特に憧れてはいなかったキャンパスライフ
大学受験から解放された僕は、ひたすら遊んでいた。
遊びたいだけ遊んで、眠くなったら寝て、目が覚めたらまた遊びまくる。そんな生活を続けていたから、一時的に精神的苦痛は和らいでいただろう。
大学の入学式はWBC(野球の世界一決定戦)の日米戦の日で、僕は「なんでこんな日にやるんだ!」とわけのわからない怒りをぶつけていた。ワンセグで中継を見ながら歩いていて、階段から落ちた。みっともない……
授業は面白そうなものから興味のもてなそうなもの、大学ならではの独特なものまで、数え切れないほどあった。必修と選択、講義時間の兼ね合い、単位数などの要素もあり、シラバスとにらめっこして時間割を決めるのにずいぶんと悩んだ。授業に関する情報も色々出回っていた。
第二外国語はフランス語を選択した。クラス分けは、この第二外国語の選択によって決められた。
K大の文学部は女子が多く、うちのクラスも6、7割が女子だったと思う。モデルみたいな子もちらほらいた。
やっぱり何か悩んでいそうな子、25歳で入学した人、超真面目そうな子、女子高出身のお嬢様、内部進学でまったく勉強してないやつ。規模も大きいし、中高よりもはるかに様々な人間が集まっていた。
考えてみれば、小学校以来の共学だ。まあ、僕には関係なかったが。
授業が一緒だったりでクラス内外にちょいちょい話す友達はできたが、やはり中高の友人と比べると結びつきは弱く、4年間の大学生活を通じて深く関わるような友人はできなかった。
大学の授業ではよく寝ていて、起きているときはポケモンをしたり『るろうに剣心』を読んだり、そんなことばかりしていた。
漫画雑誌を読む習慣がなかったので、僕にはメジャーな漫画をほとんど読んでいないという『マンガコンプレックス』もあったのだが、こちらは学生時代にそれなりに解消された。
漫画は自分のペースで読みやすいし、ゲームと違って時間もかかりすぎないのがいい。
中高の知り合いと2人で漫画研究会にも入った。よくサークルなんかに入る気になったものだが、何かが変わるかもしれないと思ったのだろうか。
結果、サークル活動で何かが変わることはなかった。部会のときだけ部室に行って、適当に漫画を読んで。何もしていないのだから当然だ。
サークルのみんなで夕飯を食べに行ったときもさっさと帰りてえなーとか思ってたし、部誌になんか書くのも(書いたり描いたりしなくてもいいという話だったので入ったのだが)めんどくさかったし、一回だけ行った旅行もそこまで楽しくはなかった。
文学部は2年でキャンパスが変わるのだが、そのタイミングでサークルには顔を出さなくなった。
やっぱり、僕は僕だった。
いくつか面白い漫画に出会えたのはよかった。あとは、「先輩」という存在におよそ関わったことがなかったので、少しでも年上の人と一緒に何かするというのは新鮮な体験だった。
当時僕は18歳になりたて。20代の先輩たちはずいぶん大人に見えた。でも、今考えるとせいぜい二十歳そこそこだったんだよな。なんか不思議な気分だ。
カラオケに行ったとき、廊下で何やら真剣そうに話している先輩たちを見て、
難しい話をしてるんだろうなと思ったが、あれもきっとよくある話だったんだろうな。恋愛話でもしていたのだろうか。
一人何年大学にいるんだかわからない(退学ギリギリの8年?)年齢不詳の先輩がいて、こういう人もいるんだなと興味をそそられた。
結局、近畿地方の超名門校出身で音ゲーが好きということ以外僕の中では謎の存在のままだったが、あの人はどういう経歴の持ち主で、今何をしているのだろう。みんなあだ名で呼ぶので、本名すらわからなかった。ちゃんと卒業できたかなあ。
サークルといえば、当時ストレスと怠惰な生活のせいか人生で最高に太っていたので、昼休みに屋外の敷地で昼ご飯を食べているとき、「君ガタイいいね。何かスポーツやってるの?」と体育会かなんかの勧誘を受けたことがあった。
「もうサークルに入っているので……」と言うと「何サークル?」ときかれたので、「漫研です」答えた。「漫研……?」とつぶやく上級生の困惑した表情が忘れられない。
「ただのデブだったか……」とがっかりしたに違いない。
さっき2年からキャンパスが変わると書いたが、高校卒業から大学入学までの間に、僕たち家族は引っ越していた。
引っ越すことは、僕がぶっ倒れているうちに、いつの間にか決まっていた。僕の部屋の大部分は父が片付けたが、とんでもなく大変だったと言っていた。
新しい家は前の家よりさらにグレードアップしていて、立地も最高できれいなすごくいい家だった。
それを考慮して引っ越したわけではないが、2年から通うキャンパスにも、自転車で通える距離だった。
そんな恵まれた環境で送った大学生活だったが、僕の大学生活は、よくある「憧れのキャンパスライフ」みたいなイメージとはやっぱりかけ離れたものだった。




