月をなくした街 24逃げた先に
僕は、走っていた。
いつの間にか、あの墓場まで。
「ああ、そうだ、ここで女を殺したんだ」
最低だ、全部投げ出して何で僕はこんなところにいる?
何となく女の死体を探したけど、見つからなかった。
片付けられてるようだった。
僕のポケットでさっきから、スマホが振動してる。
メールが来てた。
差出人来栖差出人来栖差出人キョウヤ差出人春雪差出人トキヤ
とずらずら並ぶ。
心配してくれているのかそれとも別の理由でメールが来てるのかわからない。
でも、流石に黙って逃げ出すのは不味かったな、うん。
そりゃこんだけメール来るわ。
僕はとりあえず来栖に「ごめん」というタイトルでメールを送ろうとして。
本文作成をしようとして手が止まった。
自分でも何が何だか分からなくなっているのかもしれない。
仕方ない。
僕は「さよなら」とだけ打った。
そしてスマホをまたポケットにしまう。
この墓場には特に何もなかった。
何一つとして、無かった。
僕は、帰りたくなったから家に帰ることにした。
もう、トラックに轢かれて死にたい。
僕なんて死ぬべき人間なんだ。
だから、帰り道で、街をよく観察した。
運よく暴徒でもいれば楽に死ねる。
それで、普通の生活をしてる視線になって
気付いたんだ。
この町はいつの間にやら大分変わった。
……いつからかはわからない、きっと徐々に変わってたんだ
八代に襲われた時から、何となくわかってたけど
こうまじまじと崩壊を見るのは初めてだ。……
外を出歩いている子供は一人もおらず
全体的に終末のようなムード。
笑い声は一切響かず、そこら辺の壁やアスファルト
ところどころに血痕が付いている。
民家のドアや窓ガラスは壊され、
警察の死体がごろごろ転がってる。
自動販売機があったので、コーヒーを飲みたかったのに
お金を入れてボタンを押しても何も出てこない
他の飲み物も一切出てこない。
壊れてる。
「チッ」舌打ちして、自動販売機を蹴りつけた。
飲み物の出せないお前なんてただのゴミだバーカ!
また歩き始めて、どこに僕が向かっているのかわからなくなる。
一体僕は何をしてるんだ?
頭の中で僕の声が響く。
____ほら、殺しに行け誰でもいいから殺せ____
僕は、多重人格になっていた。
だって、しょうがないじゃないか。
人殺しをして楽しむような奴がみんなと一緒にいていいわけないんだ。
___だから、僕を消そうとして、おかしくなった___
___全く馬鹿な奴だな___
__消えるわけないのに___
うるさいうるさいうるさい!
ふらふら歩いていたら、前をふさいでいたやつらにぶつかった。
「あ?」威嚇される。
「あ?」僕も反射的に威嚇し返す。
金髪だったり、耳ピアスだったり。
典型的なアッパー型DQNな男4人が
人一人を取り囲んでいた。
ラッキーだ。
「なんだ?テメエ」低い声、とともに僕の腹に拳が入る。
僕は、抵抗する気力はないはずだった。
思わず、鉄パイプで相手の頭部に殴り返す。
「アガッ!」あ。
当たり所がよくて、相手は頭を押さえて倒れる。
たぶん、無意識に超能力で勢いつけて殴ってんな
このダメージは。
「なんだ、テメエ!」
今度は激しい声。
残りの相手は三人、多分戦ったら負けるだろう。
いっそこのまま殺してくれないかな。
倒れて苦しんでる相手を見たら、楽しくなってきた。
僕は、そんな自分が嫌だ。
三人がずかずか僕に近づいてくる。
やってやろう、負けて殺されても特に損はないんだし。
鉄パイプを両手でしっかりと構え
相手に向けた。
「いいよ・・・・・来いよ!」
そう僕が叫ぶ。
不良どもに僕が殴り込もうとした瞬間
僕の体は後ろに引っ張られた。
ちょちょ、ちょっと待て。
「な!?」
さっき取り囲まれてた男の人が
僕を引いていた。
「ここは逃げ一択だろうが!」
青い髪の男
彼は、大人びて見えたけど、僕より少し年上程度と思う
そういや最近まともな大人にあってない。
…なぜだ……なぜ敵は大人なんだ?
なんで、まともな大人がいない・・・・・・?
そんな疑問が沸き上がる。
桜木さんにこの話をしたかったけど、そんな勇気はない。
自分で考察してもいいけどやる気が起きない。
「……俺、学校で仲間と一緒に生活してるんだ、そこまで行くぞ」
とても早くぼくのからだは引きずられていく。
……学校で、生活?
それは、いろいろな危険に対処するため共同生活してる
僕やキョウヤ達のチームに近いのかな?
知らないけど。
そして、学校の校門前。
街中は荒れてて、ちょくちょく店にバットを持って振り回しながら突撃してる奴や
女性をナイフでめった刺しにしてる奴。
そういう暴徒がいた。
狂った感じだった。
「ハアッ!ハアッ!撒けたな……?よっしゃあ!クソDQN ども
ひれ伏せえ!」
僕をここまで連れてきた男はガッツポーズをして
そして
僕に言った
「ああ、助けてくれてありがとな」
ありがとう、か。
彼を、殴り飛ばしたくなった。
「うお、お前汗やべえな、ああ、俺 桜木 っていうんだ
危ない奴じゃねえよ」
桜木……?
「もしかして、桜木 カイさんの親族ですか?」
「おっ、知り合い?俺はアイツの兄貴でショウゴっていうんだ
ずっと心配だったんだけど、あいつ生きてんの?」
「え、ネット繋がってんだしメールでもすれば」
「え、ネットなんてつながら――」
ショウゴはスマホを取り出して怪訝な顔をした。
「うそだろ?ずっと繋がらなくて落胆してたんだ」
・・・・・・?ずっと繋がってたけど?
「……まあ、あいつのメルアドも携帯番号も知らないから
連絡取りようがないんだけどな、お前の携帯貸してくれね?」
はいはい。
僕はショウゴにスマホを差し出す。
……微妙に嫌だけど。
目の前で、妹と彼は何を話してるのだろう。
「うん、俺ショウゴ、久しぶり、うん、そうそう、ん?へー、じゃ切るな」
そしてスマホを僕に返し
「お前なあ、全部投げ出すならもっとこう、立つ鳥跡を濁さずっていうか」
今の僕にはすごい刺さる言葉だ。でも。
「僕は、みんなと一緒にいちゃいけないと思うんです」
あたりまえだろう。
「何言ってんの?厨二病かなにかか?」
かもしれない。けど
「あいつら、お前がいなくなって心配してたぞ」
目の前の彼の頭に鉄パイプを振り下ろしたくなった。
ここから離れたくなって。
「・・・・・・・じゃあ、そろそろこれで僕は」
そういって、別れる。
急だったかもしれない、でも来栖たちとよりは、ましな別れだろう。
__僕は、違う僕は違う。こんなこと思ってない。
皆殺しにしてやりたいなんて思ってない。
僕はこんな奴じゃない‼‼‼‼___
いつの間にか、僕はまた歩いていて。
鉄パイプに血の跡がいっぱいついてることに気づいた。
錆びるなこれ。
叫びたくなった。
なんだよその感想は、人を殺したことを悲しめよ。
そして、
いつの間にか僕は。
壊れて開きっぱなしのドアの前。
僕の家に帰ってきていた。




