ローズは必ず助ける」


 ヴァイトさんを先頭に魔の森まで来ましたが、何かを探すように見渡しています。


「シャドウ!いないのか⁉︎」


 この森に知り合いでもいるのでしょうか。

 しかし返事は無く森は静かなまま。


「本体のローズが万全じゃ無くなったから、【分裂】が途切れたのか。シャドウがいればローズの所まで一瞬だったんだが」


 どうやら昨日見せた【分裂】の一体を、常時この森に配置していたようです。

 この森の魔物が減少しているのもそれが原因でしょうか。


「仕方ない、元々の予定通り走るぞ。リリちゃん、俺の背中に」

「え⁉︎で、でも私重いですよ…」

「心配すんな。ローズ程強くは無くても、俺だって鍛えてるからな」


 リリさんを背負ったヴァイトさんが、それでも全くスピードを落とすことなく走り続けます。

 私は夜の洞窟では視界が悪い為【ライト】のスキルで辺りを照らす役割を。

 しかし行きの洞窟では居なかったはずのポイズンセンチピードが、中間の広間で待ち構えていました。


 リリさんを背負ったままのヴァイトさんでは荷が重いでしょう。

 ここは騎士団とネルを中心に対処しなくては。


「邪魔なんだよ…ローズが待ってんだ!そこをどけぇぇ!」


 ヴァイトさんが剣身まで真っ黒な剣を抜き、いつの間にかポイズンセンチピードの後ろにいました。

 ポイズンセンチピードは頭から縦に真っ二つになり絶命しています。


 これは、【神速】と【一刀両断】⁉︎

【ステータス看破】をする余裕が無かったですが、Aランク上位レベルの実力者なのでは…⁉︎


「ごめんリリちゃん、大丈夫だった?」

「は、はい…何とか」


 その後は問題無く洞窟を抜け、再び王都へ戻ってきました。

 時刻は恐らく夜の9時頃。

 何とか間に合いましたね…


 騎士団の方々にお礼を言い、宿へと急ぎます。

 私達が宿へ入ると、宿の主人である女性が不安そうな顔で駆け付けてきました。


「あ、あの子が!あの子が突然消えちまった!」


 そんな、まさか…

 あんな高熱で何処に行けるというのですか!

 ヴァイトさんとリリさんに続き部屋へと駆け込みますが、ご主人様が寝ていたはずのベッドには誰も居ませんでした。


「そ、そんな…ご主人様はどこに」

「ヴァイトさん、ベッドの横に不自然な影が…」


 リリさんの言葉通り、ご主人様のベッドの横には何も無いにも関わらず、丸い円状の影が存在していました。


「…もしかして、ローズなのか?」

『……ヴァ…イト』

「やっぱりローズなのか!どうしたんだお前⁉︎人の形が保てなくなったのか⁉︎」

『……あ…つい…』

「待ってろ、今薬を!…でも、どうやって飲ませりゃ良いんだ」

『…わた…しの上に…』


 ヴァイトさんが薬の入った袋ごと影の上に置くと、ゆっくりと袋が沈んでいき飲み込まれました。


「ヴァイトさん、この影がローズさんなんですか?」

「あぁ、多分な…前に自分のこと『影』とか言ってたから、これがローズの本体なんだろう」

「…そうなんだ…ローズさん、本当はそんな姿してたんだね」


 リリさんが優しく影を撫でると、影から細い棒のような影が一本小さく伸びて、リリさんの手に触れました。


「ふふ、ローズさんかわいい」



「あ、貴方達は…怖くはないのですか?」


 お二人が私を振り返ります。

 特にヴァイトさんの視線が鋭くて少し怖いです。


「ご、ご主人様は人間ではないのですよね…そこに、恐怖は全くないのですか?」


 リリさんが私を真っ直ぐ見つめて、優しく微笑んでくれました。


「私、前に薬の材料を探しに魔の森に一人で入ったんですけど、フォレストウルフ3体に囲まれて正直死を覚悟しました。そんな時、ハウンドウルフが何故か助けてくれて不思議だったんです。でも、後々それがローズさんだって分かったんです」


 は、ハウンドウルフ…

 ご主人様は、影ではなく魔物の姿だったのですか?


