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第7話



 戦いは熾烈を極めた。


 旅の間に培った力、技、知恵。

 その全てをぶつけてもなお揺るぎもしない勇者はひたすら強大であった。


 だが、我らはこの旅で知ったのだ。

 絶対的な強者など、この世には存在しないという事を。


 とるに足らない生命である我等でも、力をつけ、技術を磨き、知恵を用いれば強者を下しえるのだと知ったのだ。


 我らは己に持てる限界以上の力を引き出し、勇者にぶつかっていった。


「「「コケコケコケ――ッ!」」」


 |命の恵み取り込みしついばみ行動ヘイストアタック


「「「コケココ――っ!」」」


 |残像錯覚させし似た者同士の連係アサルト・パーティーダンス


「「「コォォォォ、コケコッコォォォ!」」」


 |陽の光返し白銀の聖なる翼の羽ばたき《サンシャイン・カウンター》


 これまでに覚えたあらゆる技を駆使し、我らは戦い続けた。


 そしてあの日見上げる事しか出来なかった遥か高みに、追いついた我らはトドメの一撃を放った。


「「「コ――――ケッ、コッコォォォ!」」」


 報われし魂の嘆きデスソウル・コーリング


 コッココの無念が具現化し、怨霊の集団と共に勇者を全方位から攻撃しかける。

 ついばみ、蹴飛ばし、はたき攻撃。

 ありとあらゆるレベル99の攻撃を、集団で囲うように。


 そして小一時間にも及んだ死闘の末、我らは勇者に勝利した。

 喜びはない。

 だが、達成感はあった。


 我らは成し得たのだ。

 これでようやく、あの日亡くなった者達の墓へ足を向けられる。


 その後に、彼等が散々馬鹿にしていた、ニワトリ風情の取るに足らない家畜などに負けた勇者達の求心力は低下したが、我らは特に気にはしなかった。


 我らが復讐の行動に出てそれが叶った時に、周囲が迷惑をこうむること自体はすでに予期していた頃だからだ。


 重ね重ね言うが我らは悪党ではない。

 自分勝手な暴力を振り回して、命を遊び半分に傷つける様な勇者と同じような存在になるともりはなかった。


 だから。


 それから数日。

 我らは訪れた魔王城を一瞥して、ナインフォードお嬢様へ頭を下げた。


 間違った勇者の代わりに魔王を倒して、我らは我らの行動の責任を取ろうと思ったのだ。


 ただの村娘であった少女が、魔王討伐の義務もないお嬢様が巻き込まれる事などないのである。


 だが、お嬢様は我らと向かい合ってであはなく、隣に並び立ってくださった。


「水臭いよコッココちゃん、私達は仲間じゃない。敵がどんなに強くても関係ないって事、コッココちゃん達が教えてくれたんだよ。私は、これまでに私を支えて来てくれた皆の為に頑張りたい。だから一緒に行こう、ね?」


 そう。

 そうだった。


 我らはお嬢様に引き上げられた存在ではなく対等な仲間。

 であれば、危ない目に遭わせるからといって、置いていく行動は間違ったものなのだろう。


「きっと私達なら魔王だって倒せるよ。なんたって、魔王を倒すつもりの勇者すら倒したコッココとテイマーなんだから」


 我らは声をそろえて、そのラインフォードお嬢様の信頼の声に応えた。


「「「コケッ!」」」


 こうしてレベル99となった我らコッココは勇者への復讐を見事果たし、そして後に魔王を倒した事で、長く後の世まで「史上最弱の復讐者であり勇者」として、「不可能を可能にする生物の象徴として」我らが種族名を残す事になったのだった。



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