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【完結】幸せ異類婚姻譚~もふもふを愛する令嬢の運命の相手は、もふもふのもの字もない獣人でした~  作者: さき


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13:◆過去◆星の欠片を手に

 


 ロゼッタは自分の胸が穏やかに温まるのを感じながら、ペンダントトップにして首から下げていた星の欠片を手に取った。

 今までは服の下に隠すように持っていたが王宮に来てからは服の上に出している。


「エイベル様は星の欠片が落ちて来た時は何をなさっていましたか? 私、家族と一緒に星空を眺めていたんですが、あまりの眩しさにいったい何事かと驚いてしまいました。お母様は私を心配して、庇うように抱きしめてきたんですよ」

「あの眩しさは凄かったですね。俺は祭りの警備をしていたんですが……、あの時はラニカと一緒に居て大変だったんです」


 ラニカはコウモリの獣人である。そしてコウモリの獣人は明るさに弱いという。

 といっても目は人間と同じ造りをしており、日常生活の明るさは問題無い。だが如何せん星の欠片の輝きはそれの比ではない。星の欠片と分かっていても、眩しさに関して言えば太陽の欠片なのではと思えるほどだ。


「ラニカが悲鳴をあげて、でも俺も眩しさで視界が瞬いていて何が何だが分からなくて、同じように眩しさにやられた者達が周りにいて……。まさに騒然と言った状態でした。騒ぎを聞きつけた隊長達が来て落ち着いたんですが、そこでようやく俺は自分の手に星の欠片が落ちて来たことに気付いたんです」

「まぁ、それは……。随分と大変だったんですね」


 ロゼッタは労いの言葉をエイベルへと告げ、だが次の瞬間、口元を手で押さえてふふっと笑みを零してしまった。

 自分の時も星の欠片の眩しさに驚き、両親は庇うように抱きしめ居合わせた使い達も動揺して大変だった。だがエイベルはそれ以上に大変な状況だったようだ。それも同僚のラニカどころか周りに居た祭りの客達まで巻き込んでしまったという。

 その光景を想像すると思わず笑いそうになってしまう。


「私、星の欠片が落ちてくる時はもっとロマンチックなんだと思っていました」

「俺もですよ。まさかあんな大惨事になるとは思ってもいませんでした。よっぽど眩しかったのか、ラニカは星が流れだしたらサングラスを掛けるってわざわざ買って用意しているんですよ」

「サングラス? そんな、それほどに眩しかったんですね。ふふっ、やだ、ごめんなさい、私ってば笑ってしまって」


 笑いが堪えきれず、ロゼッタは再び口元を手で押さえる。だが肩が震えてしまう。

 そんなロゼッタに対してエイベルは目を細めて「楽しみですね、星祭り」と微笑んだ。



 ◆◆◆



「……わぁ」


 目の前の光景にロゼッタが思わず感嘆の声を漏らした。

 既に日は落ちきり夜と言える時間だ。普段であれば周囲の明かりは殆ど落ちて、ポツリポツリと灯る街灯と家屋の明かりだけが道を照らしている。

 だが今夜は違う。あちこちに明かりが灯り、手持ちの明かりを持つ者が行き来しているのだろう細かな明かりがそこかしこで動いている。星空も綺麗だが、眼下の美しさも引けを取らない。


 そんな景色を、ロゼッタは王宮の一室の窓から見下ろしていた。

 流れ星が空に溢れるまであと一時間を切った。いよいよという実感が湧く。


「星が流れ始めたら、これだけの人が星空を見上げて、私とエイベル様が星を空に返す瞬間を見守るのよね」


 王宮は緩やかな坂の上にあり、更に今ロゼッタがいる部屋は建物の上階だ。

 そのうえ星の欠片を空に送り返す時はより高所のテラスに出る。そこは星空を一望でき、眼下の景色も良く見えるという。つまり、下から見上げている者達からも見えているということだ。

 そのうえ合わさった星は眩く光って空へと戻っていく。流れ星が跳ね上がるようなその輝きは、市街地で見守っている者どころか国内、それどころか他国からも見えるのだ。


「なんだか緊張してくるわ……」


 改めて自分の役割の重要さを考え、ロゼッタは胸元と、そして胸元にある星の欠片をぎゅうと握った。

 期待に緊張が混ざる。それと上手く出来るのかという不安。といっても、星を空に返す方法はごく簡単なものだ。星に選ばれた二人が重ねて一つにした欠片を手にし、空に掲げるだけだ。

 儀式も無ければ呪文も無い。難しい事もなど一つもない。


「そうしたらもうお別れね」


 星の欠片にそっと囁く。

 この一年間、肌身離さず持っていた。最初は星の欠片を持っているという事に落ち着かず、無くしていないか何度も確認した。どれだけ高価なネックレスを着けてもここまで落ち着かない事はないだろう。


「あなたのおかげでエイベル様と出会うことが出来たの。ありがとう。ちゃんと空に返してあげるからね」


 そう星の欠片に告げ、次いでコンコンと聞こえてきた音に顔を上げた。


「エイベル様?」


 エイベルは最後の確認のために部屋を出ていたが、それを終えて戻ってきたのだろうか。

 だが開いた扉から顔を見せたのはエイベルではなく、それどころかロゼッタも見た事のない男性だった。

 一人は濃い赤色の髪をしており、動物らしい耳はない。手も肌色で毛には覆われていない。だが下半身は髪と同色の蛇の尾になっており、一目でエイベルと同じ蛇の獣人と分かる。

 そしてもう一人は薄黄色の髪から同色の肉厚な耳が出ている。手も毛で覆われており、尻尾も見える。獅子の獣人だろうか。体躯が良く、威圧感を漂わせている。


「……あの、どなたでしょうか?」

「ロゼッタ・クスターか?」

「はい。そうですが……。エイベル様のお知り合いですか?」


 もしかしたら騎士隊の同僚でエイベルを呼びに来たのだろうか?

 彼は今席を外している。だがじきに戻ってくるだろう。

 そうロゼッタは教えようとし……、


「悪いが、大人しく着いてきて貰おうか」


 という低く敵意に溢れた声と、蛇の獣人が手にしているナイフに息を呑んだ。



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