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貴方の瞳に映りたい  作者: 蒼華
本編
10/63

9 気まずい視線


ガーデンの入り口辺りがザワザワと騒がしくなった。


見ると、王太子殿下とカミル兄様が歩いてきていた。

予定通り、執務の合間をぬって茶会に参加できたということなのだろう。


可能であれば、ユリウス兄様とカミル兄様とも顔合わせを済ませてしまうという計画であった。

ただし、公務をしているユリウス兄様が時間を捻出できるかどうかは分からなかったので、参加できないようならば、また新たに機会を設ける必要があった。


シェラルージェとしては予定通りの登場だったので冷静に待つことができたけれど、周りの侍女や近衛騎士達は突然のことに右往左往していた。


「失礼するよ」


カミル兄様を伴い近づいてきたユリウス兄様は爽やかな笑顔を向けてきた。


「ユリウス兄様」

「カミル兄様」


マリーとセリーナの呼び声に答えると、ユリウス兄様はマリーに笑いかけた。


「マリー、今日お茶会をしていると聞いてね、少しお邪魔をしてもいいかな?」

「ええ、よろしいですわ」

「カミルも一緒で構わないだろうか?」

「もちろんですわ」


そう答えてから、マリーは気づいたようにこちらに問いかけてきた。


「あ、セリーナ、シェラ、ユリウス兄様とカミルをご招待してもよろしいかしら」

「はい、ご一緒出来るのは嬉しいですわ」

「はい、光栄でございます」


セリーナの後に受諾の意思を示す。

侍女達が席を用意するのを待つ間、自己紹介の時間になった。


マリーは一度シェラルージェを見ると、ユリウス兄様に話しかけた。


「ユリウス兄様、こちらの方は、ランバルシア子爵家のシェラルージェさんと(おっしゃ)るの」

「お初にお目にかかります。ランバルシア子爵の娘シェラルージェと申します」

「初めまして、シェラルージェ嬢。私のことは知っているとは思うが王太子のユリウスです。妹と仲良くなってもらえたみたいでありがとう。よければ私のことはユリウスと呼んで欲しい」

「かしこまりました。ユリウス様」


ユリウス兄様にお辞儀をしたあと、カミル兄様の方へ向き直る。

すると、ユリウス兄様がマリーとカミル兄様を見た後、シェラルージェに話しかけた。


「そうだね。カミルのことは私が紹介した方がいいだろう。カミル、聞いていたね?」

「はい」

「うん、シェラルージェ嬢、この者はバロットナイト公爵の嫡男カミルだ。そちらに居るアリセリーナ嬢の兄でもある」

「お初にお目にかかります。ランバルシア子爵の娘シェラルージェと申します。どうぞ宜しくお願いいたします」

「初めまして、カミル・バロットナイトといいます。妹のセリーナとも仲良くなっていただけたようで、妹共々仲良くしてもらえたら嬉しいですね。私のこともカミルと呼んで下さい」

「かしこまりました。カミル様」


公の場でもユリウス兄様とカミル兄様には普通に話せるみたいだった。


(よかった)


ほっとしてユリウス兄様とカミル兄様に向かって微笑みかけた。

そうすると、ユリウス兄様とカミル兄様もよく出来たねというように笑いかけてくれた。

その二人の笑顔に、周りが一瞬ザワついた。


不思議に思って周りを見回すと、驚愕に見開いた目で控えていた侍女や近衛騎士が見つめていた。

その中にハリス様もいて、シェラルージェと目が合うと、険しい顔をして目を逸らされた。


ハリス様に目を逸らされた事にショックを受け呆然とする。


(なぜ…)


ザワついた中、コホンと咳払いが聞こえた。

音のした方を向くと、ユリウス兄様とカミル兄様が少し耳を赤くしていた。

そして、咳払いをしたのはカミル兄様だったようだ。


「まずはお茶をいただきませんか?」


カミル兄様の言葉に、私達も周りにいた侍女達も動き出した。


全員にお茶がゆきわたり、ユリウス兄様やマリーを中心に会話が進んでいく。

シェラルージェは先ほどのハリス様が気になりうまく会話に加われなかった。

しかし、他のみんなが会話を盛り上げていたので聞きながら頷くだけですんでいた。



目の前で会話が進んでいく中、なんだか今日のユリウス兄様とカミル兄様が楽しそうにみえた。

新しいおもちゃを見つけたときのような………。

疑問に思って思い切って尋ねてみた。


「ユリウス様もカミル様も楽しそうでございますね」

「そうだな。面白いものが見られたのでね」

「そうですね。想定外の面白さです」

「あら、ユリウス様もカミル兄様も気づいてらっしゃらなかったのですか?」

「なんだ、アリセリーナ嬢は知っていたのか? 早く教えてくれればよかったのに」

「本当に、楽しい事の独り占めなんて良くないよ?」

「見ていれば分かりますでしょ? 二人とも目が悪いだけですわ」

「はは、言われてしまったな」


ユリウス兄様が楽しげに笑った。

ただひとり会話に加わっていなかったマリーは拗ねて頬を膨らませている。


「もー、マリーにも分かるように言って」


ユリウス兄様に詰め寄るように体を乗り出していた。

私にも分かるように教えて欲しい。

マリーと一緒に頷いていると、「後でね」とマリーにだけユリウス兄様が言っていた。


私には教えてもらえないのね……。



そんなこんなで和やかに顔合わせのお茶会は無事終了することが出来た。

シェラルージェの胸に小さな棘を残して……。








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