episode Final 魔法があれば――
集会から一週間が経ち、一応辞退者が出てくる可能性も考えて辞退申請は今も受け付けているが今のところ一人も出てきていない。ありがたい話だ。
クルーのことはなんとかなりそうだが、俺達には宇宙船カラートに保管されていた宇宙船の再構築と同時に、重要な仕事が残っていた。
ガルガンチュアの調査である。
俺達エシクンクルーは、アケルリース空港がまだ復旧していない為、パーサヴィアランスに乗って現地に辿り着いた。
ガルガンチュアによって破壊された街の瓦礫はある程度撤去され、移動に支障はなくなったが、殺風景となっていて嫌でも被害の大きさを実感する。
「こうして地上から眺めると巨大さが際立つな……こんなのを目の前にして戦ってたの? 君ら」
「そう……ですね。こうして見るとすっごい威圧感ですよね。なんで戦えてたんでしょう?」
「いや、聞かれても……」
隣に立つレン君と共に巨大なガルガンチュアを見上げながらそんな会話をする。
「今のところわかっていることってあるんですか?」
「わかっていることは消化器官に該当する臓器が見当たらないことと筋肉繊維や肌がカーボン繊維で出来ていたこと、生殖器がないこと、あとは血液が魔力の液晶だったこと……かな?」
レン君の質問に答える為、タブレットを取り出してわかっていることを羅列する。
「消化器官がないって、やっぱり魔力で生きてたんですね。しかも体組織がカーボンって……っていうか魔力が液晶ってなんですか?」
「液晶……結晶状態のはずなのに液状のものをそう呼ぶんだよ。なんでそれに早く気が付かなかったのか、すごく悔しいけど」
液晶状態の魔力があれば色々応用できそうだ。
ガルガンチュアの調査が進めば安定して作ることもできるだろう。
「へぇ……それくらいですか?」
「そうだな……あとはガルガンチュアのメイン核だけど、構造が量子コンピュータに近いってことくらいかな」
「量子コンピュータと?」
魔力結晶……所謂魔石の中で回路が構築されていて、そこで思考と判断を下していたようだ。
そして、魔力も取り出すことができる優れ物。
魔石は魔力を消費すればする程、氷が溶けていくように、小さくなって消えていくが、こいつはそうならない。
その辺りはMCにすごく似ている。
これもどうにか再現できないもんかな?
「すごいですね。量子コンピュータと構造が近いって奇跡じゃないですか?」
「ん? なんで?」
なんて考えていた時、レン君がポロリと疑問を口にした。
「だって、量子コンピュータって人間が考えたものですよね? それに近いものが自然にできるってすごくないですか?」
「……確かに」
脳と同じか近い構造だったらまだ自然にできてもおかしくないが、コンピュータに近い構造というのは確かに不思議だ。
ということは人工的に生み出した?
いや、HALからはそんな情報は聞いていない。
隠していたとしても、カラート様の日記にも突然現れたように書かれていたから間違いないだろう。
じゃあやっぱり自然に生まれた?
そっちの方が違和感があるな……
思考の海に入り込んでいた俺を気遣ってかレン君は少しの間ガルガンチュアをぼうっと見上げながら待ってくれていた。
その時だった。レン君の口からある単語が飛び出した。
「なんでこんな生物を作ったんでしょうね。神様は」
「……は?」
俺は思考を切り、レン君に聞き返した。
聞き返されたレン君は失言だったと思ったのか慌てて言い繕ってくる。
「いや! カラート様が作ったなんて思ってませんよ!? ほら、言葉のあやです! 前世でもあったじゃないですか、神様はなんでこんな形にしたんだろうって思う生き物って!!」
その言葉を聞いて、俺に電流が走った。
そうだ、なんでそんな簡単なことに気が付かなかったんだ。
HALがスリープモードに入ったのは、カラート様とカラート様が生み出した人類がリラウレア大陸東側に避難してきて25年後。
西側をどれほど発展させていたのかまではまだわかっていないが、何千年も前にカラート様がエクセルへやってきたことは宇宙船カラートの年代測定で判明している。
それほどの時間を過ごした……いや、過ごせる人間であったカラート様が東側に来てから25年後にお隠れになった。
何千年も生きれる人にとって25年は長いのか短いのかは想像でしか語れないが、短い方になるのではないか?
