第八話 山の麓の町のとある物語 その5
一章は前振りや設定的な部分が多いのでサラッと読み流していただければ幸いです
山小屋の朝は早い。日が昇ると同時に二人は目を覚まし、肌寒い山の冷気を感じながら近くの小川で顔を洗い、一時間ほど山道をマラソン。そののち、昨晩から下準備をしていた熊肉を朝食として食べる。いい加減カズヨシもジビエ料理独特の生臭さにも慣れ、体を作るために肉を頬張る。
朝食をとった後は昼頃までひたすらに剣の修行である。相変わらずユウサイの美麗な絶技に比べ、カズヨシのそれは人形劇のようなぎこちなさが残る。ユウサイは微笑ましくその姿をみつめ、カズヨシは眉にしわを寄せる。
一向に上達しなくともカズヨシは根気強くユウサイをまねる。しかし、やはりぎこちなさは今日も取れなかった。
ひとしきりの稽古を行ったのち、昼食をとり、カズヨシは身支度をする。いつもであればここからはユウサイによる読み書きの訓練なのだが、今日からは違う。
訓練のメニューに山の上り下りが加えられたのだ。目標は片道二時間。もちろん達成できるはずはない。それでもユウサイはカズヨシのためにあえて厳しい課題を出すのであった。
身支度を済ませるや否や、ユウサイは山を下り始める。いつものように獣のように飛び跳ねながら山を下るのではなく、人の道を使って下っているのだが、それでもユウサイの軽快なリズムについていくのは至難の業である。
ちょうどこれが二時間で山を下りきれるペースなのだとカズヨシも理解はしているが、それでも厳しいものは厳しい。結局、三十分と持たず、道端で枯れ木のように岩にもたれかかるのであった。
そして前回同様、ユウサイに山道まで運び込まれるのであった。
「ワシは山に戻る。頃合いを見て陽が沈む前に戻ってこい」
そう言ってユウサイは瞬く間に山を登っていくのであった。
ユウサイが見えなくなってもカズヨシは山道の入り口にある門にもたれかかり、持参した水筒から水分補給をする。
休憩したのち、服にしみた汗も乾きだしたころ、やっとカズヨシは図書館に向かうのであった。その道中、見知った顔が近づいてきていた。
「やっほー。なんか元気ないわね」
エリナがカズヨシの後ろから肩をたたく。兜越しからもカズヨシの疲労がうかがえるらしい。
「ナンデモ、ナイデス」
「そう?。今日も図書館?」
「ハイ」
「なら今日も教えてあげる!」
エリナはそういうとカズヨシの手を引っ張り図書館に走る。エリナの柔らかい手に握られ、カズヨシは兜の下で顔を赤らめるがエリナがそれに気づくことはなかった。
館内は昨日と何も変わらずカビ臭い場所であった。そして昨日同様、壁際の席に着き、エリナの指導が始める。
そして一時間もすれば二人とも集中が切れ、何か別の楽しいことがないかと館内を歩き回るのであった。それも終わるとまた勉強に戻り、また集中が切れるころには陽が傾き始める。
日が傾き始めるとエリナは帰宅し、それに続いてカズヨシも帰宅する。帰宅後は夕食をとり剣の修行。おわれば風呂に入り早々に就寝する。そして一日は終了するのだ。
多少の差異はあるが、このような生活を規則正しく毎日こなしていた。
そんなある日のことであった。
「ねえ、カズヨシ」
「ナニ?」
「もしも、もしもよ。カズヨシはあったこともないような人と結婚しろーっていきなり言われたら、どうする?」
いつものように図書館で勉強しているとエリナは窓の向こうの青空を眺めながらそんなことをカズヨシに尋ねる。
「バアイ、に、ヨルカナ?」
「じゃあ、どんな場合だったら結婚するの?」
「うーん、セイリャク、ケッコン?、とか、カナ。まあ、ボクハ、きぞくジャナイケド」
「政略結婚、ね……」
エリナはかわいらしく肩ひじを突きながら机にもたれかかる。そして大きなため息を漏らす。
「ドウシタノ?」
「……なんでもない。さ、続きをやりましょ。もうちょっでその本もおしまいでしょ」
そう言ってエリナはなにごともなかったかのように教本を読み上げる。
その日のうちに本の内容をすべて終え、エリナと次はどの本を使うかの話し合いをする。
「うーん、ボクハ、モウチョットむずかしいゴガクショ、ヨミタイカナ」
「えー、あれだけやれば十分よ。少なくとも生きてて困ることはないわ。それよりもこっちのほうが面白そうじゃない?」
そう言ってエリナは一冊の魔導書を取り出した。しかし、カズヨシの反応はあまりいいものとは言えなかった。
次回は18:00ごろのとうこうになります
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