17 水色の髪
今日はお兄様と一緒に伯爵家以下の集まりのお茶会に参加する。
そして、ハリー様が今日も護衛騎士としてついてきてくれることになっていた。
シェラルージェは婚約話を聞いてしまったため、ハリー様とどう接していいか分からず困っていた。
玄関を出るとハリー様は変わらず輝く笑顔を浮かべて立っていた。
「シェーラ嬢、おはようございます」
「ハリー様、おはようございます」
「本日は伯爵家以下のお茶会へ参加されると伺いました。ご一緒出来なくてとても残念です」
「………」
シェラルージェがどう答えればいいか悩んでいると、アルム兄様がハリー様に問いかけていた。
「それはハリスがシェラをエスコートするということ?」
「ええ、シェーラ嬢に社交に慣れるために練習相手を務めるとお約束しましたから」
「ああ、そういえばそんなことをシェラからも聞いているよ」
「ですから、侯爵家の身分で行けるところへは私がエスコートします」
「…まずは自分の身辺を綺麗にしてからじゃないかな?」
「何のことですか?」
「…もしかして、知らないの?」
アルム兄様の言葉に眉根を寄せて考え込んでいるハリー様に、大きなため息とつくとシェラルージェの手を取って馬車に乗り込む。
「アルム」
「家に帰って聞いてみるといいよ」
ハリー様の問いかけに、アルム兄様はそれだけを答えた。
アルム兄様がそれ以上は言わないことが分かったようで、諦めたように馬車の扉を閉めた。
馬車の中でシェラルージェはハリー様の様子からハリー様自身がまだ婚約話を知らないことに気がついた。
だから、婚約話を知ったハリー様から社交の練習相手を止めると言われることを覚悟することにした。
本日のお茶会の会場に着くと、人が沢山いた。
当たり前のことだけれど、シェラルージェは驚いてしまった。
ハリー様は会場の入り口辺りで警護するようで、到着するとすぐに離れていった。
アルム兄様について会場に入っていくと、お兄様を見つけた方達が近寄ってきた。
その方達は、前の夜会でもお会いした方達だったので、どうにか落ち着いて対応できた。
その方達と世間話という情報交換をしていたのだけれど、どうも男性同士でしか出来ない話があるようでアルム兄様は申し訳なさそうな顔ですぐに戻るからねと言い残し、他の方達も申し訳ない顔をして離れていった。
シェラルージェが1人になった途端、視線が突き刺さってきた。
でも、誰も近寄ってこなかった。
(あえて無視されている気がする)
遠巻きに視線を感じてシェラルージェは困った。
あの夜会以来の公のお茶会だったから、質問攻めや嫉妬からの嫌がらせでもされるのかと戦々恐々としていたのだけれど、拍子抜けだった。
でも、今日は様子見なだけだと思うと次のお茶会が憂鬱だった。
どうしようかと、とりあえずテーブルに置いてある一口サイズのお菓子をいただきながらお茶会に参加している人達を観察することにした。
大体が3、4人で集まっている中、一際異彩を放つ集団があるのに気づいた。
1人の令嬢を子息達が囲むように侍っていた。
(いや、そんなことはないはず。侍るなんて失礼よね)
なんとなくそう感じてしまったシェラルージェは慌てて心の中で否定した。
子息達に囲まれてその令嬢の顔はまったく見えなかったけれど、水色の髪の毛をしているのが見えた。
(もしかしてハリー様の好きな女性?)
気になって見つめていたシェラルージェに気づいたのか、囲んでいた子息の1人が振り返ってシェラルージェと目が合うと睨みつけてきた。
睨みつけられてびっくりしたシェラルージェは慌てて視線を逸らしたが、まだ見られているように感じて少し逃げるようにその場を離れることにした。