「ローズさんは私に正体を明かす時、凄く怯えてました。怖がられるんじゃないかって…その時思ったんです。この人は、人間が大好きなんだ。だからどんな姿でも、私を助けてくれたんだって」


 …確かに、ご主人様の他の人を見る目は優しく微笑ましいものでした。

 元が人間でないからこそ、人間を羨望していた?


「俺は【敵性看破】のスキルがあるから、最初からローズに危険がない事は分かっていたからな。それに、職業柄悪人を何人も始末してきた…魔物だって良い種族はいるし、人間だって悪い奴はいる」


 し、始末…処刑人などでしょうか。

 確かに魔物の中には人間に友好的な種もいて、ペットなどに人気の魔物もいますが。


「ローズをご主人様と呼ぶってことは、人身売買の類で売られていたんじゃないのか?」

「…っ…そ、そうです」

「じゃあ分かってるはずだ。そんな目に合わせたのは誰だ。同じ人間じゃ無いのか」

「っ⁉︎」


 その通りでした…

 私達を売ったのも、商品だからと人間扱いせず苦しめたのも、全て同じ人間だったじゃないですか。

 それに比べて、ご主人様は私達に人間らしい生活を与えて下さった。

 どちらが善でどちらが悪かなど、考えずとも分かったはずなのに。


「そういうわけだ。俺達はローズの種族とか関係なく、ローズという人柄が好きなんだよ」

「…色々と失礼な事を、申し訳ありませんでした」

「それは俺達じゃなくて、ローズに言ってやってくれ」


 再びご主人様の方へ向いたお二人。

 微笑みながら影を撫でるリリさんと、ジッと観察するヴァイトさん。

 おそらくご主人様の容態が落ち着くまで、見守るつもりなのでしょう。


 私は何だかここにいてはいけない気がして、ネルを連れて外へと出てしまいました。

 ご主人様に買って頂いたサンドイッチを食べていた、昨日と同じベンチに座ります。


「…お嬢様」

「私達は、間違っていたのかもしれません。ご主人様のステータスばかりに怯え、ご主人様自身の内面を全く理解しようとしていませんでした」

「…どうなさるのですか」

「……恩を、返しましょう。ご主人様にしていただいた恩を返し、先の事はその時にまた考えます」

「お嬢様の仰せのままに」

「ネル、これからはお嬢様はやめましょう。私達は今、同じ人を主人に持つ同じ立場の仲間です」

「…では、せめてソフィア様と」

「ご主人様が怒らなければそれで良いでしょう」


 ネルと少し落ち着くまで外で時間を過ごし、宿へと戻ります。


 ご主人様が影の姿から、見慣れた美しい女性の姿に戻ってベッドに寝ていました。

 ですが、まだ不完全なのかその姿は薄っすらと透けています。


「少し気になったのですが、ご主人様のそのお姿はご自身のものなのですか?」

「俺もローズに聞いただけだが、谷底の人骨を捕食してから人間を捕食したら、この姿になったみたいだな。ああ勘違いするなよ?その人間は俺が始末しようとしていた悪人だからな」

「そ、そうですか…では、ご主人様自身もそのお姿の訳はご存知無いのですね」

「そうみたいだな。だからこそ、こうして旅をして自分の事を知りたいと言っていた」


 ですから、自分の事を知る手掛かりになりそうな私を買って下さったと。

 谷底とは恐らく魔の森の近くにあったあの渓谷でしょう。

 確かに王国や帝国の大きな街へ行けば、そこで亡くなった方について何か資料がありそうですね。


「この状態まで回復すれば、朝には完治してるだろう。リリちゃんは、このままローズの傍にいるか?」

「うん、また何か異変があったら大変だから、ローズさんと寝る」

「分かった。俺は二人分の宿代を払って別の部屋を取るよ。何かあったら教えてくれ」

「ありがとうヴァイトさん。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 ヴァイトさんが部屋を出て行き、リリさんがご主人様のベッドに潜ろうとしています。

 私達もそれぞれのベッドへ入り、部屋の灯りを消して寝る準備を…


「あの…おやすみなさい、リリさん」

「……おやすみなさい…」

「あ、はい。おやすみなさい」


 明日、ご主人様にちゃんと謝りましょう。

 ですからご主人様、どうか元気になって下さい。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。