47 道中
突然のすてきな出会いに僕が少し幸せ気分を味わっていると、驚くことに今度はおばさんが思ってもいなかったお誘いをしてきた。
「ねえ、ここで立ち話もなんだし、とりあえず私達の家にむかいましょうか? 学校には私からクリス君が具合が悪くて私達のところで休んでいるって伝えるわ。そして気分が良くなり次第に学校へもどるって言いましょう。いいでしょクリス君、家へ来てほしいわ。そしてポールに連絡してできるだけ早く来てもらうわ。」
僕はこの町に引っ越してきてからというもの家と学校の往復だけのつまらない、というか恐怖の毎日を過ごしていたので、おばさんが僕を招待してくれたことはとても嬉しかった。なんだかまた普通の日常生活に戻れたんだと少し実感することができた。それにしてもいったいポールって誰なんだろう? 僕はまずはおばさんの招待をありがたく受けて、それからポールという人の事を聞こうと思った。
「はい、ありがとうございます。おばさん達のところにお邪魔させて頂くのはとても嬉しいです、どうせ僕には行く所はないし……、実は僕のママ今病院にいるんです。急に倒れてしまって入院していて……、今もまだ意識がないんです。でも医者も看護師さんもママの顔色がいいから大丈夫だって。だからママの事は心配しないでください。ところで一体そのポールさんって誰なんですか?」
おばさんは僕の腰に手を当てて歩くように合図した。そして僕達は歩きながら会話を続けた。
「そうね、勝手に話を進めてしまってごめんなさいね。ポールは私の昔からの友人よ。警察官なのよ、さっきリサが警察を信じないと言っておきながらなんだけどもね。でもポールに個人的に頼めば警察署へ行く必要もなくなるし、なによりも私もリサもポールをとても信頼しているのよ。それに私達で個人的に書類を所有しておけば警察署ではなんの細工もできないわ。」
へえ、リサ達の知り合いに警察官がいるなんて僕はものすごくついているな、個人的に頼むのは確かにとてもいい考えだ。こんなに調子良く事が進むなんて、僕はこの2人との出会いに再度感謝した。
「ママ、学校へは今連絡したほうがいいわよ。そうしないとクリスを追ってアームストロングが現れかねないわ。」
そう言うリサにおばさんは頷き携帯電話を取り出した。おばさんが電話を始めると僕もリサも黙ってしまった。そしておばさんが学校から許可をとって携帯を鞄に戻した後はなんだか一区切りついたような、何とも言えない安心感に僕は包まれた。リサはいろいろな表情を持った明るい女の子だけれども、もう一つ彼女の特徴を僕はこの道中に見つけた。リサはとんでもないお喋りで、息を付くことすら忘れたようにしゃべり続けていたのだ。そして僕とおばさんはというと徹底して聞き役にまわされてしまったのだった。




