ツキアイマシタ
アリスは、きっとこれから部屋に戻って、エッチするんだろうな、とカナリ期待していた。なにしろ、そのためにマサヒコはツキアったハズなのだ。
だが、そういうワケではなかった。
「じゃあ、ともかく、今日も、ガンガン依頼をコナしていこうか」
などと、超フツー。
「……ウン」
幸い、まだラビットボール退治の依頼は残っていた。マサヒコがさっそくソレを受付へ持っていった。
エッチ、しないんだ。まだ。
アリスは拍子抜けした気持ちで、依頼の受付をするマサヒコをナガめていた。
そこへ友人が声をカケてきた。
ヤベっ、さっきの見られた?
などと、警戒するアリスだったが、友人はソコまで気づいていなかったらしい。
そのまま他愛のない話をしているとマサヒコが戻ってきた。
「あっ、ウチら、ツキアうことになったから」
さっそく友人に自慢する。
「そういうコトでヨロシク」
マサヒコは照れクサそう。友人は若干アキレ顔。
あっ、そうだ、リーズとエラにもメールしとこ。あと、ロミナにも。
エッチ目的、内容はセフレみたいなものだとはいえ(アリスはそう思い込んでいる)、とにかくツキアったのだ。その事実には変わりない。
「じゃあ、行こうか。アリス」
マサヒコが言った。
「ウンっ、行こ」
するとエスコートするみたいにマサヒコがソっと手をつないできた。
うわっ、うわっ、うわぁぁ、とアリスは驚き、ドキドキする。今まで、何度も手をツナいできたが、それはいつもアリスからだったのだ。
ギルドを出てバス停へ。
すでに何人もの冒険者がバスを待っていた。手をツナぐフタリは、オヤオヤオヤ、というような視線をアびた。
すぐにバス馬車が来た。
今回の牽引車は魔装顕現したケンタウロスだ。行き先はイロイロ経由して東門まで。
マサヒコたちは東門から郊外に出るつもりだったのでちょうどよい。
ほかの冒険者に続いてバスに乗った。
バス馬車には乗客も多く混雑していた。座席がほとんど塞がっている。
「アリス、空いてるよ」
マサヒコが座性の1つを指した。
隅の1人分だけ空いている。
「イイよ、立ってるから」
ヒトリだけ座るのはマサヒコに悪い。
それならこのまま手をツナいでいた方がいい。
「イヤ、ケッコー揺れるし。座った方がイイよ。俺は、ここにツカマってるから」
言ってマサヒコは座席から伸びたポールにツカマった。空席のすぐ手前だ。
「ほら。座って」
「ウン、アリガト」
アリスはありがたく座らせてもらった。前に立つマサヒコを見上げる。
優しいなあ、マサヒコ、とシミジミ思う。
2番目と4番目の元彼だったら、無言で自分だけ座ってしまったハズだ。
「ナンカ、こーしてると学校行くみたいだな」
「ウチ、制服だしね」
あっ、とマサヒコが声を出した。
「んっ? どした?」
「イヤ、なんでもない」
なんでもなくはない顔で、頭をカイている。
「そーか、忘れてた」
ツブヤく。
聞かない方がイイんだろうな、とアリスはそのまま放置。知らないフリで、シュマホーをイジりだす。
友達たちにマサヒコとツキアイ出したことを自慢するのだ。
バスが止まった。
何人かが降りていく。アリスの隣も空いた。ササっとマサヒコが座る。
「あのさ」
マサヒコが切り出した。
「なに?」
「俺たち、ツキアイだしたじゃん」
「ウン。そんで?」
「それで、えーと、さ」
ふいにマサヒコがアリスの耳に顔を寄せた。
うきゃっ、とアリスは変な声が出た。
「俺と一緒に帰ってくれない? 元の世界に」
マサヒコが言った。
あー、そーいえば、ウチ、帰らないって言ってたか。
マサヒコは帰りたい派、アリスは帰らない派で、意見が割れていたのだ。
「ウン。帰る」
アリスはアッサリ意見をひるがえした。もともと、ナンカ元の世界に帰ってもナー、という程度の思いである。
大好きな彼氏が帰るなら一緒に帰るに決まっている。
「えっ、イイの? マジで。帰ってくれるの?」
「ウン。マサヒコと別れたくないし」