じゃあなんでそんなに急いでお隠れに……高次元に上がる必要があった?
地球を救うにも、ガルガンチュアを討伐した後でもいいはずなのに、だ。
では何故? この疑問に俺は一つの答えを見出した。
カラート様は見た……或いは感じたんだ。
――人類に仇なす上位存在に。
◆
「ガルガンチュアは人類を滅ぼす為に生まれたぁ!? そんなのありかよ!?」
というわけで意見を仰ぐべく、いつもの幼馴染メンバーに思い浮かんだことを話した。
クリスの言う通り、俺もそんなのあり? とは思う。
「荒唐無稽な話だと思うけど……腑に落ちるのよねぇ」
「最初は人類を優先して屠っていた理由は自身の最大の障害となるからと思っていましたけど、ガルガンチュアとの会話でそうではないことはわかっていましたし、今回の調査結果から考えるとガルガンチュアは自然発生した生物ではなく、造られた存在である。それなら一定の説明は付きそうですわ」
「人類を抹殺するように意識を植え付けてね。ただそうなると問題は、その上位存在ですね。何故人類を滅ぼそうとしているんでしょう?」
クラリス、ユリアは納得できる理由が出てきたことに満足気だが、アイリスの言ったことが本題だ。
人類抹殺の理由がわからない。
「人類は地球にとってガンのようなもの……って前世でも言われてたからなぁ。もしかしたらそれでかもしれない」
「ガン……ですか。言い得て妙ですね」
地上の環境を、海を、果ては地球の気候そのものを長い年月をかけて変えることができてしまう人類は確かにガンのようなものと表現できる。
そんな人類が宇宙に進出し、別の惑星に行ったんだ。
上位存在……神様から見たら「俺の作った世界で何してくれてんだ!」ってなってもおかしくないか。かなり人間染みてるけど。
「神様から見たら蝗害のように思ってるのかもな。宇宙播種は」
「人類は宇宙にとっては蝗と同じですか……」
アイリスが嫌そうな顔をする。
そりゃ俺だってそんな風に思って欲しくはない。
けど、地球での歴史を見てるからな。
言い返せないところもあるけど、このままじゃダメだと思い行動することができるのも人類の良いところでもある。
「なんにせよ、レオンさんの仰る通り、カラート様がお隠れになった理由がそれであるのなら私達も急がなければならないのではなくて?」
「そうだよ! 急いで地球に行って止めてもらおうぜ! も地球なら俺達よりも技術が発達してるだろうしよ」
ユリアに賛同するクリスは結構焦り気味だ。
得体の知れない存在がいるかもしれない状況は確かに怖いが、アイリス達三人は落ち着いてるな。
こういうことは平気なのだろうか?
「地球に残された人類が滅んでいなければな。でもカラート様が出発した時の技術力から考えて、高次元に上がる術を持つまでに至っているかどうかわからないぞ?」
「えっ? あぁ、カルダシェフスケールってやつか」
カルダシェフスケール。
地球の科学者ニコライ・カルダシェフが考案した宇宙文明の度合いを示す指標だ。
この指標は人類が利用できるエネルギーの総量で決まっていて、俺の記憶の前世地球のタイプは0.7程度と言われていた。
「タイプIは惑星全ての、タイプIIは属する恒星全て、タイプⅢは属する銀河全てのエネルギーをコントロールできること……だったっけ? 銀河間を行ける場合はどうなるのよ?」
クラリスがカルダシェフスケールの概要を思い出しながら、俺に疑問を投げかけてきた。
「タイプⅣだ。とは言っても、銀河間を支配できるのがこのタイプだから、カラート様が地球を脱出した際の地球はタイプ3.5ぐらいじゃないか?」
「ということは高次元に上がるのに必要な文明レベルは……タイプⅤってところですか?」
「そういうことになるな」
とはいうもののだ。
カラート様は魔法を身につけたことで高次元に上がったわけじゃないと俺は思っている。
何故ならば高次元理論は一朝一夕で理解できるものじゃないからだ。
おそらくカラート様は元々科学者で高次元を研究していたと思われる。
しかし――
