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経験をスキルにする万能な能力を手に入れて、最強の探索者になりました〜JKと一緒にダンジョン探索で成り上がる〜【コミカライズ】  作者: わんた


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他人は運べないみたい

 消費した魔力と体力は回復したが、正人たちは今後の行動方針に悩んで動けずにいた。


 帰り道がなくなったことも問題ではあるが、アイアンアントの出現も無視はできない。むしろ、そちらの方が問題としては大きいかもしれないのだ。


「まさかダンジョンと、アイアンアントの巣が合流するだなんて」


 タイミングが悪すぎる。それこそ悪意を感じるほどには。口に出すことはなかったが、四人は同じ気持ちである。


「状況が悪化しすぎてます。帰りますか?」

「そうしよう」


 里香の提案に正人は同意すると、スキル昇華を使って『転移』を覚えるために、魔力で自分の体を包み込む。


『転移、身の回りの物と一緒に移動する』


 簡素な説明が脳内に流れ、絶望した。

 物と表現されているため仲間と一緒に転移はできないからだ。


 食料などの問題は解決できるだろうが、地上の状況を考慮すれば追加の援助は期待できない。自力で抜け出す方法を見つけるしかなかった。


「転移のスキルを覚えたんだけど、他人は運べないみたい」

「私たちは帰れないんですね……」


 普段は前向きで頑張る性格ではあるが、冷夏は意外と脆いところがある。暗い顔になった彼女を慰めるために、正人は頭を撫でながらヒナタと里香を見た。


「幸いなことに食料の心配は不要だ。体力の配分に気をつけながら、地上に戻ることを目的として探索は続行しよう」

「ヒナタはみんなと一緒なら何でも良いよー!」

「こんな所では死ねませんからね。ワタシ、頑張ります」


 里香が力強くい言葉を発すると、冷夏の手を持つ。


「だから、冷夏ちゃんもがんばろ」

「うん。ありがとう」


 誰一人諦めていないと知って、少しだけ元気を取り戻した。まだ希望は残っていると自分に言い聞かせると立ち上がる。ヒナタや里香、正人も続く。


「だったら行動あるのみだね。ヒナタ、怠けちゃダメだよ」

「お姉ちゃんは絶対に諦めたらダメだからね!」

「もちろん! 皆と一緒に帰るんだから!」


 姉妹のいない里香は、二人のやりとりを無意識に追ってしまい、羨ましいと感じていた。


 ワタシも両親に捨てられなければ、こんな会話をする弟か妹がいたのだろうか。それだけではなく、家族団らんの生活ができたかもしれない。といったネガティブな思考が里香の胸に広がっていく。


「一緒に戻って、春や烈火に無事を伝えようね」


 正人は他人の心なんて読めないが、少女が寂しそうにしていると感じ取るぐらいはできる。


 君は一人ではない。待っている人がいるんだと気づいてもらうために、あえて弟の名前を出して励ましたのだ。


「そうですね」


 家族ではないかもしれないが、待っている人たちは沢山いることを思いだし、里香の心は少しで軽くなった。


「マンションに住んでいる人たちも心配なので、早く帰って安心させてあげないと、ですね」


 里香たちは高レベルの女子高生探索者としてテレビに取り上げられるほど人気だ。当然、彼女たちが住んでいるマンションは、家賃が高騰するほどの場所になっている。


 探索協会が贔屓にしている議員の親族も居住しているため、早く帰らなければ各所から非難の声が上がるのは避けられないだろう。


「国民を守る英雄だからね」

「やめてください! あれって、テレビが勝手に言ってるだけなんですよ!」


 テレビに何度も取り上げられたことで、世間では正人がイジったような表現をされることが増えていた。当の本人は名前負けしていると恥ずかしがっているが、何度もモンスターから一般人を助けており、モンスターの襲撃から小学校を守った逸話はSNSでも人気である。英雄と呼ぶに相応しい行動はしているのだ。


「それにですね。本当の英雄は正人さんですよ。世間は見る目がありません」


 何度も助けてもらい、救ってもらった。

 賞賛するべき人は正人であって自分ではない。


 里香の偽りない本音だ。いつもは心の中で思っているだけで口に出すことはないが、からかわれたこともあって顔を赤らめながら言ってしまった。


 恥ずかしさのあまり正人から離れると、冷夏とヒナタに合流しておしゃべりをはじめる。


 一人残された正人はぼーっと、三人を眺めていた。


(私が英雄? 考えたこともなかった)


 家族や仲間のため、必死に生きてきた正人の自己評価は低い。道明寺隼人と痛み分けした実力があるのにもかかわらず、未熟な探索者という考えが残ってしまい、里香に言われても実感が湧いてこない。


(いつか、自分を認められる日が来るのだろうか)


 立派な探索者になったと心の底から思えたのであれば、道明寺隼人に覚えた劣等感も消えていくことだろう。本人が気づいてないだけで、今の実力を考えればその日は遠くない。


「正人さん! そろそろいきましょー!」

「わかった」


 元気いっぱいなヒナタに誘われて、正人は立ち上がった。脳内の地図を見ても赤いマーカーは浮かんでいない。『暗視』スキルで通路の奥を見るが、敵の姿はなく罠もなかった。


 守るために戦う。


 一人で決意を固めた正人は、火球の明かりを頼りに三人を連れてダンジョンの奥へ進んでいく。


 人類で初めてたどり着いたダンジョン最奥の間。最後のボスとの出会いは、もうすぐである。

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