M二三 真渡園兎萌 ~私の生きる道~
どんなにシリアスっぽいふいんき(なぜか変換できない)でも、本作はお気楽極楽悪役令嬢ものにございます~☆
シクヨロ!(>ω・)b
─────母がそう言うのなら、もう、どうしようもない。
………………………………………………どうしようもない?
“どうか、幸せになってほしい。自分は、どんなことになってもいいから────”
兎萌の心の中で、真理亜の言葉が思い出された。
あの、兎萌を想っての、純粋な願い──────────。
従姉は、命を懸けて、自分を救ってくれたではないか。
それなのに、自分は“どうしようもない”と、諦めるのか?
────────────────────────────それは、違う。
そんなことは、許されない。
そんなことは、自分が、許さない。
許したくない…………………!
「────おっ、おねえ、おねえさまはっ!」
兎萌は、涙で視界を滲ませ、嗚咽まみれになりながらも、必死に、声を上げた。
「おねえさまはっ、いのちがけで、わっ、わたしに、まりょくを、
つ、つかえるようにしてっ、してくれましたっ………!」
「兎萌────」
そんな兎萌に驚いたあと、美摩は、言葉の続きを、じっと待つ。
「……だっ、だからっ、こ、こんどは、わ、わたし、わたしがっ! わたしが、
おねえさまをっ、おねえさまを、たすけたいっ! たすけられるように、
なりたいっ! なりたいですっ!」
「っ……!」
兎萌の決意に満ちた言葉に、今度は、美摩が視界を滲ませることになった。
美摩は、かつての、姉を想う自分の姿を、幼い我が子に重ねる。
「そう……そこまで真理亜のことを大切に想っているのなら─────────。
教えなければならないわね。あの子が背負っている、〈運命〉のことを…………」
「うんめい……お、おねえさまの──────?」
「ええ。心して聴きなさい、兎萌………………」
そうして、美摩は、語りだした。
真理亜が、おそらくは、〈聖女〉であること。
そして、〈聖女〉は、人類に滅びをもたらさんとする強大な〈禍威魔〉と戦い、
命と引き換えにその〈魔〉を討ち果たす〈運命〉にあることを────────。
話を聴き終えた兎萌は、あまりの衝撃に、全身を戦慄かせる。
「お、おねえさまが、そんな、そんな…………………」
「───────真理亜自身も、その〈運命〉を、知っているわ………その上で、
私と、兎萌、あなたや、まだ出会ってもいない子たちのことを、絶対に守ろうと、
そう心に決めているのよ、真理亜は……………」
うつむきながら話す母の言葉に、兎萌は、またも、強い衝撃を受け、
眩暈すら覚えてしまった。
そんな〈運命〉を知っているというのに、あのように、優しい微笑を
浮かべて、生きていられるのか。
自分以外の誰かのために、あれほどの努力と精進を重ねていけるのか。
今さらながらに、従姉は、途方もない高みにあり、途轍もなく
大きな存在なのだと、思い知る。
「兎萌………もう一度、訊くわ。─────真理亜のそばで生きていくか、
真理亜とは別れて、自分の人生を生きるか…………覚悟して、選びなさい」
美摩は、再び、兎萌の目を見つめて、選択を促した。
「真理亜とは、別の生きる道を選んでも─────母は、決して、あなたを
責めたりしません」
またしても美摩は、半年前では考えられぬ、我が子を慈しむ声で、
兎萌に、選択の余地を与えてくる。
「………わ、わたしは──────────私は、お姉さまと一緒に、
生きていきます……っ」
兎萌は、震えながらも、しっかりと、さらなる決意の言葉を口にした。
「わっ、私は、お姉さまと一緒に生きていけるなら、し、幸せになれなくても
いいっ。幸せなんて、いらないっ! わたしっ、私はっ、お姉さまの邪魔に
ならないように、つっ、強くっ、強くなります! お姉さまを守れるくらいの、
強い…強い〈退魔法師〉に、なりますっ!」
「────私の言ったことを、ちゃんとわかっているの? あなたが言う強さを、
あなたが手に入れるには、これから、死ぬほどの努力を、ずっと続けなくては
ならない………。あなたが泣いて、『やめて』とわめき……たとえ、
倒れたとしても、私は、あなたを無理矢理立たせて、
苦しい思いをさせ続けるわ──────それでも、いいのね?」
母としての優しさのこもった、最後の確認。
兎萌は、ためらわずに、うなずいてみせる。
「はい。お母さま───────私は、お姉さまのためなら、どんなことでも
やります……!」
「兎萌────っ」
美摩は、その兎萌の返事に胸が詰まり、涙をこぼして、我が子の体を抱き締めた。
「よく言ったわ、兎萌……! そうよ、強くなりなさい────! 強くなって、
私とあなたで、真理亜の〈運命〉を変えるのよ……! ふたりで、真理亜の命を、
救うの! いいわね、兎萌─────!」
「……っ! はいっ! お母さま……っ!」
母娘は、想いをひとつにし、硬く抱きしめ合う。
その光景は、半年前ではありえなかった、家族の愛にあふれたものであった。
心の欠けていた部分が、互いに埋め直されていく。
今、母娘の絆が、ひとつの決意を以て、改めて、
結び直されたのだ─────────────────────。
………………………………美摩と兎萌が、強い決意を固めているその一方。
真理亜は、どうしているかというと────────────────────。
もぉ~い~くつ寝~る~とぉ~♪ HA・ZU・KA・SHI・ME~♪
SHOJOを散らして~ANALU責め~♪
悔しいけれどぉ~感じちゃう~♪
はぁ~やぁ~く来ぉ~い来ぉ~い♪ 竿~のぉ~お爺~♪
最低な替え歌フレーズを脳内で響かせながら、『お正月の歌』を、
鼻で歌っていたりした。
「ご機嫌がよろしいようですね、真理亜お嬢様。珍しく、鼻歌なんて」
くすりと笑って、叶穂が真理亜に指摘する。
言われた真理亜は、頬を赤くした。
「いやだ。鼻歌になっていたかしら。恥ずかしいわ……美摩お姉様には、内緒よ?