「魔法というものに触れたんだ。研究者なら調べないわけがない。もしかしたらその過程で高次元存在に触れて焦りが出たのかも」
「ですが腑に落ちないのが、何故高次元存在は人類を滅ぼそうとしているんでしょう? いくらなんでも理不尽ではありませんか?」
ユリアの言い分はもっともだし、俺だって知りたいところだ。
でも、一つ思い浮かぶことがある。
「さっき言った蝗害のように捉えられている可能性……あとはもしかしたらその存在がグレートフィルターそのものなのかもな」
「ああ、なるほど」
「確かにあり得そうです」
クラリスとアイリスが同意して頷く。
グレートフィルターとはカルダシェフスケールの最高レベルに達する前に立ちはだかる壁のことだ。
この壁を突破するのはかなり困難で、それを成した知的生命体がいないから地球人は地球外知的生命体……所謂、宇宙人と出会えていないと言われている。
具体的にはその壁にぶつかる前に、その生命体は滅んでしまうというものもある。
例えば地球でも核戦争などの人類が開発した文明の影響で滅ぶことだって想像に難くない。
技術の発展とそれに追いつけぬ未熟な精神が、自然と滅びを生み出す可能性があり、それをグレートフィルターと読んでいたわけだ。
だが、もしそのグレートフィルターを担っているのが高次元存在なのだとしたら立ち向かう術が四次元時空で生きる俺達にはない。
そりゃカラート様も焦りもするか。
「なんにせよ。本当にカラート様は高次元に上がったのか知る為には地球に行って文明レベルを見るしかない。もしかしたら、高次元と行き来する術を持っているかもしれないしな」
「そうですね。そうだったら学べることもすごく多そうです」
「高次元と行き来かぁ。どんな世界なんだろ?」
「時間すら見えるってできませんわね」
「時間旅行とかもできたら楽しそうだな」
高次元に想いを馳せて、会話に花を咲かせる四人。
しかし、上位存在……いわば神のような存在がいる可能性があり、しかも人類を滅ぼそうとしているというのなら考えられる問題がある。
それは俺達がこれから挑む地球への航宙、その道中の地球型惑星にガルガンチュアのような生物がいる可能性があるということだ。
理由は宇宙播種を行った船が複数あると考えられて、その種が芽吹いた惑星があるはずだからだ。
地球の生物の種の保存を掲げて行われる任務がカラート一隻だけという方が考えにくい。
つまりは異世界がこの宇宙にたくさんある可能性が高いのだ。
ガルガンチュアのような怪獣がこの宇宙に何体もいるというのは恐ろしいが期待だってある。
各々の惑星がどのように文明を発達させているのか、もしかしたらエクセルとは別の魔法を使用していて魔法による文明がかなり発達している惑星もあるかもしれない。
そして、高次元に関しては俺だってワクワクしないわけじゃないが、もし上がれたのなら、カラート様に聞きたいことがある。
俺は一体何者なのか。
どういう存在なのか。
まぁ、知ったところで何にもならない。
少なくとも、「俺」という存在を認めてくれている人が二人……いや、四人いるからな。
「ん? 今なんか……」
「忘れられていたような?」
「すごいな、クリスにユリア」
なんか考えを読まれたようで、思ってたことを正直に話したら二人に叩かれた。
◆
カラート内部に残されていた宇宙船の再構築を始めてから一年と少し。
順調に作業は進み、俺達はエクセル出発の日を迎えていた。
一ヶ月前にはカラート計画に参加している全クルーに休暇を与え、家族との時間を作った。
俺には家族がいないから後ろ髪引かれるものはないけど、皆は違うからな。
重力均衡点……ラグランジュ点に四隻の巨大宇宙船が浮かんでいる。
全長400mを超える船が二隻、片方は艦橋後方部に巨大な飛行甲板を設けている。
名前は一番艦「ストレリチア」、二番艦「オーガスタ」
そして200m級の船体後部に飛行甲板を有し、各船の大型部品の製造や修理を担う補給船「リシアンサス」
そして最後に俺達が作った船「エシクン」
この四隻で地球へと向かう。
