危機迫り
やっとプロローグの終盤だ
僕は家に入る。
するとあたりから鉄のにおい、いや、血の匂いが充満している。
何か起きている、きっと危険な奴がいる。
けど逃げようとは微塵も思わなかった。
僕の口元が緩んで口角があがっている。
敵の存在を感じた僕はなぜか、楽しいというか、ワクワクしていた。
きっと人としては良くない、こんなものを喜ぶの。
……僕は全神経を集中して、気配を殺しつつどこかに何かいるか探る。
そして廊下を忍び足で歩く。
まず二階の僕の部屋に行くべきか少し迷う。
うちの階段は乗ると音が鳴る。ぎしぎしとでかい音が。
だから行くならば敵に僕のいることがばれるだろう。
……だけど二階の僕の部屋にはいろんなものがある。
大半は虫についての本とか漫画とか役に立ちそうにないけど、探せば武器だってある。
例えばちょっとした針だったり棒だったり。
さぁ僕は二階に行くべきなんだろうか……?
いや、やめておこう。
仮に二階に敵がいたとしたら、武器を探してる暇なんてない。
それに、きっと敵の方は僕の存在に気づいていない。
情報アドバンテージをむやみに消すのはまずいかもしれない。
ゆっくり、リビングに近づくにつれてどんどん血の匂いは強くなる。
僕はいったん深呼吸して落ち着いて、目をつむる。
音と匂いに集中していく。
匂いは、血の生臭さが一番強い。
音は変な音がしていた、ぐちゃぐちゃとかぶちゃぶちゃとか汚い音。
ポケットからナイフをとる。
<墓場の女が持っていたものだ>
いつ取ったものかわからないけど、いつの間にかあった。
もしかして意識が途絶えた後体が勝手に動いたりしたのか?……いや、気にしてる場合かよそんな事。
そして僕は静かにリビングへと足を踏み入れた。
そこには小汚いデブがいた、その男は背をこちらに向けてあぐらをかき何か食べている。
こいつの周りには血だらけで、そのすぐそばに僕の両親のぼろぼろになった服がある
どうやらその中にかろうじて人の形を保つ肉塊があり。
ああ、そっか。お前僕の親を食ってるのか?と気づく。
親を殺されたのに不思議と憤りを感じない。
あまり、親のことを思い出せないのだ。
なぜだ?僕は混乱してるのか?それとも気が狂っているのか?
どっちだろう?
まぁいい、とにかく、そんなこと考えるより先にデブを片付けよう。
こいつは危険だ、深い事は考えず排除すべきなのだ。
デブはその右手に親父の頭部を持ち、素早く振り返す。
口には母さんのぼろぼろになった腕をくわえていた、そんな彼の血まみれの顔から知性を感じない。
そこにあるのは憎悪や殺意という、ひたすらな害意のみ。
……しかも不意打ち失敗だ。
デブの振り向きの瞬間頸動脈を狙いナイフを突き立てた、はずなのに分厚い皮膚が、刃を通さなかったのだ。
「あー!」
デブは僕に叫びながらタックルをかけ押し倒す!
そして僕を食おうと口を大きく開けた その口を僕はナイフで切り裂く
「あああー!」
悲鳴を上げるデブを突き飛ばし、今度は僕がマウントをとろうととびかかるが簡単に避けられた。意外と機敏だ。
そして僕の首を掴み、デブは壁に押し付けてくる。
マズイ、ぎりぎりと首を締め上げる力が強くなってく。
意識が飛びそうだ!
このままでは殺される!
さすがに僕も焦り超能力を使おうとした。
早く発動してくれ!
頭が痛くなるだけで使えない。この前は使えたのに。
あれは気のせいとか幻覚とかだったのか?
あんないきなり超能力が使えるようになるなんて都合のいい展開実際には起きていなかったのか?
ダメだ、僕の意識がもうろうとして来た。
でも。最後の力を振り絞る。
ナイフでデブの手首を切り裂いた、今度はちゃんと切れた。
脳みそが沸騰しそうな程熱い、コレはあれだな、たぶんどうにかして超能力を使った結果ナイフの威力をあげれたっぽいな。
するとデブは突然泣きながら手首をおさえる。
当然、僕からデブは手を離した。
いまだ追撃してやると、ナイフを振るうがまたしても機敏な動きで避けられる。
まずい、僕に隙が出来た……反撃される!
だがデブの反撃は僕を突き飛ばしただけで終わった。
僕のダメージは尻もちをついただけだ。
デブは「痛い、痛い」と泣きじゃくりながらうずくまり、そして一度鼻から息を大きく吸い。
「お前、ぜっだい、殺してやるからな!」と叫び、走って逃げていった。
どうやら手首への攻撃が大ダメージだったらしい、とりあえず助かった。
はぁ、今回の戦いはつまんなかったな。
気持ち悪いおっさんが相手だったし…………え?つまんなかった?今の僕は殺し合いを面白いかどうかで判別したのか?
自分の考えに驚愕する、まさかそんな風に殺し合いについて思うとは。
少ししてなんだか笑いがこみ上げてきた、その笑いが止められない。
「フヒッ」いつの間にか僕は腹を抱えてまで笑っていた。
「ケヒャッ!アフッ!」口が勝手に動く。
「僕を殺すだって?じゃあ先にやってやるよ!」
「ギャハハハハハハハハハハ!」
おぞましい事に、僕は両親を殺されたっていうのに笑っていた。