さすがに異世界と日本で遠距離というワケにも行くまい。
マサヒコはホッとした顔だ。
「良かった」と胸をナデおろす。「じゃあ、一緒に帰ろう」
「ウチが帰んないって言ったら、どーするつもりだった?」
聞いてみる。
まあ、マサヒコひとりだけ帰ることになっただろうなー、と思ったのだが……。
「そりゃー、俺も残るよ。そんときは」
意外なマサヒコの言葉。
「そりゃー、そーでしょう」
「えっ、でも、超帰りたがってたじゃん」
アリスはビックリである。
「言ったじゃん。前に。彼女ができたら残るって。じゃなきゃ、付き合わないし」
と、言ったマサヒコだったが、実はアリスとツキアウ時に、そのことを失念していただけなのである。
だが、アリスが残りたいと言ったら残るつもりであったのは本当だ。
アリスはマサヒコの腕をギュっと胸に抱いた。なんだか胸がいっぱいになったのだ。
マサヒコはアリスのオッパイの感触に真顔をつくるのが大変だった。
顔が、顔がニヤける。
やがて馬車は東門前に止まった。
ほとんどの乗客が降りる。マサヒコとアリスも降りる。
フタリはそのまま門から街の外へ。
スッカリ冬枯れした草原地帯。青空の下、手をツナいで歩く。
「この辺にいるハズだけど」
マサヒコはレンタルしてきた【魔物レーダー】を確認。探知機のハシの方で点が動いている。
「アッチだ。アッチにいるみたい。魔装顕現しよう」
マサヒコが手を離す。
アリスはソレをサビしく思った。
フタリして魔装顕現。今回、マサヒコは軽武装のレザーアーマーである。
アリスは相変わらず金のタートルネックノースリーブ、ニットワンピの上にシースルーのコート。
すぐに遠くの方でピョンピョンと跳ねる白いモノが見えた。
「じゃ、ウチ、矢でヤってみる」
言うとアリスはハートの矢を引きシボり放った。
矢は見事命中。
フタリがその場に行くと、白いまん丸のモフモフが血で赤く染まっていた。思った通りラビットボールである。
それを【ギルドカード】に収納。
「次は……」
また、【魔物レーダー】を見る。
今度は2体、動いているのが見える。
ソチラの方を見てみると、ナルホド確かに2体白いモノが動いている。
アリスが無言で次々と矢を放つ。どちらも命中。
やっぱりアリスは弓を使った方がイイかも。
マサヒコは思った。
ソレに魔法はレベルアップとは関係なく、熟練度によって習得していくため、マサヒコとアリスの大量の【ステータスポイント】を得られるという長所を生かしにくい。
その点、弓には【攻撃力】や【敏捷性】が反映される。
コレで3体。
密集していないので移動が手間だが、ソレでも順調だ。
「コッチも、雪、降るかな?」
アリスが言った。
倒したラビットボールのもとへ向かっているところ。
「降るんじゃない。だいぶ寒くなってきたし」
日本に比べれば温かい方だが、それでも寒くなってきた。
「スキーとか、コッチでもヤルのかな?」
「マサヒコはヤったことあんの? スキーとか、ボードとか?」
「小学校のスキー教室で、ちょっとだけね」
「マジ、小学校でそんなんあったんだ。うちなかったけど」
そのままウィンタースポーツの話を少し。
そうこうしているうちに、またラビットボールがきた。
これもアリスが倒す。
「ゴメン、アリスにばっかヤラせて」
「んっ? ぜんぜんイイけど。ウチ、ケッコー、弓好きかも」
「俺も、アリスには弓が合ってると思う。ナンカ、似合ってるし」
アリスが可愛く横ピース。
マサヒコのハートが撃ち抜かれた。
のんびり、なごやかに話しながら、ときどきラビットボールを倒し、というようなことをしていたら、いつのまにかノルマの10体を越えていた。
「よし、じゃあ、帰ろうか」
「アーイ。魔装、解いちゃう?」
「イヤ、いちおう、街に入るまで、このままにしとこうか」
万一というコトもある。なにしろ、まだまだ、こちらの世界には分からないことが多いのだから。