『数十年前、この地はただ草原が広がるだけの広大な土地でしかありませんでした』
船内に響く演説。
モニターにはレイディアントガーデン セントラルビルで開かれている俺達の航宙を見送る為のセレモニーの様子が映し出されていた。
『しかし、今では他を圧倒するほどに発展し、世界最大の魔術都市として知られているこの地を開拓したのは、当時八歳の幼い少年でした』
会場にはクルーの家族だけでなく、各国首脳や魔術省の代表達が一堂に会し、俺達が宇宙に上がる前にも挨拶に来てくれた。
『誰もが夢見、されど誰もなし得ることが出来なかった空を飛ぶという夢。それをその少年はこの地を与えられた僅か数年で叶え、果てはそのさらに先、宇宙という大海原を目指し、そしてそれすらも叶えました』
会場の大型モニターにはパーサヴィアランスやオデッセイから送られている俺達の乗る宇宙船の映像が映し出されている。
もちろんその映像やセレモニーの様子は、各家庭のMTVにも届けられていた。
『この地に集い、彼の知識知恵を授かり、宇宙へと上がった天才達。そこから生まれた新たな技術、新たな魔法理論……彼らの功績は数えればキリがないほどです。そしてそれらのおかげで、我々は一年前の未曾有の災害を乗り越えることが出来ました』
ガルガンチュアによって破壊された街は、レイディアントガーデン主導のもと、復興がされて都市部はほぼ元に戻ったが、未だ完全に復興はしていない。
しかし、ここの人たちの目に絶望はなく、前を向いて先に進もうとしている。
『怪獣ガルガンチュアという存在と神カラートがお召しになっていた船からもたらされた事実。それは我々人類を滅ぼそうとする存在と、この宇宙にガルガンチュアと同一の存在がいる可能性を示すものでした。そしてその脅威は、今も我々を狙っているのです』
カラートから得た情報は各国へと渡り、それらは掻い摘んで国民へと伝えられていた。
『またあの惨劇を繰り返さぬように、理不尽な死を迎えぬように……天才達が選んだ道は、神に挑むという壮大なものでした』
「「「「「!?」」」」」
第一艦橋にいた皆の顔が驚愕に染まる。
「そ、そうだったの!?」
「ただの知的好奇心で乗った俺は一体……」
パトリシアは純粋に驚き、ダスティンは自身は娯楽に近い感覚で乗っていることに少し羞恥していた。
俺も演説内容を知らされていなかったから驚いたが……
「まぁ、あながち間違ってないはいないよな」
俺がそう言うと――
「「「「「確かに」」」」」
――皆落ち着きを取り戻した。
『125万光年……1180京kmを超える距離を行き来する旅。どれほどの時間がかかるのか、どれほどの危険が待ち受けるのかわかりません。しかし、彼らはそれでも行くのです。我らエクセル人類が生き延びる為に、平和を享受する為に』
モニターに映るその人が、ふと空を見上げる。
その眼差しは柔らかく、慈愛に満ちていた。
『旅立つ天才達へ、我ら幼きエクセル人類の希望と真心を託します。人類始まりの星、地球へどうか届けてください。……私達はここにいますと』
その言葉を受けて、俺も含めて皆、改めて気合いを入れる。
いよいよ、出発の時が近づいてきた。
『この地は……いえ、このエクセルは私達が守ります。あなた方天才達が築き上げた叡智の結晶は、私、レイディアントガーデン二代目代表、リリー・フォン・ノアセダルが引き受けます。どうか安心して……いってらっしゃいませ』
「全艦、超光速航法準備。AS機関、動力伝達」
「了解。AS機関、超光速航法出力運転、動力伝達開始」
演説が締められると同時に、全ての船に超光速航法の準備をさせる為、通信を飛ばす。
その後、ユリアに動力を回すように指示した。
『ストレリチア、発進準備よし』
『オーガスタ、発進準備よし』
『リシアンサス、発進準備よし』
ストレリチア船長、マリーテレーズ・フォン・リーフェンシュタールとオーガスタ船長、フィリップ・フォン・フンボルトから返答が返ってきた。
二人は元々スペースシャトルのSRB回収と海洋魔物の討伐を主任務としていた護衛艦の艦長だったが、今回二隻の船長に抜擢した。
