#20 魔砲獣と地下鉄道
「魔砲獣と地下鉄道の連携とはね……だが、舐めてもらっちゃ困るな!」
空に舞う魔砲獣たちの群体、更にその一匹に抱えられている魔砲戦車――地下鉄道のシャドウ専用車を睨み。
利澤先輩は、上星号砲塔の一つになっている自車から啖呵を切って見せているわ!
「シャドウさん、むしろあんたの黒さは朝空には目立つんだよ! それに制空権取ってもう勝った気でいるんだろうけど甘いよ! 不利はそっちのほうさ!」
「ふん、それは……どうかな!」
だけど、利澤先輩のそんな啖呵を切る様もせせら笑うように。
シャドウは、次なる行動に出た!
「待て! 利澤……あれは!」
「ああ風間、そうだね……ありゃあ、魔砲獣による雷雨だ!」
そう、もう前に魔砲獣たちが既に見せている手ではあるけど。
魔砲獣の群体のうち、サンダーバード型が森の種子を散布し体液を降らせて更に雷を起こし。
さながら生ける雷雲のごとく仕掛けて来て、それにより日光が遮られた下にシャドウの魔砲戦車とそれを抱える魔砲獣が周り込んだ!
「雷雨の下に隠れるとは中々やるねえ……だけどみくびってもらっちゃ困る! もうその手は完全に見切ってんだからさ、向氷ちゃん!」
「はい、利澤先輩! ……クリティカルスキル、凍結砲華! さあ今よ美葉! ミサイルを発射して! 目標、魔砲獣群直前!」
「……はい。クリティカルスキル、投石投射。」
私は、美葉が構える多連装弾頭を凍らせ。
氷塊となったミサイルを次々と生成し撃たせたわ!
たちまちミサイルは、一旦打ち上げたように直上を飛んだあと。
空を真っ直ぐ飛び、そこを黒々と覆い尚も雷を落とす魔砲獣たちに向かう。
キシャアア!
けたたましい叫び声と共に、魔砲獣たちはそれを雷で迎撃するけど。
その時だったわ。
キシャアア!
魔砲獣が上げた声は先ほどの戦意たっぷりのものではない、恐れ故の悲鳴。
そう、かつてブレッシングレインの街の元となるオアシスを魔砲獣の群れから奪った時と同じく。
雷で迎撃された氷塊ミサイルはそのまま急速に溶解・蒸発し。
乱気流を生成して、空を覆う魔砲獣群を崩し始めたからよ!
「よっしゃ、いいよいいよ向氷ちゃん!」
「向氷さん、美葉ばっかりじゃなく! 私にもやらせなさい!」
「あら、積極的じゃない鉱美……なら遅れずについて来なさい! 凍結砲華!」
「ふん、誰が遅れるですってえ! クリティカルスキル、鋼鉄鋭弾!」
キシャアアア!
ええ、またまた面白いくらいに。
雷で迎撃された氷塊ミサイルが急速に溶解・蒸発し乱気流が生まれ、空を覆う魔砲獣群を更に更に崩して行くわ!
「よおし、よくやってくれたねえ向氷ちゃん! 一旦砲撃止めだ、見晴らしがよくなって来たからあたしの番だよ!」
ええ、その通りです利澤先輩!
さあ、早くやっちゃってください!
「待って神奈ちゃん! 何か砂嵐来てない?」
ああもう、あんたはいちいちうるさいわね火南香乃音!
今チャンスなんだから、やればいいのよ!
「さあ、行くよ……クリティカルスキル!」
「……黒影魔忍!」
「きゃあ!!」
「くっ……上星号、被弾!」
え……な、何ですって!?
「ははは、上星学園の連中! この前の借りは私もシャドウも……この魔砲獣たちも返したいって言ってんのさ!」
く……しまったわ!
ついつい上空の魔砲獣たちの群体にばかり目が行っていたけれど、いつの間にかシャドウの魔砲戦車はそれを抱える魔砲獣諸共地表スレスレを飛んで私たちに肉薄していたのね!
――待って神奈ちゃん! 何か砂嵐来てない?
そうよ……火南香乃音、今回ばかりは申し訳なかったわ!
あの時あんたが気づいたのは、その肉薄するシャドウたちを隠そうとサンドが起こしていた砂嵐のことだったのよ!
「くう……やってくれるじゃないかい!」
利澤先輩は、怒りの眼差しで周囲を見渡すわ。
そうね、今は悔しがっている場合じゃない!
気がついたら、私たちの周りは砂嵐に覆われてしまっているわ。
「く……上星号、退却開始! 砲撃は迫る敵攻撃防御目的のみ許可、今はとにかく撤退に専念せよ!」
機関車から通信で、風向井監視官の命令が下るわ。
悔しいけど……そうですね。
それしかないですよね……
「大丈夫! ここで周りに撃ちまくろうよ! それで道を切り拓いて前進しなきゃ、ここで引いたら!」
火南香乃音……駄目よそれじゃ!
私たちの力にも、限界はあるの。
ここはとにかく、撤退しか――
「クリティカルスキル……霧中地変!」
……え?
私たちが、そんな風に悩んでいた中。
不意に攻撃を放ったのは、私たちの上星号に並走していた中国私鉄学園の列車魔砲!
「く……シャドウ! これは」
「ああ……敵まで目眩し使って来たか!」
シャドウもサンドも、驚いているわ!
まあ、そうね。
これは、思いもかけない僥倖だわ。
さあ、戦いはまだまだこれからよ地下鉄道の皆さん――




