M〇一 ドM死す!破滅の未来にレディ・ゴー!
久々の投稿になります!大好きな悪役令嬢モノです!
“破滅フラグ・勘違い・みんなハッピー☆”の、王道の悪役令嬢モノを
目指して書きました! よろしくお願いします!
男は、ドMであった。
さらに言えば、倒錯した願望を持つ、
“超”のつく、手のつけられない変態ドMである。
その願望が、これまた複雑かつ具体的で、酷い。
【美少女になって、美少女と恋人同士になり、深い仲に(意味深)なる直前で
下衆で醜悪な悪者に恋人の眼前でNTRて処女を散らし、
そののち浅ましく肉欲に溺れていたことを恋人から罵倒され、
一方的に絶縁されたあげく妊娠が発覚し、家族からも糾弾され、追放、流産、
天涯孤独の中で死ぬ】
────という、ひと言でいえば、破滅願望であった。
だが、染色体XYの身体の時点で、実現不可能な願望である。
ゆえに、男は、おのれの脳内で、願望を充足することにした。
言ってしまえば、妄想乙。
男が生まれた国は、アニメ・漫画・ゲーム大国、日本。
この国には、男の妄想を捗らせ、想像を補完してくれるアイテムには、
事欠かなかった。
自分の嗜好に合致する成人向けゲーム・漫画と、成人向けの薄い本の数々を、
日々、探求し続けたのである。
表現の自由、万歳!と、叫んだとか、叫ばなかったとか。
………男は、容姿と境遇に恵まれなかったので、幼い頃より、周囲から迫害され、
虐待され続けてきた。
しかし、男はドM、天性の被虐性癖者だったので、常にご褒美状態。
『もっと頂戴!!! MOTTO!!! MOTTO!!!』
どんなに心身を虐められても、そんなSKILL精神全開であったから、
人生的には、無敵状態だった。
幼稚園からはじまり、小・中・高校と虐めを受け続けながらも
表向き黙って耐え忍び、内心は興奮・快感・大絶頂の日々を
じっくりと楽しんだりし、大学受験の艱難辛苦も
『ナイス・プレゼント!』とばかりに進んで努力。
難関大学を志望し、無駄なまでの苦しい勉学に励んだ結果、
見事、第一志望校に、奨学金を得られるほどの優秀な成績で合格。
大学時代も、容姿が原因で同期生はおろか全学年の生徒から誹謗中傷、
嘲笑冷笑を受け、つまはじきにされ、孤独な四年間を過ごすも、
気分は楽園人生のまま卒業。
大企業とは名ばかりのブラック企業に勤め、職場の上司からはパワハラ、
女性同僚たちからはモラハラを受ける毎日が訪れても、
『ヒャッハー!!! ボーナス・ステージだぜ!!!』
と、心の中で快哉を叫びつつ、存分に被虐を堪能する始末である。
誰に迷惑をかけるでもなく、ひとり天国。
需要と供給の一致した、ある意味、人生イージー・モード。
が、その究極的円環の理も、唐突に、終焉を迎えた。
男の肉体が、限界を超えたのである。
無理で無茶な仕事量を、今日も今日とて、深夜サービス残業で楽しんでいたところ、
男の胸に、かつてない激痛が奔った。
極度の睡眠不足と、不健全な労働時間が原因の不摂生な食生活、さらに、
度を超えた過労による、急性心筋梗塞であった。
深夜の会社で、ひとり孤独に仕事をしていた男には、可及的速やかに、
助けを呼んでくれる人間がいない。
『やだ……スゴ……♡ こんなの、はじめて────!!!!!!』
致命的な病撃に襲われても、そんな至福に満たされながら、
男は、死んだ。
享年、三十五歳。
その死に顔は、不幸な突然死に遭ったとは思えぬほど、
幸福そうな笑顔だった………………。
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男の意識が、明瞭となる。
果てしない青空の下、信じられないほど透き通った湖。
その水面の上に、男は、立っていた。
「────ハハ~ン………察するに、俺、死んだな?」
不可解で不思議な現在の状況を分析したあと、
まるで、他人事のようにつぶやく男。
「最期のアレ、あの一撃が効いたな……」
まるで、ひとり、グルメを楽しむ独身男のようなコメントをもらすその口元には、
笑みが浮かんでいる。
そう、男は、ご馳走の余韻を味わうかのように、
最期の激痛の感覚を反芻していたのであった。
変態は、死んでも治らないようである。
そんな男の前に、激しい光が生じた。
「うおっ、まぶしっ」
男は反射的に手をかざしたが、その直後に、光は、その輝きを収めていく。
男が、光のほうへ目を向け直すと、その宙空には、いつのまにやら、
ウェーブがかった金色の長い髪と、黄金の瞳を持った美しい女性が、
浮かんでいた。
類い希なボディスタイルは、清楚な白いワンピースで包まれ、
どうやらその背には、大きな、白い翼が生えているようである。
“はじめまして。私は───”
「女神様ですね!? 俺を転生させてくれる!」
“えっ。あっ、はい、そうなんですけど……り、理解が早いですね?”
