39 お茶会という名の作戦会議 Ⅲ その2
「失礼するよ」
「「「ユリウス兄様」」」
「勝手に入ってしまって申し訳ないね」
「誰からの入室許可もなくて、心配でつい入ってしまったんですよ」
「「「カミル兄様」」」
アルム兄様とシェラルージェのやりとりに気を取られ、誰ひとり部屋をノックされたことに気づかなかったようだ。
「失礼いたしました。ユリウス兄様、カミル兄様、お席へどうぞ」
「ああ、ありがとう、セリーナ」
セリーナの一声で全員が席につく。
シェラルージェはセリーナを手伝ってお茶の用意をしてからアルム兄様の隣の席についた。
「さて、全員が揃ったから、話を始めようか。──カミル」
ユリウス兄様に声をかけられたカミル兄様は持参した書類を手にする。
「はい、調査結果をお伝えします。今回の事件にダン子爵家が関わっていることは確実となりました。ですので、一度身柄を確保します。ただし、陛下と宰相の指示で秘密裏に行うことになりました」
「秘密裏ですか?」
「ええ、公にはまだ事件とは見なされていないので、ダン子爵を呼び出せないのです。そのため、誰にも知られないようにダン子爵家を包囲して身柄を確保することになります。そして、実行するのは私達に任されました」
『私達』との言葉に、全員に緊張が走る。
「陛下から実戦経験も必要だろうとのことでバロットナイト公爵の力添えを得ながら、私が今回の捕縛作戦を指揮することになった」
ユリウス兄様の言葉に全員の視線がユリウス兄様に集まる。
「間もなく新月の日がくるだろう。闇夜に乗じたほうが動きやすいと考え、決行は新月の日にした。実働部隊は私、カミル、アルム、ハリス、シェラとバロットナイト公爵家の影部隊だ」
「「シェラも!?」」
「シェーラ嬢もですか!?」
マリーとセリーナが驚きの声を上げ、ハリー様が少し非難するような声音で驚愕の声を上げた。
確かに女性であるシェラルージェが参加すれば足手まといになるのは確実である。
けれど、シェラルージェ自身は当たり前だという認識だった。
お父様についていつも登城していたのは私も要請されればいつでも現場に出る覚悟を持つためだった。
創術は国を護るために使う。国を護れば、そこに暮らす人達を護れるから。
そうやってお祖父様は国を護り、お父様が引き継いできた。だから、アルム兄様もシェラルージェもそれを引き継いでいく覚悟がある。
「シェラは今回の作戦にどうしても必要なんだ」
マリー達の剣幕にたじろぎながらも、ユリウス兄様は何とか納得してもらえるように説明しようとしていた。
それに助け船を出したのはアルム兄様だった。
「シェラのことは兄様がしっかりと護ってあげるから心配しないで自分の役割を全うするんだよ」
「はい、アルム兄様。ユリウス兄様、私は何をすればよろしいのですか?」
シェラルージェの兄であるアルムの肯定の言葉に、もう誰も反論出来なくなった。
だから、シェラルージェはユリウス兄様に自分の役割を聞く。
「シェラにはダン子爵家を囲い込む結界を創って欲しいんだ。誰も逃げ出せないように」
「かしこまりました」
「すまない。シェラを連れては行きたくなかったのだが、アルムにシェラの方が強力な結界を創れると言われてね」
「お気になさらないで下さい。私もランバルシア辺境伯の孫、ランバルシア子爵の娘ですから覚悟の上です」
「はは、頼もしいな。これは私達も負けられないね」
「そうですね」
何故かユリウス兄様とカミル兄様に苦笑いされてしまった。
「アルムにはシェラの護りと外と中の連絡を頼む」
「分かりました」
「ハリスには私とカミルと一緒にダン子爵家へ突入して、ダン子爵とクラリッツェ嬢、あとは怪しいと思われる者を捕縛してくれ」
「───かしこまりました」
アルム兄様は不敵な笑みを浮かべて、ハリー様は少し納得できないのか、苦いモノを飲み込んだかのように顔を顰めていた。




