カスタムしましょう
「たぶん、イメージの問題だと思う。前から、体が良く動くとは思ってたんだ。剣なんか振ったコトなかったのに、スゴく戦えたりさ」
マサヒコは言った。
「マンガとかアニメとかゲームとか、そんなののイメージがさ。スゴく反映されるというか」
フタリがいるのは【カスタムルーム】の仮想空間。
目の前には甲冑や鎧を着たマネキンや、装備品の並んだ棚がある。
「あっ、でも分かるカモ。ウチも矢を飛ばすとき、子供の頃見たアニメのイメージだし」
たぶん、あのシリーズだろうな、とマサヒコは某女児アニメを思い浮かべた。
「たぶん、魔力が関係しているんだと思うけどね」
「そっかあ。ウチもゲームとかいっぱいヤっときゃ良かったかも」
「アリスはいつもナニしてたの? 休みとか?」
「んー、友達と遊び行ったり? 彼氏いるときは彼氏んち行ったり? あんま家にいたくないからさ」
ものスゴく陽キャっぽい答えが返ってきた。
「あと、ティッ〇トッ〇とかユーチュー〇見たり?」
マサヒコは元より、アリスも魔装をイジっている。魔装は3つまで登録できるので、せっかくなので残り2枠を作ろうというのである。
冒険者ランクが上がっているので選択可能な魔装も増えていた。特にマサヒコのお目当てだった銃がある。
説明書きを読むと銃の特性は威力特化。発砲すると周囲の魔物を引き寄せるという特殊効果もある。轟音のせいだろう。
マサヒコはリボルバーを選んだ。真ん中のシリンダーに弾をコメるヤツ。ロシアンルーレットができるヤツだ。それを銀色にカラーリングする。
軽魔装用のサブウェポンにするつもりである。
今回はマサヒコの方が早く終わった。なにしろ、ほかに特に変更する必要がなかったのだ。
「じゃあ、俺、先に出てるから。たぶん、【トレーニングルーム】にいると思う」
「ウン」
「あっ、そーだ。【ステータスポイント】だけど。アリスは【敏捷性】を大めに振ったらイイと思う。【敏捷性】を大めにして、アトは平均くらいに」
「アーイ」
カスタム作業台でナニヤラ作業しながら、アリスがうなずく。
マサヒコは【カスタムルーム】のドアから出た。
ステータスが表示される。
相変わらず【ステータスポイント】がエゲツない。
マサヒコは【ステータスポイント】はほとんど手をつけなかった。なにしろ【レベル】40である。ほかのステータスが多すぎて、今のところ必要性を感じないのだ。
【カスタムルーム】を出て【トレーニングルーム】へ。
そこで対戦魔物をオーガー(Bランク)に設定。場所は以前レミネスの講義で体験したコロシアム。
トレーニングの仮想空間に入ると、相変わらず広々としたコロシアムに立っていた。
スリ鉢状の無人の観客席。固められた土の地面。
そして目の前には5メートルくらいはあろう筋骨隆々の巨人が立っている。青銅色のテラテラ光る肌。真っ赤に光る両目に、耳まで避けた口。縮れた黒い頭髪。
うわっ、怖えー。
自分で指定しておきながら、ビビる。
マサヒコは魔装を軽武装にした。
革ジャンと革パンツみたいな黒レザーの上下。そこにグローブと脚絆。左腰に短剣。右腰に拳銃。
「トレーニングスタート」
マサヒコのカケ声でオーガーが動き出した。イキナリの大声。
シュミレーションだとは言っても、その臨場感はものスゴく、マサヒコは鼓膜が破れるかと思った。
オーガーが大声をアゲながら突進してくる。なにしろ体がデカいので、1歩がひたすら長い。
マサヒコは拳銃を抜いた。すでに弾丸が6発シリンダーに入っている。
その瞬間、オーガーの動きがゆっくりになった。
撃鉄を起こし、オーガーに向ける。
すると弓の時のように視界に十字の照準が現れた。
それをオーガーの頭部に向ける。
引き金を引いた。
耳を割るような轟音。だが、予想していたよりも衝撃は少ない。ステータス値が高いからだろうか。
バタンとオーガーが横倒しになった。
つ、強い。
銃の威力もあるだろうが、やはりステータスの【攻撃力】によるところも大きいのだろう。
なんにしてもBランク魔物が一撃である。
「ええと、敵方魔物リスト、オープン」
マサヒコの言葉に空中に半透明位のウィンドウが開いた。
敵方魔物リストとタイトルがあり、その下に魔物の写真がFランクから順に並んでいる。
マサヒコは【トレーニングルーム】で設定できる最高ランクのAランク魔物を確認。
レッサードラゴン。
オークジェネラル。
サイクロプス。
デーモン。
よし、もう手あたり次第いってみるか。
マサヒコはAランクの4種をすべて設定した。
さて、どんなもんでしょーか?
◇
アリスが【トレーニングルーム】のある通路のベンチで待っていると、ドアの1つが開いてマサヒコが出てきた。
なんだか複雑そうな顔をしている。
「どしたの?」
「あっ、アリス。イヤ、ちょっとね。予想外だったというか、なんというか。魔装は決まった?」
「バッチし。見る?」
「ウン。じゃあ、【トレーニングルーム】、入ろうか?」
「ウーン、その前に、ナンカ食べたいかも」
「じゃあ、昼食べようか。ナニか食べたいモノある? せっかくなら2ランク昇格祝いに美味しいもの食べようよ」
「じゃあ、お寿司」
「イイね。行こうか」
そういうワケで、マサヒコたちは冒険者ギルドを出て寿司屋へと向かった。
日本の高校生だったら少し、しんどい値段だが、なにしろマサヒコもアリスもガンガン稼いでいる。少し豪勢な昼食をトるくらいはなんてコトなかった。
途上、マサヒコは【トレーニングルーム】での話をした。
「マジっ。Aランクでもラクショー?」
「ウン、でも考えてみれば、当然かも。ほら、ゴブリンキングを倒す前でも、Aランクのキング相手にソコソコ戦えたから。ソコから一気に【レベル】が上がってるから、ステータスも底上げされただろうし」
「スゴっ。じゃあ、もうAランクでイイじゃん」
「でも、さっきみたいなことがなきゃー、なかなかイキナリ上げてもらえないだろうし。まー、ノンビリやろうよ。アリスの【レベル】も上げたいしね」
マサヒコは心配なのである。
シャーリーのようにアリスが襲わることもありえるのだ。マサヒコの感覚だと、ゴブリンキングを倒してから、魔装顕現していない状態でも強くなった気がする。
つまり【レベル】が上がれば上がるほど、イメージに肉体が近づいていくというコトではないか?
そのあたり、キチンと検証した方がイイかもしれない。
「ウチは別にイイけどぉ」
フタリとも昼食の寿司は腹いっぱい食べた。
マサヒコもアリスも食べすぎて動けなくなった。
そのままフタリで、マッタリ過ごしているうちに午後もすぎ、店を出た頃は午後2時を回っていた。
「今日はもう仕事はイイか。アリス、どこか行きたいところある?」
「『マーサルマン塔』。デートしたい」
その言葉にマサヒコの顔が赤らんだ。
イイな、こーいうの。リア充っぽいよな。
「ウン、じゃあ行こうか」
マサヒコが歩き出すと、アリスがすかさず腕を組んできた。
「部屋に戻ってもイイんだけど」
小声でツブヤく。
「えっ? ナニ?」
「別に、なんでもないから」
「そう?」




