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聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第4章:聖域争奪戦・究極の有給防衛線(前編)

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第七話 アルベルトの「身代わり」志願

翌朝。広域アロマ爆弾によって、領民諸共「強制終了」させられたフェルゼン領は、近年稀に見る清々しい朝を迎えていた。


しかし、当の紬は自宅のソファでぐったりとしていた。広範囲に渡る魔力拡散は、いくら無自覚な聖女パワーがあるとはいえ、前世で徹夜明けに無理やりプレゼン資料を完成させた時のような、特有の「脳の芯が痺れるような疲労」を彼女にもたらしていたのだ。


そこへ、音もなく(カイルの指導により、心音すら殺して)アルベルトたちが現れた。


「……紬。済まない、すべては私の未熟さが招いた事態だ」


アルベルトは、かつてないほどツヤツヤした肌と澄んだ銀色の瞳で、紬の前に跪いた。三日間の禁断症状と、そこからの「爆睡」を経て、彼のコンディションは絶好調を超えて神々しさすら放っている。


「お前をこれほどまでに疲弊させるとは……。もう、お前一人の魔力に頼るわけにはいかない。紬、私の魔力をお前に連結しろ。お前が安眠を守るために消費するエネルギーは、すべてこの私が肩代わりする」


アルベルトの言葉は重く、そして切実だった。自分の魔力という「命の源」を紬に預け、彼女のバッテリーになろうという、騎士としては最大級の献身……あるいは、運命共同体への誘いである。


カイルも横で真面目な顔をして頷いている。


「閣下のおっしゃる通りです。紬様の疲労は、我ら騎士団全体の損失。閣下を電源バッテリーとして、紬様が最小限の労力で世界を寝かしつけられるシステムを構築すべきかと」


「……ちょっと、待ちなさい」


紬は重い瞼を上げ、跪く美形公爵を冷めた目で見た。


「肩代わりとか、魔力連結とか、そういう重苦しい契約はいいわ。……それより、あんたのその余りまくってる魔力、もっと建設的なことに使いなさいよ」


「建設的なこと……? 国防か? それとも外敵の殲滅か?」


「違うわよ。……除湿よ、除湿」


紬は、家の隅にある湿気た石壁を指差した。


「この時期、湿気が多いとダニが繁殖するし、シーツがジメジメして寝心地が悪いのよ。あんたのその強力な魔力で、この家全体の湿度を常に50%に保ちなさい。あと、こっちの釜の温度を一定に保って、蒸しタオル用の温水も作って」


「……除湿……温水……」


アルベルトは絶句した。 一国を滅ぼしかねない強大な魔力を、シーツの乾燥とタオル温めに使えというのだ。しかし、紬の「疲れた顔」を前にして、彼に拒否権などあるはずもなかった。


「……承知した。これより私は、お前の『安眠』を阻害する湿気と冷気のすべてを殲滅する」


「殲滅とか言わなくていいから、適温でお願いね」


こうして、かつて「死神」と恐れられた公爵は、紬の家で24時間稼働する「全自動・高機能空気清浄除湿機(兼・給湯器)」へとジョブチェンジした。


それを傍らで見ていたエレノアが、感極まったように扇子をw握りしめる。


「素晴らしいですわ、アルベルト様! 紬様のためにインフラと化すそのお姿……わたくしも負けていられませんわ! わたくしは、紬様の寝具を毎日最高級の香草で燻し、無菌状態を保つ『清掃部隊』を組織いたしますわ!」


紬のボロ家は、もはや住居ではなく、高貴な人々による「至高のメンテナンス・プラント」へと変貌を遂げようとしていた。

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