ストレリチア級は戦闘用の宇宙船だから、海洋任務の経験が活かせるだろうし、宇宙での動きも、半年くらいで慣れてきてた。恐ろしい。
リシアンサス船長にはエルフリーデを任命した。
……実は最初はアイリスを任命したんだけど、「レオンさんと離れるのはイヤ」って言われて、じゃあクラリスにって言ったら「レオンの乗る船の操縦桿は私が握るわ」と言われて断られて困ってたら、エルフリーデが立候補してくれたんだ。
あの時のエルフリーデとその他の宇宙飛行士達の顔、すごい苦笑いしてたな。
準備が整い、俺はマイクを手に取り、地上に連絡を取り始める。
「これより、超光速航法を実施する。ヘリオポーズ到達予定は二週間後。それ以降は通信手段は無くなる」
『了解しました。ご安航を祈ります』
ミッションコントロールセンターにいるアルノー・クランツから返答が返ってきた。
いつも通りの声音で、これから何年も連絡が取れなくなるということを忘れる程に普通のやり取りだった。
やり取りを終えると、コンソールのボタンを操作した。
「地上にいる皆さん。別れの言葉は言いません。ですが、ただ一言だけ言わせてください……いってきます」
一言そう言い、俺は地上との通信を切る。
そして、艦隊通信で全艦へ号令をかけた。
「全艦! 超光速航法開始!!」
「了解! 加速開始!!」
クラリスが右側にあるスロットルレバー近くのモード切り替えレバーをワープモードへ変え、操縦桿を思い切り前に倒す。
そして、俺達カラート艦隊はその数秒後、エクセル圏から姿を消した。
――
――
――
「いってらっしゃいませ、マスター。ここは私が守りますから」
◆
――レイディアントガーデン セントラルビル
その会議室では、各部門の責任者が集まり、現在の進捗状況と今後を話し合っていた。
「月面都市「アルファード」は概ね完成しており、デュナへの定期便運行と新造船開発も順調に進んでいます」
「デュナの基地建設は地盤が固い場所が多くて苦戦していますが、スケジュールに大幅な遅れはありません」
責任者からの報告を受けた最上席に座る女性……リリーがメガネを外し、ふっと息を吐いた。
「順調ね。ただ、デュナの基礎建築はスケジュールの見直しをお願い。今のままだと現場が焦って事故の原因になる可能性があるから」
「かしこまりました」
「では、次のミッションクルーのことなんだけど――」
リリーが次の議題に移ろうとしたその時だった。
上座にある内線からコール音が鳴り響く。
大体、その内線が鳴る時というのは緊急事態が多く、会議室に緊張が走った。
「はい、会議室。リリーです」
『リリー様! 大変です!!』
受話器の向こう側から慌てた様子の声が響く。
何かあったのか。
さらに気を引き締め、リリーは先を促した。
「とりあえず、落ち着いて。何があったの?」
『先ほど、深宇宙探査システムに魔力波を検知しました! 通信波です!! 識別コードはDSS-001!!』
「……えっ?」
それを聞き、リリーは緊張を解く。
DSS-001は、ある宇宙船の識別番号であった。
その、船の名は――
「エシクン……から!?」
――
――
――
新暦858年。
おとめ座超銀河団 局所銀河群 天の川銀河 太陽系第三惑星、地球へと旅だったカラート艦隊が8年という歳月をかけ全四隻無事帰還。
旅の道程で立ち寄った数々の惑星では、エクセルと同じく宇宙播種によって生まれた人類が文明を築いており、艦隊はその星々との友好条約締結の文書と、高次元との交信を終えての帰還であった。
後にその条約が星間国家の礎となる。
それを成した人物の名はレオン・アルファード。
彼はエクセルへ帰還した際、空を見上げてこう言ったいう。
――魔法があれば宇宙を行くのは簡単だった。と
END
読了、お疲れ様でした。
これにてこの物語は終了です。
いろいろ言いたいことは活動報告で語ろうと思いますので、後書きではただ一言だけ伝えたいと思います。
ありがとうございました。




