第7章 第5節
「――手間をかけたね、ユキナ」
朔夜会の用意した隠れ家から、太助はユキナに連絡していた。
『ううん。それより太助先生の役に立てたかな?』
「そう言うのを表面に出すのは感心しないな」
『あっ……』
「言ったよね? 頼る事と依存する事は違うって」
『……ごめんなさい』
「とはいえ、役に立ったのは確かだからね――次は大丈夫だろ?」
『……うん』
『……茶番だな』
通信画像に表示されたユキナの後ろで、九十九が毒気づいた。
「別にいいだろ? 僕は君じゃないんだ」
『……いつまであんなゴミ以下に手を貸すつもりだ?』
「良いじゃない別に。そのゴミ以下に対応できない程、生徒会には力がない証明になったんだ。僕達は僕達の目的を果たす事に専念すれば良いだけだろ」
『手緩い! ――自分に剛が居て、お前の技術もあるんだ。一気に叩き潰せばいい物を!』
舌打ちをして、九十九は踵を返し画面から外れて行く。
苦笑する太助を余所に、ユキナは顔をしかめ、その横から剛が顔を出す。
『でもまあ、九十九の言いたい事もわからんでもねえな』
「そうかい?」
『幾ら生徒会の腐敗を表面に出すためとはいえ、あんな小物どもに頼る何ざ――』
「小物だから良いんだよ――君等が出張ったら、生徒会役員や学生の程度の低さが浮き彫りにならないから」
『……どういう事だ?』
「僕が朔夜会にあげた技術なんて、所詮は数頼み――バカ力の類さ。保安部や生徒会SPに通用する様なレベルじゃないよ」
『……成程な』
理解したように頷いた剛の横で、ユキナが話に就いて行けず、首を傾げる。
「成功は生まれる物じゃなく、生み出すもの――そう言う事だよ」
『――?』
「しっかりと考えて、ユキナなりの答えを聞かせてね――次会う時までの宿題」
『うん、わかった』
『お前結構良い親か先生になれるな』
「――人がなれるのは自分だけだよ」
そう言って太助は通信を切って、学園都市の掲示板サイトを開く。
「……そうそう、そうやって足を引っ張ってな――自分たちの首を絞める為にね」