「ラノベ漫画アニメ大国、日本で生きてましたから!」
ガッハッハッ!、と、嬉しそうに笑う男。
率直に言って、〈女神〉を前に不敬な態度なのだが、〈女神〉は男の言動に
ドン引きはしていても、怒りはしなかった。
〈女神〉だけに、寛大である。
というか、この〈女神〉、人間の〈魂〉転生手配業務は、実は、
この男が初めてなのであった。
先輩〈女神〉らがこなしてきているこのお仕事、
やっと私もできるようになったんだから、転生者がしっかり幸せになれるよう、
失敗なく手配しなきゃ、などと、並々ならぬ使命感に燃えていたりする。
それなのに、初めて相手にする人間が、どうしようもない変態ドMであったから、
〈女神〉であるというのに、不幸と言う他ない。
が、生真面目な〈女神〉は、マニュアルどおり、
しっかりと業務を遂行しようと、口を開きだした。
“えーっと……私の名前は、ルキミステル。あ、貴方は、不幸な生い立ち、
境遇にもめげず、また、有徳堅実、かつ勤勉に、最期まで生き抜きました。
そこで───”
「で、ルキミステル様。俺、転生するなら、マイ・ベスト・ゲームである
『愛しき花は門に咲く』の悪役令嬢にTS転生したいンすケド」
“…って、ちゃんと聞いて!? 〈女神〉の話を!?”
「やだなー。ちゃんと聞いてますって。よーするに、きっちり真面目に
人生を生き抜いたから、ご褒美に俺を好きな世界に転生させてくれる、
ってハナシでしょ?」
“ま、まだそこまで言ってません!”
「え!? 違うんですか!?」
“え、いや、違わなくはない、ですけれど……”
「じゃーい~じゃないですか。俺のほうは、準備万端、
チキチキBANG☆BANGです!
さっ! いっちょう、転生を、サクッとお願い致します!!!」
男は、綺麗に、頭を九十度下げて、深い礼をしてみせる。
〈女神〉ルキミステルは、釈然としないものを感じながらも、
素直に頭を下げられては、職務を遂行しないわけにはいかない。
男の言ったゲームタイトルの世界を、
マルチバース〈女神〉検索してみるのだった。
“───ちょっ!? 貴方、この世界、アダルトゲームじゃない!?
しかも、このゲーム世界の悪役令嬢、どんなルートを辿っても、
もの凄く悲惨な運命に遭う女の子……!?
非業の死を迎えるのが基本とか、う、うわ、わぁぁぁ………”
ルキミステルは、検索結果である、転生先の人物が辿り着く未来の数々を視て、
またもドン引きした。
男は、いい笑顔を、ルキミステルに向ける。
「だがそれがいい!」
“えぇ……”
そんな戦国時代の快男児みたいに断言されても……と、
ルキミステルは、重ねてドン引きだ。
けれども、引いてばかりでは、商売上がったり。
新人だけど、〈女神〉の名にかけて、お仕事がんばんなきゃ、
と、健気にも職務の続行を決意する。
コホン、と、咳払いして、背筋をのばし直し、キリッと、威厳顔でキメ。
“………では、貴方を、望んだ世界の、望んだ女性に、転生させます。
その際に、転生先で、助けとなる特典を───”
「あっ、そういうのいいです。チートで無双とか、あんま興味ないんで」
“えっ”
男は、異世界転生にもれなくついてくる、チートな特典ボーナスを、
説明前に断った。
なにせ、男はドM。
前世の人生はイージー・モード(※男的には。実際には超ハード・モード)
だったので、来世は、超絶高難度のウルトラナイトメア・ヘル・モードを
希望している。
「確か、あの悪役令嬢、元々のスペックだけは、無駄に高かった記憶ありますし、
戦闘での敗北要素を減らされると、ちょぉ~っと困るンですよねェ~」
“こ、困ることはないでしょうっ!?”
「いや、困ります。本当に」
ルキミステルのツッコミに、男は、真顔で返した。
ううっ、と、ルキミステルは、言葉に詰まる。
困惑しつつ、わずかの間に熟考したあと、男に、うなずいてみせた。
“───わかりました。では、特典などは、特になし、ということで”
「ありがとうございます!」
ルキミステルの返事に、男が、再び、深く頭を下げる。
けれど、ルキミステルは、男の希望を聞き入れるわけにはいかなかった。
彼女の〈女神〉としての仕事は、転生者に、来世で幸せな人生を
送れるよう、祝福を与えることである。
『転生者の希望で、早死にしそうなシチュを
手配するしかありませんでした☆テヘッ』
なんて、〈女神〉の沽券に関わる下手な仕事など、できようはずがない。
なので、ルキミステルは、男に内緒で、転生先の肉体に内包される魔力量を、
特典ボーナスとして、百倍にブースト掛けておくことにした。
転生先の悪役令嬢は、基から飛び抜けて高い魔力を持っていることだし、
どーせ自分じゃ比較できっこないから、チート魔力つけてもバレやせんだろう、
と見越してのことである。
“それでは、貴方の転生を、開始します。来世でも、どうか、その魂が
善良で、健やかなまであらんことを─────”
「はい!!! ありがとうございます!!! いってきます!!!」
最後まで話を聞ーとらんな、コイツ。
ルキミステルは、そう思ったが、それ以上は何も言わず、男の魂を、
男が希望した世界、希望した存在へと、転生させた。
………これが、転生先の世界史上、最強の〈聖女〉爆誕の顛末になろうとは、
転生させた〈女神〉でも、予想できぬことではあったのである。
っぱ、悪役令嬢主人公は、最強〈聖女〉になるのが王道だよねー☆
と、ゆーわけで、主人公は、最強です(^ω^)




