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 決戦

電波塔に続く、階段が目の前にある。

後ろには車がある。

僕がこれまで乗ってきて、暮らしてきた車。


鉄パイプに視線を落とす。

トキヤがくれて、その後ずっと僕の愛用武器になった。

最近錆が増えたけど、仲間や僕を守るのにずっと役に立ってくれたから

汚いなんて思わない。

あともう少しだけ、一緒に戦ってほしいと思う。



僕と、キョウヤを

仲間が、見守っている。


キョウヤと一緒に階段を登ろうとしたら

「二人氏!」

ライムに呼び止められた。


彼女は僕等二人に手をかざす。

すると僕の体が、なんというか軽く。

体中が元気になったみたいだ。


「いってらっしゃいまっせろ」

彼女も、超能力を使えたんだな。

そう、初めて知る。


そして、キョウヤと一緒に長い階段を上っていく。


ゆっくり、ゆっくりとした時間を感じる。


僕は久々に空を見上げた。

やっぱり窮屈な空だった。


そして、上がり切って。

アスファルトの地面が広がっていた。

電波塔の入り口が遠くに見える。

しかし太くて高い塔だ、頑強そう。

で、塔の手前には八代がいた。


奴は右腕で、来栖を抱えていた。

それを僕は見た。


思わず目を背けそうになる。

あんなに痛そうな体で、苦しそうな顔で。

僕を見て表情を少し緩めたんだ。


思わず泣きそうになった。

八代への憎しみと来栖への色んな感情で。


なあ、八代。


なんで、来栖の爪がはがれてるんだ?

なんで、来栖の指が折れてるんだ?

なんで、目から血を流してるんだ?

なんで、足首が青ざめてるんだ?

なんで、服がボロボロなんだ?


なんで、なんで、なんでなんでなんで


八代は言った。「もう、いらないからさその玩具」

なんで。

来栖を八代は僕に突き飛ばす。

慌てて受け止めたら、来栖が重い

何の力も出せないほど消耗してるみたいだった。


でも、それでも伝えたいことがあるらしく。

なにかを僕の耳元で言おうとしている。

それは、声にならず息になって消えてしまっていく。

どれほどその声が聞きたくても彼女の声帯は潰されているようで。


そして、来栖がありえないことをした。

僕をよろよろと、そんな力もうないはずなのに手で押して

僕の手から、離れ。


結果から言うと、死んだ。

目の前で。


「・・・・・・あ」僕から声が漏れていた。

目の前で、来栖が八代の剣に頭を貫かれて死んでいた。

たぶん八代の攻撃に僕が巻き込まれないようにしてこうなったんだと思う。


八代の笑い声と、キョウヤの叫び。

どっちもどうでもよくなった。


来栖にかけよって、抱き起こす。

でも、やっぱり冷たくて。


それでも、こんなに理不尽にあっけない死があってたまるかと

認めたくなくて。

キョウヤと八代が戦ってる声も

なにもかも、どうでもよくなってボロボロ泣いてたら。


頭の中に映像が流れ込んできた。


僕には、全てがわかった。

僕の超能力の追体験、それはその人の全てが解る

その人の見たもの、感情、全てを自分が体験するんだ。

だから、その映像は、僕に来栖がくれた最後のものになる。


______________映像は見た。

全部目を背けたかったけど、見た。

最後の来栖の記録だから。

痛い、発狂しそうなほどの来栖の痛みを僕も体験した。

なにもかも、見た。

頭の中の映像も、伝わってくる感触も、全部まじめに見た。

_______________そして、僕を来栖が手で押したとこで

映像が終わる。


見終わって不思議な気持ちだった。

僕の中から何かが出てきそうなのに、それでも

気持ち悪さを感じない。


僕が、折り合っていこうとした。

かつては消そうとしていた僕と、今ココにいる僕の両方が

同じことを思っている。


ゴロゴロ、蹴り飛ばされたキョウヤは僕に向かって転がってくる。

その手に持っているクロスボウは壊れてしまっていた。

そして、八代は、キョウヤの向こうにいる。


ニヤニヤと笑って薄気味悪い。


奴の手に、何度も何度も僕等を苦しめた剣がある。


でも、一切使ってないみたいだった。


舐められている、そう感じる。


僕は、僕の中の僕とともに、走る。

八代がナイフを投げてきた。


でも、止まってなんかいられない。

だから、ナイフを受け止めることにする。

八代のナイフが遠くから、僕の胸に迫ってくる。

どんどん、どんどん。

そして、いまにも突き刺さる瞬間、

鉄パイプを握ってないほうの手で

ナイフの持つところを掴んだ。


そして、ナイフを持ち直し八代に向かって叫ぶ。

「八代オ!殺してやる!」

走りながら、八代に近づいて。

ナイフを横に一閃

後ろに跳ばれ避けられた。


僕は集中する。

サイコキネシスで

右手に人の首の感触を感じた

右手のその感触を思いっきり握りつぶそうとした。

そうすれば、八代を殺せる。


だけど、効かなかった。

たしか超能力は超能力で打ち消せるんだったっけ?

クソ。

じゃあ、サイコキネシスで岩とか飛ばしたら?

慣性は打ち消せないだろうから

超能力が打ち消される前に、飛ばせばいいんじゃ?


とか考えてたら、八代が僕にまたナイフを投げてきた。

かがんで、避ける。


回復したキョウヤが八代の死角から石を投げつける。

けど、いとも簡単に八代は避けやがった。


「あははっはっはっはあはははは」

八代は笑いながら、空に飛んでいく。

まずい、このままじゃ手出しできなくなる。


殺せなくなる。


だったら今のうちに


死ね。


キョウヤとともに

八代に飛び掛かり、攻撃。


むなしく、攻撃が空を切った。


キョウヤは八代に蹴られ

僕の体は、完全に自由に落ちていく。

少しでも八代に近づこうと手を伸ばしたけど無駄で

僕の体は重力から地面に叩きつけられた。


「ガフッ!」

無理に圧迫された体は、肺から悲鳴と息が混じったっ叫びをあげる。

しまった、不味い落ち方した。


目の前が暗くなっていく。

まだ、だめだ。

何度も気絶してきたけど今回だけはダメだ。


キョウヤが今の着地で気絶した。

ここで倒れてしまったら、八代に好きかってさせてしまう。


唇を噛んで、必死に意識をここに食い止める。

強く噛み過ぎて、ちょっと血が出てきた。


倒れてるのは不味いとよろけながら起き上がり八代を睨む。

かなり、あいつ高く浮かんでる。


殺してやる。

引きずり落して、腹を掻っ切って殺してやる。

その醜い面を人として認識できなくしてやる。


八代が、僕にサイコキネシスで重力をかけた。


体中が重い。

立ち上がっているのに、全身を地面に押さえつけられているよう。

抵抗しようと、踏ん張った。

なのに

僕は、その力に膝をつかされてしまう。


僕は超重力に耐えながら、僕の手のナイフを強く握っていた。

絶対離さないように。

頭の中で、八代への憎悪はぐんぐん膨張していく。

多分、僕の目つきはヤバくなってるだろう。


もう、皆と一緒に生きていけないような奴に僕は戻っていってるんだろう。

しったことか。

来栖が殺されたんだ。

憎しみが、止まらないんだ。


そうやって、そめて奴をにらみつけるだけでもしようとしたら

目の前が、真っ白になった。

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