はしたない、って、叱られてしまうわ」
「はい、内緒にしておきますね」
叶穂は、くすくすと笑い、うなずいてみせる。
内心でも、初めて真理亜の子供らしい一面を見れたようで、喜色満面であった。
「それにしても『お正月の歌』は、ちょっと、気が早いのではないでしょうか?」
現在はまだ、九月の下旬である。
『もういくつ寝ると』という時節ではない。
「そうね……気が早いけれど、このお屋敷に来て、毎日が楽しいから、つい、
早く来年になって、小学生になれないかな、って、そう思っちゃったの。
きっと、もっと楽しいことが待ってるに違いないから」
真理亜は、そう言って、はにかんだ笑みを浮かべた。
「……左様でございますか──────」
真理亜の言葉に、叶穂の表情は一転、暗くなってしまう。
勉強に習い事、〈退魔法師〉になるための訓練漬けの日々が、楽しい。
叶穂は、そう言ってしまえる真理亜に敬意を覚えると同時に、
不憫に思ってしまう気持ちを、抑えられなかった。
〈聖女〉であるとはいえ、真理亜の生活は、あまりにも禁欲的すぎる。
真渡園家の品格にふさわしい令嬢となるべく、施される教育と訓練の時間は、
一日の大半を占めると言っていいほどだった。
自由になれる時間は、ほとんどない。
それなのに、真理亜の口から、泣き言や、わがままの言葉ひとつ、
出た試しがないのである。
むしろ、さらなる修行を望んでいる節すらあった。
そんな真理亜に、叶穂は、畏敬の念を抱きながら、自分の幼少期を振り返る。
自分も、母である漱祗と親戚たちから厳しく育てられてきたが、真理亜のように、
ひたすらおのれを研磨するがごとき意欲を持って、日々を過ごしてはいなかった。
幼い真理亜の、〈聖女〉と呼ばれるに値する清廉な生き方に間近で接し、
叶穂は、過去の、境遇に腐っていた自分と比べ、恥じ入ってしまうほどである。
「──────きっと、小学生になれば、新しい出会いがございますよ。
素敵なご学友が、たくさんできますとも」
叶穂は、せめて小学生生活では、真理亜が今のように、幼い子供らしく
笑える日々を送れますように、と願いをこめた言葉を口にした。
「………ええ、素敵な出会いはあるわ。絶対に」
なんたって、ラスボスのひとりが、やってくるからのう、ガハハハハハ!
などと、自分を陵辱する竿役が到来することを知っているため、心中では、
それはもうウキウキの真理亜である。
叶穂も、まさか真理亜が、下衆な悪漢による陵辱を、胸をときめかせて
待ち望んでいるとは、想像すらできようはずもない。
真理亜という幼女の、表面上の姿は、未来に期待を膨らませて微笑を浮かべる
美幼女なのだから、まったく始末に負えないことである。
そもそも、真理亜が『清廉な生き方をしている』などとは、
とんでもない勘違いであった。
厳しい令嬢教育と、〈退魔法師〉の訓練による過密スケジュールがもたらす
心身負荷は、ドMにとって、丁度良いご馳走に他ならない。
ほー、いいじゃないか、こういうのでいいんだよ、こういうので。
……そんな、『昼食をちょっくらいただくか』、くらいの感覚で、
日々の修行をエンジョイしている。
そんな真理亜のあずかり知らぬところで、兎萌は覚悟完了した修羅と化し、
最強への道RTAモードに入ってしまった。
真理亜は、目論見通り、見事自分が破滅した時のため、兎萌には
最強の〈退魔法師〉になっていてほしいと思っていたので、願ったり叶ったりの
進行状態ではある。
が、当然ながら、肝心の真理亜は、この事態に気づいていない。
自分のせいで、真渡園母娘の未来が、またもあらぬ方向へ加速したとは
露知らず、いずれ現れるであろう、竿爺に想いを馳せていた。
(お爺様ぁ~! 早く私をOKASHIにいらっしゃ~い!)
ウキウキHAPPYな真理亜は、そんなことまで心の中で叫んでいたりする。
誠に、呑気なこと甚だしい変態ドMであった。
──────────────────南無三!
真理亜の替え歌のためだけに、じっくり溜めました~☆
(人の心とかないんか?)




